シーン7 階段事件の真実
舞踏ホールの中央。
巨大な魔法水晶が静かに光を放っていた。
青白い光が床に広がる。
貴族たちは息を呑んで見守っている。
もしここに真実が映っているなら――
この断罪劇のすべてが決まる。
レティシアは水晶の横に立った。
「再生してください」
短い命令。
学園職員が頷き、水晶に魔力を流す。
すると。
水晶の内部に光が渦巻き始めた。
やがて。
空中に映像が浮かび上がる。
ざわっ――
貴族たちが一斉に息を飲む。
それは確かに
学園の階段だった。
石造りの長い階段。
昼の光。
そこに一人の少女が立っている。
リリア・フェイン。
小さな体。
質素なドレス。
彼女は階段の上で本を抱えていた。
会場は完全に静まり返る。
誰も喋らない。
そして。
映像の中で――
リリアが足を踏み外した。
「……!」
令嬢たちが小さく声を漏らす。
リリアはバランスを崩す。
よろめく。
一歩。
二歩。
体が前に傾く。
その瞬間。
彼女は自分で体勢を崩し、
階段を滑り落ちそうになった。
だが。
その近くにいた人物が、
慌てて手を伸ばす。
レティシアだった。
彼女は階段の下側に立っていた。
リリアが落ちそうになった瞬間、
とっさに手を伸ばしている。
だが。
触れていない。
ただ近くにいただけ。
映像はそこで止まる。
静寂。
完全な静寂。
誰も動かない。
誰も言葉を出さない。
なぜなら――
真実が、
はっきり映っていたからだ。
突き落としていない。
触れてもいない。
レティシアはただ、
その場にいただけ。
舞踏ホールの空気が凍る。
貴族の一人が呟いた。
「……誰も」
別の貴族が続ける。
「触れていない……」
そして。
誰かが小さく言った。
「では……」
その言葉は、
この断罪劇の根本を揺るがすものだった。
「事故……?」
映像は何も語らない。
だが、
そこに映っている事実は
誰の目にも明らかだった。




