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Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第二章 あなたに惑星(ほし)の押し売りを
27/86

Episode:27

「ここで仲介役もやって、少しでも小銭稼がなくちゃねー」

 姪っ子は答えない。主導権が取れないのが悔しいのだろう。


 毒舌でワガママで、そのくせ頭の回転だけは速い。こんな姪っ子を、そのうち誰か〝もらって〟くれるだろうか……などと、つい叔母らしいことを考えてしまう。


 ――考えるだけ無駄な気はするが。


 なにしろ一度は宇宙へ売られた身だ。割と大きくなってからだった自分はまだともかく、〝宇宙的〟とでも言うべき環境で育った姪っ子は、考え方や発想が根本的に地球人とは違う。


 子供の頃、出身国が違うために合わずに大騒ぎになり、最後は離婚した友達の親が居た。だとしたらもっとかけ離れてしまった姪っ子は、地球人と上手くやれる可能性は限りなく低い。


 ただそれでも、一度地球へ返してやりたい、とは思う。

 飼い主に頼んで手に入れてもらった地球の記録映像を、イノーラはそれこそ画像がダメになるまで、繰り返し見ていた。


 彼女は四歳のときに地球を離れて、それっきりだ。だから、あの風も雨も日差しもよく覚えていないのだろう。

 エルヴィラの記憶では、イノーラがそこまで憧れるほど、地球は素晴らしいところではない。だが姪っ子にとっては、遥かな楽園なのだ。


(幻滅しなきゃいいんだけどなぁ……)

 いつか地球に降り立った日のことを心配しながら、ベッドから起き上がる。


「おばさま、どこへ……」

「操縦席。ネメイエスと話するなら、そこがいちばんいいし。

 多分そろそろ、来る頃だから」


 どうせ相手にこちらの服装は伝わらないからと、ラフな格好のまま向かった。

 席に座って、宇宙蝶の録画映像をぼんやりと見ながら待つ。


 ネメイエスには時間がない。どれだけの人口を抱えているかは知らないが、それが全員退去して移住となれば、七年という時間は短すぎるだろう。


 いくら木星が似ていても、ある程度は惑星改造しなければ住めないし、ドーム都市のようなものをとりあえず建設するにも、今すぐ始めてギリギリ間に合う程度だ。


 さらに一日遅れるたびに、事態は悪化していく。そうなればネメイエス人の助かる率はどんどん下がる。これは極力避けるだろう。

 だとすれば自分たちが出したこの木星の話に乗るはず、それがエルヴィラの見立てで、さらにそれはかなり早いと判断していた。


 根拠は単純で、この話がダメだった場合、ネメイエスは次の惑星を探さなくてはならないからだ。

 そしてその考えは、的中した。


「星系外交部から……通信が入りました」

 寂しがりだからだろう、エルヴィラについてきて副操縦席に座っていた姪っ子が、少し驚いたように告げた。


「来た来た、繋いで」

「はい」

 イノーラが操作すると、前回と同じように合成映像が映る。相変わらず破格の扱いだ。


「回答、遅くなりまして申し訳ありません」

「いえ、当然だと思いますよ。星系の命運を決めるような、一大事ですから」


 商売ではお決まりの、相手を思いやるようなやり取りをしながら、本題に入る。


「それで、お話は例の木星の件だとは思うのですが。何か進展がありましたか?」


 聞くまでもないことだが、それをあえて言って水を向けるのも交渉のうちだ。

 相手もうなずいて乗ってくる。


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