シーン7 取り巻きの証言
アルフォンスの言葉が終わると、舞踏ホールの中央にわずかな動きが生まれた。
王太子の背後に控えていた若い貴族たちが、一歩前へ出る。
その中の一人。
長身で整った顔立ちの青年が、堂々と歩み出た。
侯爵家の次男。
カイル・ヴァルディア。
彼は周囲を見渡し、はっきりと声を上げた。
「私は見ました」
その言葉に、再び視線が集まる。
カイルは腕を組み、冷たい目でレティシアを見た。
「王立学園の中庭で」
「レティシア嬢が、リリア嬢に暴言を吐いているのを」
ざわめき。
彼は続ける。
「平民のくせに、と」
「身の程をわきまえろ、と」
「そう言って彼女を追い詰めていた」
扇子の陰で、令嬢たちが息を呑む。
「本当に……」
「そんなことを……」
カイルは一歩下がる。
代わりに、別の青年が前へ出た。
短く整えられた黒髪。
騎士家の嫡男。
レオン・グランディス。
彼は真っ直ぐレティシアを見据え、低く言った。
「俺も証言する」
その声は硬い。
「階段の事件だ」
「リリア嬢が落ちそうになった時、俺はそこにいた」
会場が息を呑む。
レオンは続けた。
「レティシア嬢が近くにいた」
「彼女は助けようともしなかった」
そして、きっぱりと言い切る。
「……卑劣だ」
その言葉が落ちる。
空気が重く沈んだ。
さらに別の貴族も口を開く。
「私も見た」
「彼女はいつもリリア嬢を睨んでいた」
「周囲の者に、あの子と関わるなと言っていた」
証言は重なっていく。
一つ。
二つ。
三つ。
まるで積み上げられる石のように。
そのすべてが、同じ方向を指していた。
――レティシア・アルヴェルンは、悪である。
舞踏ホールの視線が、再び彼女へ集まる。
数百人の貴族たち。
その前で。
レティシアは、ただ静かに立っていた。




