Episode:21
通信は挨拶のあと、簡単な自己紹介になった。まさに型どおりだ。
「私たちは地球人です。運良く銀河市民権を取る機会を得て、この通り旅をしています。
この星系へは申請どおり、あの星間生物に運ばれてきました」
地球人ふうの合成映像は、黙って聞いているだけだ。そこから表情は読み取れない。
――まぁ実際の相手の映像を流されても、読み取れないだろうが。
何しろこのネメイエス人、雷が荒れ狂う空で生まれた、オーロラのような生き物だ。どこからどこまでが本人なのかさえ、大抵の異星人には判別出来ない。
「星間生物の件は、こちらでも観測できました。ですから、真実だろうと推測します。
ところで、ここから七光年のところにある星が、超新星爆発を起こしたのはご存知ですか?」
「え、ほんとに?!」
思わずよそ行きの言葉遣いを忘れる。
そして同時に、宇宙港の様子に納得がいった。
(ここから逃げ出す船だったんだ……)
超新星爆発といえば、距離が五十光年以内なら壊滅、運が悪いと数千光年離れていても被害が出ることもある、文字通り天文学的な規模の大災害だ。
それがわずか七光年の距離では、致命的な被害が出るのは間違いない。
銀河文明の科学レベルならあらかじめ分かるのが救いだが、それにしたって滅亡へのカウントダウンがされている状態では、生きた心地はしないだろう。
「えっと、それって起きたのいつですか?」
「こちらの惑星時間で、八十日前です」
急いで計算する。ネメイエスの自転は地球時間で十六時間ほどだから、地球ふうに言うなら二ヶ月くらい前だ。
ほっと息をつく。規模が桁外れの大災害だが、来るのはまだ七年近く先だ。ここへ一ヶ月ほど逗留したとしても、全く問題はない。
(移送の請け負いでもしようかな)
そんなことを考える。
足元を見るようで少し後ろめたいが、この騒ぎなら、宇宙船は一隻でも多く欲しいだろう。
それにここで恩を売っておけば、これから先ネメイエス人と上手くやれる可能性も高い。
問題は、それをどう切り出すかだった。下手にこちらから言えば逆効果になる。
(向こうから、何か言い出してくれると助かるんだけど……)
相手は切羽詰っているはずだから、それなりに望みはあるはずだ。
いずれにせよ注意深く観察しながら――その観察が難しいわけだが――の、出たとこ勝負しかない。
間違っても損を出す目には遭うまいと、エルヴィラは気を引き締めた。
「この近距離で超新星爆発だと……かなりの被害がでそうですよね」
相手を怒らせないよう気をつけながら、話を切り出す。
この件は一番の懸案事項だろうから、こちらが関心を示しても、トラブルにはなりづらいはずだ。
「星のみなさんは、大丈夫なのですか?」
「その件は、こちらとしても頭の痛いところでして」
合成映像までもがうつむいて、言葉が続く。