シーン8 完全包囲
リリアの涙が落ちたあと。
舞踏ホールには、重たい沈黙が流れていた。
誰もが同じ方向を見ている。
王太子アルフォンス。
その背後にいるリリア。
そして――
舞踏ホールの反対側に立つレティシア。
アルフォンスはゆっくりと一歩前へ出た。
その動きだけで、周囲のざわめきが止まる。
王太子は静かに言った。
「証言は十分だ」
その声は断定的だった。
もはや議論の余地などないと言うように。
アルフォンスは舞踏ホールを見渡す。
数百人の貴族。
王国の社交界。
その全員を前にして、はっきりと言った。
「皆も理解しただろう」
短い沈黙。
だが、その言葉に反対する声は上がらない。
誰もが互いの顔を見る。
そして、次第に小さな頷きが広がっていく。
「……ああ」
「仕方ない」
「証言が揃いすぎている」
囁き声が広がる。
アルフォンスは、ゆっくりとレティシアを見据えた。
その視線は冷たい。
そして宣告するように言った。
「レティシア・アルヴェルン」
「お前は――」
一拍の沈黙。
「罪人だ」
その言葉が落ちた瞬間。
舞踏ホールの空気は完全に固まった。
誰も声を上げない。
しかし、多くの貴族が静かに頷いている。
証言。
涙。
世論。
すべてが一つの結論へと集まっていた。
断罪。
この舞踏会は、もはやただの社交の場ではない。
それは――
公爵令嬢を裁く公開裁判だった。
そして今。
その裁きは、完成したかのように見えた。




