シーン6 嫌がらせの内容
舞踏ホールは再び静まり返った。
王太子の言葉を、誰もが聞き逃すまいとしている。
アルフォンスはレティシアを見据えたまま、ゆっくりと続けた。
「それだけではない」
低く、重い声。
「私はすでに報告を受けている」
彼はわずかに手を上げ、まるで罪状を読み上げるかのように言葉を並べた。
「お前はリリア・フェインに対し、幾度も暴言を浴びせた」
ざわめき。
貴族たちの視線がリリアへ向く。
少女は俯き、肩を小さく震わせている。
アルフォンスの声が続く。
「さらに、学園内で嫌がらせを繰り返した」
「教科書を隠し」
「孤立させ」
「周囲に彼女を避けるよう圧力をかけた」
令嬢たちが顔を見合わせる。
「そこまで……」
「ひどいわ……」
そして。
アルフォンスは最後の言葉を告げた。
「極めつけは――」
わずかな間。
舞踏ホールの空気が凍る。
「階段から突き落とそうとしたことだ」
その一言が落ちた瞬間。
ざわっ。
人々の声が一斉に広がる。
「突き落とし……!」
「まさか……!」
「命に関わるじゃないか!」
貴族たちは明らかに動揺していた。
ただのいじめではない。
それは、明確な危害。
王太子は冷たい目でレティシアを見る。
「すべて報告を受けている」
「証言もある」
「もはや言い逃れはできない」
彼の声は断定的だった。
まるで、すでに裁きが終わっているかのように。
舞踏ホールの空気は、完全に傾いている。
被害者。
平民の少女リリア。
加害者。
公爵令嬢レティシア。
人々の頭の中では、すでに物語が完成していた。
すべての罪は、
レティシア・アルヴェルンのものだと。




