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Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第二章 あなたに惑星(ほし)の押し売りを
20/86

Episode:20

 こういう宇宙港での交渉をはじめ、売り買い等で異星人同士が直接相対することは、銀河系では稀だ。最後に品物を受け渡しするときくらいだろう。


 何しろ、発生状況も生理機構も違うのだ。どこかの種にとって快適な環境が、他の種にとっては即死モノ、ということも珍しくない。


 かといってすべての種に、それぞれ合う環境を用意するなど無理な話だ。

 結局いちばん簡単で安全なのが、異星人が出入りする建物内部は宇宙空間と同じ状態にして、それぞれに宇宙服を着てもらうという方法だ。


 ただこれではとても、船外へ出てくつろぐというわけにはいかない。このため他星系からの来訪者は、どうしても必要な時以外は船の中に居て、通信でやりとりをするのが普通だった。


「あんまり安いとこだと、手抜き修理されかねないしなぁ。かといって大手は高いし、立会い認めてくれないし」


 イノーラからの答えはない。聞こえているはずだが知らんふりだ。

 交渉だけはエルヴィラのほうが上なので、口を出して言い負かされるのがイヤなのだろう。


 エルヴィラ自身も、別に答えは期待していなかった。何しろひねくれた姪っ子だ。黙っていてくれるなら、それに越したことはない。

 だがいくつか選び出して連絡しようというところで、また通信が入った。


「どこから?」

「星系政府の外交部ですわね」

 再び頭をひねる。そんな主要機関に話しかけられるほど、ご立派な自分たちではない。


「無視します?」

「出来るわけないでしょ。ともかく繋いで」


 訝しがりながらも回線を開くと、合成音と合成映像とが現れた。

 その映像に、思わずエルヴィラはつぶやく。

「そこまで合わせてくれなくても、構わないのに……」


 生命体は多種多様だ。だから意思を伝える方法もまた、多岐にわたる。

 地球人ならすぐ音や光を思いつくが、これさえ普遍的とは言い難い。なにしろ地球上でさえ、生物によって捉えられる波長が異なるのだ。

 異星人ならなおさらで、予備知識なしにはコミュニケーションの取りようがない。


 ただこのことは、銀河史のごくごく初期から死活問題だったため、今ではある程度のマニュアルが確立している。

 それぞれの船や惑星は、自分たちが認識可能な交流手段の報告が義務付けられていて、それを元に交信が行われるのが常だった。


 だがそれを考慮に入れても、相手に合わせた合成音声と映像は破格の待遇だ。こちらは文字で済むのに、それ以上のことをしてくれている。


「よっぽど、お人好しの種族なのかなぁ?」

 あっさり許可してくれたことといい、その線が否定できなくなってくる。


「それならそれで、いいのでは?」

「そりゃそうなんだけど」

 口ではそう言いつつ、エルヴィラはまだ信じきれずにいた。


 あのソドム人ほどでないにしろ、隙を見せたら喰われる厳しい世界が、銀河文明の一面でもあるのだ。

 旨い話には裏がある、タダより高いものはない。これを忘れて、生きていける世界ではない。


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