シーン2 レティシアの判断
沈黙は、長く続いていた。
舞踏ホールの中心。
リリアは俯いたまま震えている。
誰も言葉を発さない。
すべての視線が、
その少女へと注がれていた。
この場で何かを言えば、
すべてが決まる。
そう誰もが理解している。
だが。
リリアは答えない。
答えられない。
その沈黙は、
罪の証明のようにも見えた。
ざわめきが広がる。
「どうして黙る?」
「何かあるのか?」
「説明すればいいだけだ」
社交界の視線は冷たい。
疑念は、
ゆっくりと形を持ち始めていた。
その時だった。
「……もう結構です」
静かな声が響いた。
ざわめきが止まる。
声の主は、
レティシアだった。
彼女はリリアを見たまま、
ゆっくりと言った。
「今日はここまでで結構です」
舞踏ホールがざわめく。
「え?」
「追及しないのか?」
「今なら真実が出るのに」
貴族たちが顔を見合わせる。
さきほどまでの流れなら、
ここで決定打を打つはずだった。
告発。
追及。
そして完全な逆転。
しかしレティシアは、
それをしない。
彼女は視線をゆっくり外し、
舞踏ホール全体を見渡した。
その表情は、
変わらず穏やかだった。
怒りも、
勝ち誇りもない。
ただ、
落ち着いた令嬢の顔。
そして言う。
「舞踏会ですもの」
静かな声。
「これ以上の騒ぎは」
「相応しくありません」
その言葉に、
貴族たちは一瞬言葉を失った。
確かにそうだ。
ここは断罪の場ではない。
本来は、
社交の場。
祝宴の場。
レティシアは争いを続けない。
勝っているのに、
追い詰めない。
その態度が、
逆に周囲を驚かせていた。




