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悪役令嬢は世界のバグを修正する  作者: 南蛇井


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50/110

シーン10

舞踏ホールは、重い沈黙に包まれていた。


先ほどまでの断罪劇は、


跡形もなく崩れている。


証言は誤認。


噂は根拠なし。


そして、


魔法記録が示した真実。


誰も、


レティシアを罪人とは言えなくなっていた。


貴族たちは互いに視線を交わす。


誰もが理解している。


この場で起きたことは、


単なる婚約破棄の騒ぎではない。


社交界そのものを揺るがす事件だ。


その中心で、


レティシアは静かに立っていた。


焦りも、


怒りも、


見えない。


ただ、冷静な表情。


そして彼女はゆっくりと言った。


「以上です」


その言葉が、


舞踏ホールの空気をさらに重くする。


証拠の提示は終わった。


つまり。


これで彼女の弁明は終わり――


誰もがそう思った。


しかし。


レティシアは小さく息を吸い、


続けた。


「では次に」


一瞬の間。


その言葉に、


何人かの貴族が顔を上げる。


レティシアは静かに微笑んだ。


「質問してもよろしいですか?」


ざわっ。


ホールに緊張が走る。


質問。


誰に?


その答えはすぐに示された。


レティシアの視線が、


ゆっくりと動く。


王太子ではない。


証人でもない。


その視線の先にいるのは――


リリア・フェイン。


平民の少女。


断罪劇の“被害者”。


リリアの肩がびくりと震える。


レティシアはその少女をまっすぐ見つめた。


声は静かだった。


しかし、


その問いは鋭かった。


「なぜ」


一拍。


舞踏ホールの誰もが耳を澄ませる。


「この噂が」


もう一拍。


「広がったのか」


最後の言葉が落ちた瞬間、


空気が凍りついた。


それは単なる質問ではない。


噂。


誤解。


証言。


すべての始まり。


つまり――


この断罪劇を作った人物は誰か。


その核心に、


レティシアは踏み込んだのだ。


貴族たちが息を呑む。


王太子アルフォンスも、


言葉を失っていた。


そして。


すべての視線が、


一人の少女へ集まる。


リリア・フェイン。


その小さな体が、


わずかに震えていた。


悪役令嬢の逆転は、


まだ終わっていない。

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