シーン4 リリア登場
ざわめきの中心で、アルフォンスはゆっくりと振り返った。
その視線の先。
彼のすぐ後ろに、一人の少女が立っている。
リリア・フェイン。
栗色の髪を肩まで伸ばした、小柄な少女。
質素なクリーム色のドレスは、この豪奢な舞踏会では明らかに場違いだった。
宝石もない。
刺繍も控えめ。
だがその姿は、逆に人々の目を引いていた。
少女は不安そうに手を胸の前で握りしめている。
周囲の無数の視線に怯えるように、少しだけ俯いていた。
その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる。
――守ってやらなければ。
そう思わせる、弱々しい表情。
アルフォンスは一歩動いた。
そして、自然な動作でリリアの前に立つ。
まるで彼女を庇うかのように。
その姿を見て、貴族たちのざわめきがさらに広がる。
「やはり……」
「噂は本当だったのか」
「王太子殿下が守っている……」
レティシアはその光景を、静かに見つめていた。
王太子アルフォンス。
その背後にいる平民の少女、リリア。
そして、舞踏ホールの反対側に立つ自分。
構図は、あまりにも分かりやすい。
一方は守られる少女。
もう一方は――
断罪される悪役令嬢。
社交界の人々は、すでに理解していた。
この舞台の役割を。
王太子の隣にいるのが、正義の少女。
そしてその前に立つのが、悪役。
レティシア・アルヴェルン。
視線が交差する。
リリアは恐る恐る顔を上げ、レティシアを見る。
その目には、怯えと悲しみが浮かんでいた。
まるで本当に、彼女を恐れているかのように。
舞踏ホールの空気が、ゆっくりと固まっていく。
王太子の背後に立つ少女。
そして、静かに立つ公爵令嬢。
まるで舞台の上のように、
二人の間に、はっきりとした線が引かれていた。
レティシア
VS
リリア。




