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悪役令嬢は世界のバグを修正する  作者: 南蛇井


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8/110

シーン8 理解

舞踏ホールの喧騒は、先ほどと何も変わらない。


魔法オーケストラは優雅な旋律を奏で、貴族たちはグラスを傾けながら談笑している。

笑い声と音楽が混ざり合い、煌びやかな夜は続いていた。


だが、レティシアの世界は少しだけ静かだった。


彼女は窓辺に立ち、ゆっくりと果実酒のグラスを回す。


琥珀色の液体が光を受けて揺れる。


その間も、思考は冷静に動いていた。


――王太子の変化。


アルフォンスは、明らかに様子が違った。

目を合わせない視線。

硬くなった手の動き。


まるで、何かを決意している人間の態度。


――リリアの存在。


平民の少女。

王立学園の特待生。


そして、王太子が気にかけている人物。


あの少女の周囲には、若い貴族たちが集まり、まるで守るように囲んでいる。


――周囲の期待。


貴族たちの視線。

令嬢たちの噂話。


誰もが知っている。


これから何が起きるのかを。


レティシアはゆっくりと目を閉じた。


ばらばらだった出来事が、静かに一つの形へと繋がっていく。


王太子。

平民の少女。

社交界の噂。


そして、今夜の舞踏会。


答えは、驚くほど単純だった。


レティシアは目を開く。


舞踏ホールの中央では、また新しいワルツが始まっている。


人々は笑い、踊り、話している。


だがその空気の奥には、確かな期待が潜んでいた。


これから始まる“劇”を待つ期待。


レティシアは小さく息を吐いた。


そして、わずかに口元を緩める。


「……なるほど」


すべて理解した。


今夜、この舞踏会で起こる出来事。


王太子が何をするつもりなのか。


そして、その“相手”が誰なのかも。


レティシアはグラスをテーブルへ置いた。


その動きは、いつもと変わらないほど静かだった。


まるで、これから自分が断罪されることなど


少しも気にしていないかのように。

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