シーン3 第二証人 ― レオン
カイルが一歩下がると、代わりに別の青年が前へ出た。
黒髪を短く整えた、精悍な顔立ちの青年。
騎士家の嫡男。
レオン・グランディス。
王太子の護衛候補として名の知れた人物だ。
彼はまっすぐに立ち、重い声で言った。
「次は俺が証言する」
舞踏ホールの空気が、さらに緊張する。
騎士の言葉は重い。
嘘を嫌い、名誉を重んじる家柄だからだ。
レオンはゆっくりと口を開いた。
「問題の事件は、王立学園の中央階段で起きた」
ざわめき。
階段の事故は、すでに噂として広まっていた。
彼は続ける。
「リリア嬢が階段を下りていたときだ」
「突然、足を滑らせた」
「そのまま落ちかけた」
令嬢たちが息を呑む。
「危ない……」
「怪我は……?」
レオンは低く言った。
「幸い、近くにいた生徒が支えて助かった」
「だが――」
その言葉に、空気が止まる。
レオンの視線が、ゆっくりとレティシアへ向いた。
「その時」
「レティシア嬢が近くにいた」
ざわっ。
舞踏ホールが揺れる。
レオンは続けた。
「俺は見た」
「彼女はすぐそばに立っていた」
「そして、何もしなかった」
短い沈黙。
そして、断言する。
「……彼女が原因だ」
その一言が落ちた瞬間、
ざわめきが爆発した。
「階段から……!」
「危険すぎる!」
「まさか本当に……」
貴族たちの声が広がる。
ただの暴言ではない。
それは事故。
いや――
場合によっては命に関わる行為。
空気はさらに重くなった。
視線が再びレティシアへ向く。
だが彼女は、やはり動かない。
静かに。
ただ静かに。
第二の証言を聞いていた。




