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悪役令嬢は世界のバグを修正する  作者: 南蛇井


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第9章 世界の異変 シーン1 帰路の馬車

夜の王都。


舞踏会の灯りが遠ざかり、


街は静かな闇に包まれていた。


アルヴェルン公爵家の馬車が、


石畳の道をゆっくり進んでいる。


車輪の音が、規則正しく響く。


馬車の中には二人。


セシリア・アルヴェルン。


そして妹の、


レティシア・アルヴェルン。


しばらくの間、


二人は何も話さなかった。


舞踏会で起きた出来事は、


あまりにも大きかった。


王太子による婚約破棄。


公開の断罪。


そして、


レティシアの逆転。


社交界の空気は、


一夜で変わってしまった。


だが、


セシリアの頭の中には


どうしても引っかかることがあった。


彼女はゆっくりと妹を見る。


レティシアは窓の外を眺めている。


夜空。


王都の灯り。


その横顔は、


いつも通り落ち着いていた。


セシリアは小さく息を吐く。


そして言った。


「あなた……」


レティシアが視線を向ける。


「最初から分かっていたの?」


短い沈黙。


馬車が石畳を越えるたび、


小さく揺れる。


レティシアはしばらく考えるように


目を細めた。


そして。


小さく微笑む。


その笑みは、


舞踏ホールで見せたものと同じだった。


落ち着いた、


余裕のある微笑。


「ええ」


短い答え。


セシリアの眉がわずかに動く。


「どうして?」


レティシアは肩をすくめる。


まるで、


当然のことを言うように。


そして、


一言だけ言った。


「断罪イベントですもの」


沈黙。


セシリアは言葉を失った。


断罪。


それは理解できる。


だが、


イベント?


まるで――


誰かが用意した出来事のような言い方だった。


セシリアは妹を見つめる。


レティシアは再び窓の外へ視線を戻している。


その表情は穏やかだ。


しかし、


どこか遠くを見ているようにも見えた。


まるで、


この世界の先を知っているかのように。


馬車は夜の街を進む。


その中で、


セシリアの胸には


小さな違和感だけが残っていた。

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