シーン4 騎士団強制出動
闘技場・騎士団席。
他のすべてが“止められている”中で、
そこだけ空気が違っていた。
騎士たちは動けない。
いや――
“動かされていない”。
剣に手をかけたまま、
踏み出しかけたまま、
全員が中途半端な姿勢で静止している。
だがその目だけは、
わずかに動いていた。
副官が低く呟く。
「……まだ制限下か」
その瞬間。
空のルーンが、
騎士団席の上でわずかに軌道を変える。
レティシアの視界。
流れが分岐する。
一部の処理が、
別経路に送られる。
(……分けた)
対象。
役割。
優先順位。
そのうちの一つが、
騎士団へと割り当てられる。
表示が浮かぶ。
INTERVENTION
FORCED EXECUTE
次の瞬間。
“解除”された。
騎士の指が動く。
止まっていた筋肉が、
一気に解放される。
剣が抜かれる。
金属音が、
わずかに遅れて響く。
副官が即座に状況を理解する。
「行動制限解除」
声ははっきりしていた。
遅れがない。
騎士たちが一斉に動き出す。
足が前に出る。
視線が中央へ向く。
闘技場の中心。
レティシア。
他のすべてが制限されている中で、
騎士団だけが“正常に動いている”。
だが。
それは自由ではない。
副官の目が細くなる。
(選ばれている……)
自分たちだけが、
例外的に許可されている。
なぜか。
理由は一つ。
“役割”。
排除。
介入。
強制停止。
そのための存在。
騎士の一人が低く言う。
「……命令は?」
副官は一瞬だけ空を見上げる。
ルーン。
回転。
そこに“指示”はない。
だが、
理解できる。
「対象へ接近」
短い命令。
騎士たちが動く。
その動きは正確で、
迷いがない。
だがその奥に、
わずかな違和感があった。
自分たちの意思ではない。
完全な命令でもない。
“使われている”。
闘技場の中で、
騎士団だけが動く。
制御された世界の中で、
唯一の“実行部隊”として。
表示が静かに明滅する。
INTERVENTION
FORCED EXECUTE
それは許可ではない。
“割り当て”だった。




