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残り20時間20分15秒



 セイランの報告は――爆弾の居場所がわかった、という衝撃的な内容だった。

 即座にタカさんが反応し、セイランの肩を掴む。


「ど、どこにあるんだ!?」


 その圧に押されて彼は顔を青ざめさせながらも答えた。


「こ、ここではちょっと……人目のないところで話します」


 彼の提案に異を唱える者は誰もいなかった。




 俺たちは北と南のフロアを繋ぐ西側の回廊へ移動した。

 燦々と陽が差し込み続けるせいか、誰の姿もない。


「あっつー……まるで真夏の縁側だな、こりゃ」

「その例え、古くないですか?」


 シガの古風な例えにツッコミを入れつつ、俺はセイランの言葉を待つ。

 彼はしばらく沈黙した後、ようやく重い口を開いた。


「……あの、こんな中学生の話を真剣に聞いてくださって、ありがとうございます」

「礼はいらないよ。俺たちもどんな情報でもいいから欲しかったところだしね」

「しかし……爆弾は一体どこにあるというのだ? オレもくまなく探したはずだがな……」


 タカさんの問いに、セイランは気まずそうに視線をそらす。


「えっと……見つけたんじゃなくて、推測なんです。もしかして、ってレベルの」

「それでも構わないよ。話してみて」


 俺の言葉にセイランはうなずき、窓の方をなるべく見ないようにしながら語り出した。


「最初のアナウンスで言ってましたよね。“爆弾は25個。解除方法は、ここにいる25人の中から犯人を見つけること”って……」


 そして”探偵役”に選ばれた俺が、このフロア内にいる25人の中から”犯人”を探し出さなくてはならない――というのがこのゲームの基本情報だ。

 ちなみに、この場には“25”に関わる人間ばかりが集められている。

 それが犯人捜しのヒントになるのではと思い、聞き回っているところだった。

 シガがくわえていたタバコをもてあそびながら話す。


「ま、普通に考えんなら犯人=爆弾を仕掛けた人物ってとこだがな……」


 続けてタカさんが腕を組み、唸る。


「それで犯人が爆弾を隠し持っている線も考えたが、それらしい物を持っていた人間もいなかった」


 確かに”爆弾”と想像すると、大体バスケットボールくらいでは、というイメージがある。

 それが25個ともなれば、結構な荷物量になっているはずだ。

 セイランは静かに眼鏡を押し上げて言う。


「確かに、それが普通のゲームならそう考えるのが当然です。でも……もしこれが非現実的なゲームだったとしたら?」

「……つまり、神懸かり的な存在がこのゲームを仕掛けている、と……?」


 俺の問いに、セイランは小さくうなずく。

 それは頭の片隅で一度は考えた仮説だった。が、突拍子もなくてすぐに切り捨てていた。

 俺は思わず反論した。


「……いや、そんなまさか。アニメやドラマじゃないんだから」


 タカさんもシガも、俺と同じ意見のようだった。

 エリカちゃんはというと、否定も肯定もしていない。

 セイランは必死の形相で訴えた。


「僕だって信じたくないです……でも、そう仮定しないと爆弾の居場所の辻褄が合わないんです」


 タカさんが痺れを切らして声を荒げる。


「だから、一体どこにあるって言うんだ!」


 轟く声に俺とシガが慌てて口を塞いだ。

 片やセイランは、より一層顔を青ざめさせて言った。


「……爆弾は25個。そして人の数も25人。どこにも見当たらないなら、考えられる可能性はひとつ……」


 そう言ってセイランは、自分の腹部に手を当てた。

 その意図を理解し、俺たちは息を呑んだ。


「そんなこと、不可能だ!」


 タカさんがまたもや叫ぶ。


「けどエレベーターは何故か機能せず、非常階段も開かない。電波も圏外……そう考えると、あり得ない話とも言い切れないぜ」


 シガの言葉に俺は首を横に振る。


「いやいや……もしそうだったとしても、俺たちの体内に異物があるかないかなんて、どうやって証明するんですか?」


 俺は無意識に自分の腹部に触れる。そんな異物感はない。

 しかし、アナウンスが流れる直前、俺たちは全員気を失っていた。爆弾を仕込まれた時間は充分あるとも言える。

 タカさんに釣られるように、セイランも感情的に声量を上げて言う。


「確証はないです……でも、もう“神懸り的な存在”とか、ファンタジーやSF的な見方で考えないと不可能なんです」


 こんな信じられない話だからこそ、セイランはわざわざ人目を避けて打ち明けたのだろう。


「神懸り……」


 その単語を聞いて思い出すのは、イコシが崇拝する“25の神”の存在だ。

 神なんて信じてはいないが、あまりにも理不尽な現状を思えば、否応なく結びついてしまう。


「ちなみに、セイランは“25神妙教”の信者だったりする?」


 俺の質問にセイランは自分を落ち着かせるよう、眼鏡に触れて答える。


「えっ……い、いえ。都市伝説みたいな噂で、“25個の供物を捧げると願いを叶えてくれる神がいる”って聞いたことはありますけど」


 眉をひそめる表情からして、彼もそういう類は信じていないようだ。

 ――と、その時だった。


「こうなれば……ボディチェックだ」


 タカさんの一言に俺は固まる。


「え?」


 まさか今から解剖でも始めるつもりなのか。

 するとタカさんは真顔で言った。


「違う。本当に体内に爆弾が埋め込まれているならば、どこかに手術痕があるはずだ。それを確認する」


 ……確かに、もしこれがリアルなデスゲームならそういう痕跡があるかもしれない。

 だがこれが霊的なものの仕業なら、痕跡なんて何もあるわけがない。


「タカさん、落ち着いて下さいよ。手術以外で爆弾を仕掛ける方法だってあるかもしれないでしょ」


 宥める俺の隣で、助け舟を出すべくシガが言う。


「そもそも、“爆弾”の定義だってまだわかってないんだぜ。毒物を爆弾(それ)だと呼んでるんなら、無理やり飲み込まされてても可笑しくないしな」


 ……いや、どちらかといえばこれは楽しげに煽ろうとしている顔、かもしれない。


「いや! オレはこの目で見たものしか信じない!」


 頑なに意見を変えないタカさん。

 こうなると誰かが文字通りに一肌脱ぐしかないのだろうが――。


「だからツムギ! オレのために脱いでくれ!」


 当然の役回りだった。

 逃がさんとばかりにタカさんは俺の肩をがっしり掴み、真剣な目で言い放つ。

 ……というか、その言い方は変な誤解を生むだろ、と思わず顔が引きつった。




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