シーン6 不吉な新ルート
赤い文字は、まだ消えない。
むしろ。
ゆっくりと形を変えながら、新しい表示が追加されていく。
舞踏ホールの光の中で、
それは異質な存在だった。
誰にも見えない、
この世界の裏側の表示。
レティシアは視線を動かさず、それを見つめている。
すると。
再び、文字が切り替わった。
赤い光が一度だけ強く瞬き、
新しい表示が浮かび上がる。
NEW EVENT GENERATED
DISASTER ROUTE
レティシアの瞳がわずかに細くなる。
新しいイベント生成。
その下に表示された言葉。
DISASTER ROUTE
一瞬、意味を探る。
英語の単語。
disaster――災厄。
つまり。
新しいルートの名前は、
災厄ルート。
レティシアは小さく息を吐く。
そして、ほとんど無意識に呟いた。
「……災厄ルート?」
その声は小さく、誰にも聞こえない。
周囲では相変わらず舞踏会が続いている。
楽団の音。
貴族たちの笑い声。
グラスが触れ合う音。
すべてが普通だ。
だが。
レティシアの視界の中には、
まだ赤い文字が浮かんでいる。
NEW EVENT GENERATED
DISASTER ROUTE
その言葉は、どこか冷たい。
感情のない機械的な表示。
ただ、新しい物語が生成されたと告げているだけ。
しかし。
その響きは明らかに不穏だった。
災厄。
その言葉が意味するもの。
それが何なのか、
まだ分からない。
だが。
レティシアの胸の奥に、
わずかな予感が生まれる。
本来の物語。
悪役令嬢断罪ルート。
それは、彼女が壊した。
そして今、
世界は新しい物語を作り直している。
その結果生まれたのが、
DISASTER ROUTE。
レティシアはゆっくりと視線を上げた。
舞踏ホールの天井。
きらめくシャンデリア。
だがその光の下で、
赤い文字は静かに点滅している。
まるで、
この世界の未来を示す
不吉な予告のように。




