シーン2 第一証人 ― カイル
舞踏ホールの中央。
王太子アルフォンスの言葉のあと、若い貴族の一人が前へ進み出た。
長身で整った顔立ち。
紺色の礼装に侯爵家の紋章。
カイル・ヴァルディア。
ヴァルディア侯爵家の次男であり、王太子の側近として知られる青年だった。
彼は一歩進み、周囲を見渡す。
その視線には迷いがない。
そして、はっきりと声を上げた。
「私が最初の証人です」
舞踏ホールのざわめきが静まる。
カイルはゆっくりとレティシアを指さした。
「私は見ました」
その言葉に、貴族たちの視線が彼へ集中する。
「王立学園の中庭でのことです」
「レティシア嬢がリリア嬢に詰め寄り、暴言を吐いていました」
小さなどよめき。
カイルは続ける。
「リリア嬢はただそこに立っていただけです」
「しかしレティシア嬢は彼女を睨みつけ、こう言いました」
一瞬の間。
そして、はっきりと言う。
「――平民は土に帰れ」
その言葉が落ちた瞬間、
舞踏ホールがざわめいた。
「……!」
「そんな……」
「本当に言ったのか?」
令嬢たちが顔を見合わせる。
誰かが小さく呟いた。
「最低だわ……」
別の貴族が頷く。
「さすがにそれは……」
「言い過ぎだ」
空気が、ゆっくりと傾いていく。
同情はリリアへ。
疑念はレティシアへ。
舞踏ホールの視線が再び彼女に向いた。
だが。
レティシアは、やはり動かなかった。
ただ静かに立ち、
第一の証言を聞いていた。
まるで――
すべてを記録しているかのように。




