はじめに――コンリ版について
コンリ版について
メキドの武帝の伝記のひとつとされる「アスパシオンの弟子」は、グリーゼの世界において様々な版が伝わっています。
一番初期に書かれたと思われる物が本書のコンリ版です。
初版本は神聖暦7450年に出たらしいのですが、現存している書籍は神聖暦7554年出版の物です。
この版においては、メキドの武帝は男性として記述されています。
著者は大文学者マルキウスとされていますが諸説あり確定されていません。
アスパシオンのぺぺ著「師に捧げる歴史書」を大部分引用しているものとみられていますが、この歴史書は残念ながら現存していません。
他に有名な版はメルケ版と呼ばれるものです。
この版は神聖暦7566年初版。三部作であり、別称「黒の章」「灰の章」「白の章」と呼ばれています。
コンリ版が下敷きになっているようですが、内容にかなり相違点がみられます。
武帝の伝記としてだけではなく、グリーゼの韻律の技三種の手引書ともなっています。
この版の著者は複数おり、エティアのナキア、スメルニアのツァイェン、アリスフィリアの子アリスギネアとされていますが、いずれも当時の著名人名鑑には載っておらず、匿名で書かれた可能性があり、やはり素性が確定されていません。
この版では、メキドの武帝は女性として記述されています。
現在のグリーゼにおいてはどちらがより真実であったのか判別できず、学会で論争が起きている状態です。
今回刊行されました本書は、7554年出版の現存する最古のコンリ版を復刻したものです。
メキドの歴史研究の一助となりうる史料となりますよう、また、手にとっていただけました読者様に五百年前の伝説が克明に描かれている本書をお楽しみいただけますよう、切に願うものであります。
神聖暦7860年 炎の月 二十日
赤妖精出版社 代表取締役シンク・ミシア・プトリ