表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/17

武器製作を開始します!

生産チートです!

 金床に置かれた赤熱の鉄を、ハンマーで打つ。

 イメージするのは、騎士団でも採用されているロングソード。


 カン。カン。カン――。


 音が気持ちいいくらいに響いて、手のひらに振動が心地よく伝わって来る。

 燃える炉、ほとばしる魔力、鉄の匂い。現実にしか感じられない、手ごたえだ。


 問題は、目の前にある。ロングソードだ。

 ……まだ三回しか打ってないんだが。


 取得 鍛冶Lv:2

 取得 道具作成Lv:1

 取得 金属加工Lv:1

 取得 魔力付与Lv:1


 確かにゲームでは時間経過がなかったけれども。

 試しに鉄鉱石を取り出してそのまま打ってみる。


 カン。カン。カン――。


 目の前には完成されたロングソード。


 取得 鍛冶Lv:3

 取得 道具作成Lv:2

 取得 金属加工Lv:2

 取得 魔力付与Lv:2


「お兄様、これ……次の鉄鉱石です!」

「……ありがとう。リリス助かるよ」


 リリスが、素材倉庫から、鉄鉱石を小さなかごに入れて持ってきている。

 ワンピースの裾を結んで、動きやすい恰好をしているらしい。

 本人なりの作業モードなのだろうか?


 そして、目を輝かしているけど、これは普通の鍛冶じゃないと思うんだ。

 現に管理人さんは目をひん剝いてこの鍛冶を見ている。


 まあいいか。ゲーム仕様だというのならとことん利用してやればいい。


「お兄様、一緒に赤くて綺麗な鉱石があったのですが。これは?」

「それはルビーだね。宝石は魔力の伝導率が高いんだ。武器にすると高性能な武器を造れるんだよ:

「それも作れるようになるんですか?」

「うん。でも順番もあるからね。まずはロングソードを作っていこう。それはそうと……リリス、相槌を打ってごらん」


 俺は本格的な鍛冶を想定して、リリスに遠慮をしていた。

 ゲーム仕様だというのなら、その遠慮は不要だということだ。

 リリスにもハンマーを持たせて、俺が打った後にリリスの打ってもらう。


 カン。カン。カン――。


 完成したロングソード。

 隣でリリスは疲れた様子だ。

 疲労度が蓄積しているのだろう。リリスもプレイアブルキャラクターではないから、或いはチートがあるのでは?と推測していた。

 しかし、この様子ではないらしい。


「リリス。今日の相槌はおしまいだ。また鉄鉱石を持ってきてくれるかい?」

「お兄様。まだできます!」

「ダメだよ。道は一日にしてならず。ゆっくりとまた明日ね」


 なんともまあ、説得力のないことだ。

 目の前でチートしているからリリスが焦るのもわかる。

 でも、6歳からレベリングしていくのも、十分に脅威だと思うから我慢してくれ。


 俺は再び、槌を振るう。

 カン、カン。焦らず、でも止まらず。


 取得 鍛冶Lv:15

 取得 道具作成Lv:10

 取得 金属加工Lv:13

 取得 魔力付与Lv:9


「リリス。鉄鉱石はもういいから。銀鉱石を頼む」

「銀鉱石ですか?」

「ここの棚にある白い鉱石だよ」

「はい!」


 カン。カン。カン――。


 取得 鍛冶Lv:26

 取得 道具作成Lv:16

 取得 金属加工Lv:12

 取得 魔力付与Lv:11


 工房内にずらりとシルバーソードが並んでいる。

 大分作ったな。せっかくだから騎士団の装備を更新するつもりで作っていこう。


 次は金鉱石で作るゴージャスソードか。

 リリスに頼んで金鉱石をどんどん持ってきてもらう。


 カン。カン。カン――。


 取得 鍛冶Lv:42

 取得 道具作成Lv:30

 取得 金属加工Lv:35

 取得 魔力付与Lv:29


 つくったゴージャスソードで工房があふれそうだ。

 ここらへんで今日の鍛冶は終わるか。


「爺や。このシルバーソードとゴージャスソードは騎士団に配備してくれ。今のロングソードよりかは火力があるだろう」

「は……はい!坊ちゃま。その、ロングソードはどうしますか?」

「素材代には届かないだろうが。売ることにするよ」

「かしこまりました。手配しておきます」


 さて、最後にルビーとエメラルド、プラチナを持ってくる。

 これだけレベルアップしたんだ。

 今の技量ならアレが打てるはずだ。


 まずはプラチナと銀鉱石、エメラルドで。


 カン。カン。カン――。


 ウインドソードの完成だ。柄には銀を使い、エメラルドを剣の根元に埋め込んだ。

 ゲーム時代、片手剣でこの剣を使っていた記憶が蘇ってくるな。

 これで、自分の装備は完成。


 今度はプラチナと銀鉱石、ルビーを使って鍛冶をする、


 カン。カン。カン――。


 一本の短剣が完成する。刃の根元にルビーを埋め込んだ。まるで炎が宿っているかのようにルビーが輝いている。


「リリス、これは君の護身用に」

「え……私に?」

「もちろん。戦うためじゃないけど……持っているだけでも安心だから」


 リリスは恐る恐る短剣を受け取り、光を受けて反射する刃に目を見張る。


「…すごい。きれいです。お兄様が作ったんですよね」

「そうだよ」

「宝物にします」


 その言葉だけで、今日の疲れが吹っ飛ぶ気がした。


 その夕方。工房を出て、庭に出ると風が冷たかった。


 空には、ほんの少し欠けた月。

 隣には、今日一日を共に頑張った妹。


「リリス、今日はありがとう」

「私のほうこそ……お兄様といっしょに作れて、すごく楽しかったです」

「また、明日も頼んでいい?」

「はい!」


 ──この世界は、きっと優しくなんかない。

 でも今は、こんな日常があってよかったと、心から思えた。


 その夜。


 夕食を終えたあと、リリスは疲れたのか早めに寝てしまった。


 俺は屋敷のバルコニーに出て、月を見上げていた。空気は少し冷たく、夜風が心地よかった。


 そこで、騎士のひとり──見張り役のラルフが、静かに近づいてきた。


「アッシュ様。遅い時間に申し訳ありません」

「何かあった?」

「……少し、気になる報せがありまして。村のほうから“魔物の異常行動”が観測されたと」

「異常行動?」

「はい。通常の縄張りを離れ、しかも群れをなして移動しているようです。しかも、明らかに魔力濃度が異常な個体が混ざっているとのことです」


 それは、ただの魔物暴走ではない。何かしら外的操作の痕跡がある。


 俺の頭に、今日作った武器が浮かんだ。

 ただの訓練や趣味のためじゃない。これは、俺たちのための「準備」だったのかもしれない。


「お父様には?」

「すでに報告済みです。騎士団でも偵察と防衛を強化しております」

「ありがとう。気をつけて」

「……アッシュ様も。ご無事を」


 騎士は静かに去っていった。


 その場に立ち尽くしながら、俺は月を見上げた。


 ほとんど満ちたその光の向こう側に、何かが潜んでいるような気がしてならなかった。


 妹を守る。そのために強くなってきた。


 でも、それだけじゃきっと足りない。


 これからくる何かに向けて──俺は、もっと先へ進まなきゃいけない。


ブックマーク、評価、感想もよろしくお願いいたします。




作者が踊りながら続きを書きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ