シーン9 世界の書き換え
静止した舞踏ホール。
凍りついた人々。
音のない空間。
その中心で、レティシアは夜空からゆっくりと視線を戻した。
すると。
再び、
赤い文字が動いた。
今まで表示されていた文字列がゆっくりと消えていく。
SYSTEM ERROR
WORLD CODE FAILURE
EVENT ROUTE COLLAPSED
VILLAINESS SCRIPT BROKEN
RECALCULATING STORY
SEARCHING NEW ROUTE
NEW EVENT GENERATED
DISASTER ROUTE
WORLD STABILITY LOW
CRITICAL ERROR
それらすべてが、順番に消えた。
そして。
最後に、ひとつだけ。
新しい文字が表示される。
ゆっくりと、
大きく。
まるで結論を示すように。
REWRITE REQUIRED
レティシアの瞳が、その言葉を捉える。
書き換えが必要。
意味は単純だった。
だが、
その言葉が示しているものは、あまりにも大きい。
この世界は、
壊れかけている。
だから――
書き換える必要がある。
物語を。
構造を。
世界そのものを。
レティシアの胸の奥に、わずかな揺れが生まれる。
今までずっと冷静だった彼女の表情が、
ほんのわずかだけ変わった。
理解してしまったからだ。
ここまで見せられれば、
もう否定はできない。
この世界は、
ただの現実ではない。
もっと別の何かだ。
レティシアは小さく息を吸う。
そして、
初めて声に出して呟いた。
「……世界?」
その声は静かだった。
しかし。
その問いは、
この世界そのものに向けられていた。




