シーン10
赤い文字は、
まだ消えない。
静止した世界。
止まった馬車。
動かない夜風。
すべてが凍りついたような空間の中で、
レティシアだけが
その表示を見つめていた。
NEW EVENT GENERATED
DISASTER ROUTE
災厄ルート。
その言葉は、
静かに不安を残している。
だが、
表示はまだ終わらない。
赤い光が、
もう一度だけ揺れた。
ノイズ。
小さな破裂音のような、
かすかな振動。
そして――
最後のメッセージが
ゆっくりと現れる。
赤い警告文字。
WARNING
WORLD STABILITY LOW
レティシアの瞳が
わずかに揺れる。
WORLD STABILITY LOW
世界の安定性が低下。
つまり――
この世界そのものが
不安定になっている。
沈黙。
レティシアは
ゆっくりと息を吐いた。
そして、
静かな声で呟く。
「……世界が壊れる?」
誰にも聞こえない声。
だが、
その言葉は
妙に現実味を帯びていた。
断罪イベントの崩壊。
物語の再計算。
災厄ルート。
そして、
世界の不安定化。
それは、
ただの恋愛劇ではない。
もっと大きな何かが
動き始めている。
レティシアは、
ゆっくりと視線を上げた。
馬車の窓の外。
王都の夜空。
静かな星々。
だが、
その瞬間だった。
――ピッ。
ほんの一瞬だけ。
星の一つが、
ノイズのように揺れた。
まるで、
空そのものに
小さな亀裂が走ったかのように。
レティシアの瞳が細くなる。
そして、
小さく呟いた。
「……なるほど」
世界は、
もう普通ではない。
夜空の星が
もう一度だけ、
微かに揺れた。




