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青い鳥4

作者: WAIai
掲載日:2026/10/17

本格的な夏が近づいてきたのを感じ、コルリは太陽から離れるように飛んでいた。

今日も天気が良く、飛んでいる分には心地よいのだが、どこかもやもやしていた。

ーふう。ちょっと休んでいくか。

コルリは下降すると、人間界で見つけた巣ーマンションの一室のベランダに降り立つ。

人間の姿になると、窓をノックするのだった。

すると中からゴソゴソ音がしたので、またフライパンかと笑う。

見た目は優しそうなのに、気が強い女なのだった。

「ー今日こそは…!!」

急にフライパンをふられ、コルリは鳥の姿となると、中に入っていく。

女性の1人暮らしは可愛いもので、ビンクと赤のものが多い部屋だった。

女性振り向こうとしたところを、人間の姿となり、受け止めると、素早くキスを奪う。

「あー、すずの唇は優しく流れる川のように、甘くてさらりとしている」

「!! も、もうこの天使…!!」

「天使じゃない。コルリだ」

否定すると、すずの身体を抱きしめ、動きを止める。

「ち、ちょっと!! 何でいつもあたしのところに来るわけ!?」

「いいじゃないか。少し休んだって」

「休むって…あのね、あたしは怒っているのよ!!」

「いつものことだ。カリカリし過ぎだぞ」

「誰のせいだと思っているのよ!!」

「はは!!」

コルリは上機嫌に笑うと、すずの頭に顎を乗せ、香りを楽しむ。

すずの身体から、花束のように甘くて、濃い香りがするのだった。

「ーよし。充電した。もう大丈夫だ」

「じ、充電…? 何のこと?」

「こっちの話。また来る」

頬にキスすると、化粧品の苦味を感じる。

素顔でいればいいのにと思いつつ、鳥の姿となり、飛んでいく。

「今度、来たら、焼き鳥にしてやるー!!」

すずの声は響き、一部の人間が注目してきたが、無視して飛んでいく。

心が軽くなったところで、とある場所へ飛んでいくと、コルリは確認する。

ー今日も生きているな。

ベンチで男性が寝ており、新聞紙がかけられている。

犬の散歩をしている人が通っても、気がつかないようだった。

寝ているのならそのままにしておこうと、そっと飛び立つと、コルリは上昇する。

すると飛行雲みたいに、直線の雲ができていく。

コルリは面白がって回転すると、丸型の雲ができた。

その姿を見たカラスが、コルリに近づいてくる。

「ーおい、お前」

「何だ? 何の用だ?」

コルリは遊ぶのを止め、カラスに向き合うと、黒いくちばしが開く。

「お前、何で一匹なんだ? しかも人間にちょっかいを出しているようだし。人間なんて、放っておけばいいのに」

「その人間から美味しい餌をもらっているのは、誰だ? 生ゴミをあさったり、畑を荒らしたり、あまりいい話を聞かないぞ?」

「別にいいだろう!! 生きていくうえでは必要なことだ」

「そう。生きていくうえでは、大事なことだ。でもな、やり過ぎは良くない。殺されないように気をつけろ」

「お前に言われたくない。ふん!!」

カラスが悔しそうに飛んでいくので、コルリはふうと息を吐き出す。

ー全く。私のやることに口出しするなよな。私は私の責任で動いているのだから。

せっかくすずのところで元気をもらったと思ったのに、コルリは不機嫌となる。

すると「ふざけるな!!」と声が聞こえてきた。

気になって見に行くと、1人の女性が上司らしき男性に怒られているようだった。

オフィスは広々としており、椅子や机のセンスは悪くなかった。

ーちょっと覗いていくか。

コルリはオフィスの窓に貼りつくと、女性が男性に頭を下げていた。

「も、申し訳ありません!! 私の責任です!!」

「当たり前だろう!! こんな簡単なミス…!! もういい、お前はいらない。どこかへ消えろ!!」

「え…」

女性が硬直したのが分かった。

そこまで言わなくていいのにと思っていると、女性が泣き始めた。上司はため息を吐くと、

「女はいつもそうだ。泣けばいいと思っている」

そう言い捨てて、オフィスから出ていった。

女性は目元を拭っているが、周りの人間は関わりたくないと思っているのか、黙ったままでいるか、こっそり笑っている者もいた。

ー人間の世界も、鳥の世界も変わらないな。

泣いている女性が不憫で、窓をくちばしで叩くと、女性が気づいた。

招き寄せるように、コルリが窓をつつき続けると、女性が動いて近づいてくる。

ブラインドを上げ、窓を開けてくれると、人工の冷たさが外に逃げてくる。

一瞬、ひやりとした空気を感じ、コルリは羽を動かす。

「ー鳥さん? スズメ…じゃないわね」

1人で泣く女性に向かって飛ぶと、細い肩に乗る。

人間の姿には、残念ながら、大勢の人間がいるからなれなかったが、鳥の姿で慰めようとする。

「くすくす。可愛いの」

泣いていた女性が笑顔となり、コルリは嬉しさからさえずる。

女性が手を伸ばしたので、手の上に乗ってやり、首を動かす。

「私を慰めてくれているの?」

その通りとばかりに、くちばしで女性の手をつつくと、女性は優しく撫でてくれる。

心の優しい人間だと思い、コルリは頑張れとばかりに、一生懸命、動き回る。

「くすぐったい。ありがとうね」

少し笑った女性を見て、コルリはそろそろ行くかと離れる。

女性が「あ」と言ったが、コルリは振り向かずに飛んでいくのだった。

ー良いことをしたみたいだ。

ちらりと振り向くと、女性がコルリを見つつ、目を細めているのが分かる。

夏の日差しは強いので、コルリはあまり太陽に近づかず、低く飛んでいく。

ーさて、あいつと会うか。

コルリは目的地を目指し、大きく翼を広げていく。

辿り着いたのは公園で、男性は起きていた。

「…よう。元気そうだな」

人間の姿ー青い髪に、白い羽になると、男性がにこりと笑ってくる。

「やあ、天使様」

気楽な口調に、コルリは構わないと流し、口を開く。

「天使じゃないと言っているだろう? 全く」

ふん、と鼻息を荒くすると、コルリは腰に手を当てて聞く。

「それで? いついなくなるんだ? それとも生きる気になったか?」

「はは。いきなりそれか」

男性は力なく笑うと、コルリを見上げてくる。

「あんたみたいになりたいんだけど」

「無理だ。私は特別だから」

はっきりと断ると、コルリが続けて確認する。

「人間が嫌になったのか?」

「人間ね…。嫌に決まっているじゃん。誰も俺に注目しないし。あんたくらいだ、俺を構うのは」

「構っているわけじゃない。責任を果たそうとしているだけだ」

コルリは項を撫でると、男性に聞くことがあった。

「今頃だけど、お前、名前は何て言うんだ?」

「は? 今頃? 別に名乗らなくても…」

「いいから言え。私が聞きたいんだよ」

「…分かったよ。名前だけな。剛っていうんだ」

「剛か。私はコルリ。人間がそう名付けた鳥の一種だ」

「コルリ? 初めて聞く名前だ」

「普段は、山にいるものだからな。事情があって、一匹で行動している」

「一匹で行動しているのかよ!! わお。俺と同じゃん」

「まあ、同じといえば同じだが、とにかく生きるのか、死ぬのか、決めたか?」

「それが…まだなんだよな。何かストップがかかるというか…」

「ストップか…。なるほどな。本能では生きたいわけか」

ふうとコルリは息を吐き出すと、それはそうだよなと思う。

好んで死にたい人間なんていない。

いや、鳥の世界でもそうだが、できれば苦しまずに、気楽に生きたいものである。

コルリが腕を組んで黙っていると、剛が話しかけてくる。

「今まで誰も守ってくれなかった。あんただけだ、俺に話しかけてくるの」

「そうか。約束は守らないと、天国に行けないからな。守ることは守る。そういう主義だ」

「…へえ。人間より賢いみたい、あんた」

くくと剛が笑うと、「ワン!!」と犬が走ってきた。

2人が何だと思っていると、ゴールデンレトリバーがベンチの側で立ち止まり、伏せの格好をする。

「…あんたの仲間?」

「違う。私は鳥だ。四足で走ることなんかしない」

2人でああでもないと話していると、40代くらいの女性が近づいてくる。

「あの…。私の犬が申し訳ありません」

「いや、いいんですよ。な?」

剛が促してきたので、コルリも無言でうなずく。

女性はコルリを認めると、目を瞬かせる。

「天使様…? きゃあ!! 天使様だわ!!」

「違う。私は…いいや、面倒くさいから放っておく」

コルリはそう言うと、そういえば先程、剛を見に来た時、犬の散歩をしている人がいたなと気づく。

おそらく彼女だと思うが、何故、犬が駆け寄ってきたのか気になる。

「ーお前、どうしたんだ? 遊びたいのか?」

コルリが軽く頭を撫でてやると、犬は「ワン」と吠える。

同じ鳥同士ならば話せるのだが、そうもいかなかった。

「…あの、よくここで寝ているでしょう?」

女性が剛に声をかける。

不快なものではなく、心配しているような口調だった。

「それが何? 何か問題でも?」

「そうじゃなくて…。ちょっと待って」

女性はポケットを探ると、名刺を出してくる。

コルリも覗けば、社会福祉士、後藤雅子と書かれていた。

「社会福祉士…って、何だ?」

「さあ? 何、社会福祉士って?」

2人で聞くと、雅子は柔らかく笑い、言ってくる。

「困っている人を助けるのが仕事なの。ヤンキーとか、引きこもりとか、国の制度を使って救ってあげるの」

「へえ…。なるほど」

剛が名刺をくるりと回すと、コルリはこの出会いはチャンスだと見る。

「剛、相談してみろ。良いほうに運ぶかもしれないぞ」

「えー、でも難しいこととか苦手なんだよね」

「難しくなんかないわよ。困っていることを、私に話して。さあ」

雅子がベンチに座ってきたので、コルリは邪魔しないように、飛び立とうとする。

「コルリ!! もう行くのかよ」

「私よりも、その女性のほうが適任だ。また来る」

「おう。待たな」

2人きりにし、コルリは鳥の姿となって飛んでいく。

犬が「ワン」と吠えてきたが、怖くなかった。

しかし雅子のほうは驚いて、声が出ないようだった。

ーこれは、良い流れかもしれない。

人間で傷ついたものは、人間で癒やすしかない。

コルリはそう思っており、翼を広げる。

少し暖かさが欲しかったので、太陽に近づくと、触手が伸びてきて、身体を暖かめてくれる。

ーさて、どこへ行くか。

コルリは気持ちよくさえずると、遠くへ飛んでいくのだった。





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