残り∞時間∞分∞秒
1テイク目。
久々のツムギに浮かれていた。
すると「ツムギは探偵役に相応しくない」と揉め始めたのをきっかけに、場の空気は一気に疑心暗鬼へと変わっていった。
あれよあれよという間に深夜、狂信者たちの暴走で乱闘状態に。
そして、ツムギが斬られてNG。
2テイク目。
まずは狂信者対策が必要だ。
警備員のタカシミズの助言で、参加者たちの性格やクセを記録していくことにした。
メモにはスマホを使用。どうやら他の参加者のデータはリセットされるが、私のスマホだけは保持されるらしい。
……それでも、今回もツムギを守りきれずNG。
3テイク目。
グレイに無理やり「探偵役任命の手紙」を用意させ、ツムギの正当性を確保。
ニコとイコシが親子だと知り、アマツキが格闘技経験者であることも把握。
情報収集のため単独行動していたら、ツムギがクルミのヒステリックに巻き込まれてビルから転落。NG。
4テイク目。
ツムギだけでは不測の事態でNGになってしまう。
わたしが助手役として付き添うことにした。
クルミの件はタカシミズに任せる。
それでもセイランに負傷させられNG。
5テイク目。
セイランとは事前に打ち解けておく必要がある。
ツムギが最初に接触できるよう配置を調整。
計画通り少しは打ち解けたが、まさか彼が爆弾の在り処を当てるとは……。
そのせいで興奮したタカシミズを制止しようとしたセイランと共に、ツムギが便器に頭を打ち付けてNG。
6テイク目。
前回の失敗を踏まえて慎重に進めるが、今度はイコシがツムギを負傷させてNG。
7テイク目。
イコシとニコの関係を気づかせるためにも、タカシミズの存在が邪魔。
なぜかゲーム開始時に羊羹を食べていたようなので、グレイに頼んで下剤を仕込んだ。背に腹は代えられない。
だが、クルミのヒステリックを抑えきれずNG。
8テイク目。
リテイク前にクルミの所持品を調べると、シンヤにかなり惚れ込んでいることが判明。
その弱みを利用して大人しくさせることに成功。
イコシたちの暴走はツムギ、ニコ、アマツキで抑えられた。
だが、ワカツキとブレツが見つからず。ツムギは自分の推察に自信を持てず時間切れでNG。
9テイク目。
ツムギの優しすぎる性格がどうしても裏目に出る。
犯人役のヒヰロは矛盾点をいくつも漏らしていたのに、25人全員から聞き取らないと自信が持てないようだ。
今回もワカツキとブレツを発見できずNG。
10テイク目。
まさかのヒヰロから、秘密の部屋のヒントを得る。
彼女を憎んでいたが、元を遡ればわたしの責任でもある。そう思うと少しだけ、彼女を許せた気がした。
だが油断していたせいで、ブレツの不意打ちによりツムギが負傷。
致命傷ではなかったが、制限時間までに意識を取り戻せずNG。
11テイク目。
ツムギを守るため、今度はわたしが真っ先に秘密の部屋へ飛び込む。
ブレツはタカシミズに任せて回避、互いに重傷を負った。
だが、犯人当てで”シガ”と答えてしまい、彼が暴発したところで時間終了。NG。
12テイク目。
タバコを吸うから同行を拒んでいたが、シガを最初から同行させる必要があるようだ。
禁煙を約束させたおかげで彼の疑心を避け、犯人をヒヰロと無事特定。
最終ステージへ進むも、ツムギは迷った末に自分の線を切ってNG。
……でも、順調に進んでいる。ツムギに「わたしの線」を切らせるまで、あと少し。
13テイク目。
最終ステージでわたしの線を切るよう訴えたが、信じてもらえなかったのか、またツムギの線を切ってしまってNG。
14テイク目。
最終ステージでわたしの線があるという違和感をちゃんと説明したのに、ツムギは切ってくれなくてNG。
……どうして、ツムギはわたしを切ろうとしないの?
15テイク目。
最終ステージで同じく説得をしたが、またツムギは切ってくれなくてNG。
今回の変化といえばギンジロウがクルミに離婚を申し出たことか。
16テイク目。
最終ステージで真っ先にわたしの線を切るよう叫んだ。
だが、切ってくれなくてNG。
今回の変化は、ツムギが人知れず落ち込んでいたことだろうか。
これくらいなら、何度だって励ましてあげるよ。
17テイク目。
少しアプローチを変えてみることにする。
シガやタカシミズにさくらの話題を出しておいて、最終ステージにわたしの線に気付いてもらう。
二人共わたしの線を切るよう説得したが、結局ツムギは切ってくれなくてNG。
18テイク目。
もっと説得させる人数を増やした方がいいかと思って模索。
だが、最終ステージでエリカの線がないことに気付いたクワキノの指摘でわたしが疑われる。
混乱回避のため、ツムギは自分の色を切ってしまいNG。
19テイク目。
説得する人を変えても意味がない。やっぱりわたしがなんとかしないと。
わたしが如何に賢い子かをアピールして、最終ステージに挑む。
あれこれ説得したが、切ってくれなくてNG。
20テイク目。
まだまだ20テイク。しかし気晴らしにツムギからわたしとの馴れ初めを聞く。
こんな風に思っていたのかと、新たな発見が嬉しい。
今回の結果も、最終ステージで説得できずNG。
21テイク目。
タカシミズとブレツの乱闘に変化。ブレツが目に見えて手加減していた。
リテイクによる既視感やトラウマのせい、ということか。
今回の結果も、最終ステージで説得できずNG。
22テイク目。
ナノハがムラタに対して謝罪。続くリテイクが知らぬ間に彼女の罪悪感を助長させたのか。
今回の結果も、最終ステージで説得できずNG。
23テイク目。
今更ながら、どうしてグレイは参加者に紛れ込んでいるのか聞いた。
「間近で見ないと迫力がないだろう?」と返答。聞くだけバカだった。
彼にだけ爆弾がないというのが、余計に腹が立つ。
今回の結果も、最終ステージで説得できずNG。
24テイク目。
もっとスピリチュアルな攻め方をする。
「わたしには超能力がある」と言及しておき、最終ステージで誘導する。
だが、ツムギは切ってくれなくてNG。
25テイク目。
今度は「カンの鋭い少女」という設定で挑む。
だが、今回の結果も最終ステージで説得できずNG。
ツムギは「わたしの線だけは切れない」と言った。
その言葉が嬉しくて、苦しくて、どうしようもない。
――カッチン!
「……これで25テイク目か。君も頑張るねえ」
グレイが首を鳴らしながら言う。
その声音には、どこか退屈そうな響きがあった。
「まだたったの25テイク目でしょ? わたしは何千、何万回だってやり直すわよ」
そう言い切ると、彼は肩を竦める。
「ま、そうでなくちゃ楽しくない。……でもさ、本音を言えば、ツムギを間近で見続けられるこの時間が、少しは名残惜しいんじゃない?」
私は鋭く睨み返した。
「そんなわけないでしょ」
「でも、彼を助けたり、推理を披露するツムギはまさに主役! 主人公! そんな彼を特等席で永遠に見ていられる――それってゲームクリアより、最高の幸福なんじゃないかい?」
カチンコで肩を叩きながら笑うグレイ。
確かに今のツムギは、”さくら”のときには見せなかった顔をたくさんわたしに見せてくれる。
それがとても愛おしくて、純粋に嬉しいと思ってしまう自分がいる。
……けれど、わたしは迷わず首を振った。
「思わないわ。だって、ツムギにはもっとたくさんの脚光を浴びるはずの――未来で輝いてほしいから」
まだたったの25回だ。
そう簡単にわたしの心は揺らがない。
するとグレイは口角を釣り上げ、背を向ける。
「それならいいんだ。ワタシとしても、君がこの惨劇をどんなラストに覆すのか……ちゃんと見届けたいからね。ま、頑張ってよ」
それが本心かどうかもわからないまま、彼は去っていった。
わたしはリテイクのため、その場に横たわる。
――カッチン!
……選択は一度きりしかない。と、誰かは言う。
けれど、やり直すことだって可能なんだ。
少なくとも、ここではそれが許される。
だからツムギが”正しい選択”を掴むその瞬間まで――わたしは、絶対に諦めない。何度だってやり直す。
たとえそれが、ツムギにとっての“後悔”という選択だとしても。
「ツムギ……25回も、このふざけたゲームを終わらせてくれてありがとう……」
小さく呟いた声が、震えてしまう。
それでもわたしは、立ち止まらないから。
「今度こそ、ちゃんとわたしが終わらせてあげるから。だから――」
「え、何か言った?」
「ううん。……よろしくね、お兄ちゃん」
CAST
白旗 紡麦
蛇ノ目 エリカ
志賀 朝士
高清水 四半
石紅 英茉
享和 数狐
菅原 天月
嘉奈 一恋
新井 鳶斗
草薙 二煌
油井 菜乃花
羽紫 菫
御後 珊瑚
佐藤 銀治郎
佐藤 胡桃
審矢 壱時
伊興 遍陀金
加勢 晴嵐
村田 菊仁
鬼塚 恵
桑木野 萬雁
若槻 萱造
武烈 藍鉄
五十風 ひゐろ
梅影 さくら
グレイ・バンサンキエム
25階、このふざけたゲームを終わらせて
―― 完 ――




