幻影
幻影
電車というのは不思議なもので
先ほどまで身の凍るような冬だというのに
雨も上がり白金の空が山を照らし上げると
紅葉始めたばかりの山へと出会う
稲ももうそこへはないのだが
田圃には緑の草が生えて
グランドに花が咲いている
このまま別の季節に行くのかと思えば
もう、それでお終い
霧雨の降る駅で
今度は防ぐものなど一つもないバス停に立ち
全身が凍ってゆくのを感じていると
それは唐突に前触れもなく
陽炎の様な太陽の反対に
半分ほどの大きな虹がかかっていて
多彩な色に目を奪われ
身体の震えを忘れていると
五分遅刻のバスが来て
バスから虹が見えなくなり
うつらうつら目を少し開けると
雲の合間に隙間がさして
天の梯子が降りています