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残り19時間30分17秒

「――もう、びっくりした! いきなりトイレ開けたら全裸おじさんがいたんだもん」


 ペットボトルのお茶を飲みながら、エマが文句を言う。

 俺たちはトイレ騒動について軽く説明――セイランがタカさんにコーヒーを引っかけてしまった、という苦しい言い訳で無理やり事態を収束させた。

 ちなみに“太陽が沈まない”という異常については、タカさんのような混乱する人を増やさないために今は伏せてある。

 もっとも、既にその事実を知っていて何も言わない人も、中にはいるのかもしれない。

 

「俺からしたら、女子が堂々と男子トイレ覗いてきたんだからびっくりだよ」


 そう反論すると、エマは頬をぷくっと膨らませて返してきた。


「だって~、急に中からドタバタ音が聞こえてきたし、それでエリカちゃんが開けちゃってたし。だったら心配して覗くでしょ?」


 ……それについては何も言えない。

 事実、エリカちゃんたちが飛び込んでこなかったら俺一人じゃタカさんを止められなかった。

 その功労者たるエリカちゃんはというと、今は静かにジュースを飲んでいる。


「……そういえば、結局三人一緒にいるんだね」


 話題を変えるように咳払いし、俺はエマたちを見る。

 そこにいるのはエマと親友のカズコ、そして彼女たちと初対面のはずのヒヰロがいた。


「そーそー。こんな状況じゃ寂しいし、変な人もいるし。だったら女の子同士つるんだ方が安心だなって」


 エマが首をかしげ、同意を求める。

 カズコとヒヰロは同じタイミングでこくりとうなずいた。


「……スマホも三人とも電池切れちゃって、それで暇つぶし程度に色々お互いのことを話してたんです」

「しかもヒヰロってカズコと似てるから、あたしが見守ってあげないと~って思ってね」


 カズコとエマがそれぞれ話す。

 エマはあざと可愛く演じる相手がいないからなのか、素のしゃべりに戻っているようだった。

 

「そうなんだ。まあこんな状況でも楽しそうで何よりだよ」

「逆にツムギは大変そうじゃん? さっきのおじさん組とずっと一緒なんでしょ~?」


 エマが視線を遠くにやるが、そこにタカさんやシガの姿はない。

 タカさんはまだ諦めきれず、爆弾探しに行ってしまった。

 ……まあ実際は、裸を晒したバツの悪さで頭を冷やしに行ったのだろう。シガはそんな彼に巻き込まれて連れていかれた。


「俺は別に……若い子から見れば俺もおじさん枠だしな。それよりエリカちゃんの方が大変だったろ、男ばかりで気を使ってやる暇もなかったし」


 俺が視線を向けると、エリカちゃんは小さく首を振った。


「ううん、平気だよ」

「あ、それなら! あたしたちと一緒に行動しない? 助手役はおじさんたちでもう十分でしょ?」


 エマの提案は善意からくるものなのだろうが、俺にとっては複雑だ。

 何度も俺を助けてくれたエリカちゃんには、他の二人とは違う心強さがある。

 すると俺が答える前に、エリカちゃんが言った。


「私は大丈夫だから」


 そう言って、ぎゅっと俺の腕にしがみつく。

 まさかの行動に、さすがに嬉しくて、思わず頬が緩んでしまう。


「キャー! 可愛い~!」


 一方でエマが甲高い悲鳴を上げた。

 俺が目を丸くする横で、カズコとヒヰロはペコペコと頭を下げている。

 ……なるほど、確かにこの二人、よく似ている。


「ねえねえ、もしかしてツムギに惚れちゃったんじゃないの~?」

「俺に?」


 これまでの行動に惚れられる要素なんてあったか?

 思わず首を傾げる。


「あ、でも……ツムギさんって彼女がいるって聞いたけど……?」


 ヒヰロにそう言われ、自然と顔がにやける。


「いや、まあ、そうなんだけど」

「えー、じゃあエリカちゃんの想いは一方通行? カワイソ~」


 いや、そもそも未成年の少女に手を出すわけにはいかない。法的にも社会的にもアウトだろ。


「……エリカちゃんの気持ちを聞いたわけじゃないだろ」


 そう言いながらも俺は内心、エリカちゃんに慕われていたことが素直に嬉しくて浮かれていた。

 するとエリカちゃんがぐいっと顔を寄せて尋ねた。


「じゃあ、その彼女さんって……どんな人なの?」

「え? なんで急に彼女の話?」


 予想外の方向から話を振られ、体が固まる。

 大したエピソードもないのに興味を持たれてもな。

 ……というか、まさかエリカちゃん、恋バナ好きなのか?


「あたしも気になる~」

「私も……どうして二人が出会ったのか、気になるわね……!」


 エリカちゃんの一言で、エマとヒヰロまで食いついてきた。


「ちょ、ちょっと……いきなりそんな話は……」


 皆を宥めつつも、カズコも興味ありげにこちらを見ている。

 タカさんが戻るまでの休憩時間のはずが、なぜか恋愛トークになってしまった。

 だが、断る理由も特にないし、まあ暇つぶしにはちょうどいいか。

 俺は観念して口を開いた。




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