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〇 たとえ世界を滅ぼしてでも

ひゃっほーい!

ブクマしてくれてありがとうございます!


ダンシングしながら書きました。

 夢を見ていた。


 笑い声。ティーカップの音。

 日だまりの中、きれいなドレスの女の子たちが輪になって座っている。


 でも、私はその外にいた。壁の影。日陰。

 誰とも目を合わせず、息を潜めるように座っていた。


「帝国の血……」

「正妻じゃないくせに」

「顔立ちが違うのよね」


 目も合ってないのに、心だけが刺された。

 そうして、誰にも名前を呼ばれないまま、夢は終わった。


 ぱち、と目が覚める。


 息が苦しい。汗をかいていた。

 ああ、またか。ひどい夢だ。でも……なれた。


 まだ夜だった。カーテンの隙間から、月の光が細く差し込んでいた。

 私はそっとベッドを抜け出して、扉を開ける。


 ――バルコニーに人影。


「お兄様……」


「リリス? どうしたんだ、こんな時間に」


「寝ようとしたら、ちょっとだけ思い出しちゃって」


 お兄様の声が、落ち着いた夜に優しく響く。

 ああ、声を聞いただけで、心の刺が溶けていく。


「夢……見たの。昔の、前のおうちの」


 私の声は少し震えていた。

 でも、ちゃんと話そうと思った。


「名前、呼ばれなかったの。帝国の娘って言われて、ずっとあの子って……」


 お兄様は黙って私の手を取ってくれた。

 あたたかい。小さなぬくもりが、私のすべてを包んでくれる。


「でも今は、違うの。

 ちゃんと、名前を呼んでくれる人がいるから」


「……俺のこと?」


「うん。だから――」


 私はにっこり笑って言った。


「お兄様のためなら、世界が滅んでもいいかなって」


「……いや、それはやめて?」


 お兄様が引きつった顔をする。かわいい。


「だって、お兄様がリリスって呼んでくれるの、すごくうれしいの。誰にも名前を呼ばれなかった私にとっては、もう、それだけで命を救われたようなもので」


「それは……うん、でも世界は滅ばせたくないな」


「じゃあ、たとえば帝国が明日攻めてきても、わたし、お兄様の盾になります! 剣にもなれます! あと家具でも!」


「家具……!? 盾や剣はまだしも、家具ってなに!?」


「クッションがいい? ソファ? ベッドとかでも!」


「いやいやいや、リリスに寝たり座ったりなんてできるか!」


「じゃあ、ひじ掛けでいいです。高性能な!」


「妥協しないで!」


 私の熱意とテンションが空回ってる気もしたけど、お兄様は笑っていた。

 きっと、悪くはなかったんだと思う。


「……でも本当に。私、お兄様の役に立ちたいの」


 ちょっと真面目なトーンで言うと、お兄様の目が優しくなる。


「お兄様にいてもいいって思ってもらえるだけで、もう十分うれしいの。

 でも、それでも……できるなら、何かいた意味も残したいの」


「……リリス」


 頭を撫でてくれる。その手が、すごくやさしい。


 そのとき、庭の奥からガサッという音がした。

 風の音じゃない。草を踏む、足音のような。


 お兄様がすぐに視線を向けた。


「……気配があるな。魔物かもしれない」


「魔物……?」


「いや、群れで動いてるなら、ただの迷いじゃ済まない。ここ数日、報告されてる異常行動のパターンに似てる」


 お兄様が低くつぶやく。

 その目は、普段よりずっと鋭い。


「……まさか、帝国が何かを仕掛けてきてるの?」


「まだわからないけど、関係ないとは言いきれないな」


 あの夢の中の帝国とは違う。

 でも、私の中にある不安と、どこかで重なっていた。


「お兄様、私も……連れてってほしいです」


「え?」


「お兄様の役に立てるなら、クッションじゃなくてもいい。荷物持ちでも、剣のお手入れでも、お茶係でも。……わたし、戦いたい」


「戦う、か……リリスが?」


「はい。お兄様を守るために。

 戦えないなら、心を支えるお兄様専用の特製抱き枕になります」


「やっぱり家具から離れないのね!?」


 お兄様が笑いながら頭を抱えた。


 でも、その笑顔が見られただけで、今日はきっと、いい日だ。


「……じゃあ、明日から少しずつ、鍛えていこうか」


「はい!お兄様のためなら、体力づくりからでも!」


 夜風が吹く。少し冷たいけれど、心はとてもあたたかかった。


 空に浮かぶ月は、少し欠けている。


 でも、きっと、満ちていく。

 お兄様の隣にいるかぎり、わたしの世界は、ちゃんと光ってる。


リリス、病んでる? 大丈夫でしょうか?


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踊りながら続きを書きます。

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