元同級生
卒業した高校だが、部活とかの繋がりで時々遊びにいくことがあった。
俺がいたのは放送部で、しかも、今となっては現役2人しかいないという小さな部活でもあった。
そんな中、卒業後製作をつくろうという話になり、うだるような暑さの中、俺は最初に高校の放送室にたどり着いた。
部屋に入ると、ムワッとした湿気混じりの熱波が押し寄せてきた。
俺は窓とドアを全開にして、ドアのすぐ外で熱波が収まるのを待っていた。
数分ほどすると、今は離れ離れの大学へ通っている懐かしい連中がやってきた。
「あれ?まだ一人?」
真っ先に聞いてきたのは、俺が1、2年生の時に唯一の女子部員だった皆素だ。
「ああ。熱気がすごくてな、中に入れなかったんだ」
「ふーん…」
そう言って皆素はドアの中に一歩足を踏み入れた。
すぐに外へ出てきたが、俺のすぐ横で壁にもたれた。
「…もうちょっと待っとく」
「それがいいな」
俺は彼女の横に一緒に持たれて、熱が収まるのを待ち続けた。
10分ほど経って、ようやく熱波が収まったのを確認すると、部屋に入った。
「やっとだよ」
「全くだ」
俺達は笑いながらマイクや機器の準備をした。
「けっこう忘れてないもんだな」
コードの配置を確認しながら皆素に言った。
「そりゃ、3年間もやり続けてりゃね」
マイクの位置の調節をしながら、言い返してきた。
「できた、マイクのチェックしたいから、何か適当に言ってみて」
「分かった」
皆素が、マイクに向かって、話す。
俺はヘッドホンをかぶり、ちゃんと入っているかどうかを確かめた。
「彼氏が欲しいなー」
「ん、大丈夫」
俺は立ち上がって、彼女と替わった。
「次俺の番な」
そう言って、ヘッドホンをセットした皆素を見ると、赤くなってうつむいていた。
マイクの前にたって、息を吸い込み言った。
「俺も彼女がほしいな」
そう言うと、皆素と目が合った。
「…じゃあさ、付き合ってみるか?」
俺は思い切って言ってみた。
「いいわよ、私のこの決断を後悔させないようにね」
皆素は、俺にウインクをしてきた。
今日の分の録音が終わると、皆素は俺にだけ聞こえるような小さな声で言った。
「ねえ、どっか遊びに行こうか」
「デートっつーことか」
「そんな感じ」
そう言いながら、皆素は俺の手を、優しく握った。