シーン5 研究所フル稼働
魔法研究所・観測室。
静寂は、もう戻らない。
すべてが動いている。
いや――
“動かされている”。
中央の水晶。
限界まで発光している。
白。
純白。
内部の構造が透けて見えるほどの出力。
周囲の観測式が、
一斉に回転する。
一つではない。
十。
二十。
数えきれないほどの円環が、
重なりながら稼働している。
制御ではない。
維持。
切れば終わる。
だが――
切れない。
研究員が叫ぶ。
「出力、限界を超えます!」
「負荷が――」
別の研究員。
「遮断できません!」
「リンクが固定されています!」
表示が激しく更新される。
WORLD SCRIPT
CORRECTION RUNNING
主任は動かない。
水晶の奥を見つめている。
流れを追っている。
世界そのものの処理を。
研究員の一人が震える声で言う。
「修正処理……開始しています」
「構造の再構築が走っています!」
別の研究員。
「イベント単位での書き換えです!」
「局所じゃない……全体です!」
主任の目が細くなる。
(やはりそうか)
これは魔法ではない。
補正でもない。
“イベント”。
世界全体を単位とした、
処理。
異常が発生したとき、
流れを戻すための手段。
主任が低く言う。
「修正が来る」
その一言で、
観測室の空気がさらに張り詰める。
研究員が息を呑む。
「この規模は……」
「初めてです」
誰も反論しない。
記録はない。
前例もない。
表示がさらに重なる。
STRUCTURE REWRITE
FLOW RESET
WORLD SCRIPT
CORRECTION RUNNING
すべてが同時に進んでいる。
止められない。
止めるべきかも、
もう分からない。
主任はただ見ている。
観測している。
その目に、
恐怖はない。
あるのは、
確信だけ。
(これが――)
世界の修正。
イベントとして実行される、
“再構築”。
水晶の光がさらに強まる。
観測式が唸る。
そして。
世界は今、
自らを書き換えている。




