全武器スキル解放!騎士団「もう勝てません」
ブックマークありがとうございます!
ダンシングしながら書きました!
「鍛冶場と錬金設備、それから装飾細工台と……台所が欲しい」
朝のランデル侯爵家、俺の一言が場を凍らせた。
お母様が眉をひそめて、リリスがぽかんと口を開ける中、父がいう。
「なるほど。いろいろ試してみたいってことか?」
ランデル侯爵であるパパン。フリック・ランデル。この領地の頂点である男。
「うん。自分で工房を持ちたいんだ。設備や素材なんかも使わせてもらえると」
「よしわかった。庭の端にでも設備班を呼んで工房を造らせよう。必要な道具はリストにして渡してくれ」
やばい。話が早すぎる。
「お、お父様?」
戸惑うリリス。パパンはにやりと笑っていった。
「男ってのはな、色々挑戦してみたい時期があるんだよ。なあ、アッシュ?」
「……そうなんだ、リリス」
俺は答えに困った挙句、適当なことをいった。
ごめんよリリス。
交渉には時間がかかると思っていたが、スムーズにいった。
心の中では、踊りまくっていた。
さて、これで工房に関しては明日には完成するらしい。
早すぎる。
俺は今日できることを早速始める。
訓練場に行って、巻き藁を周囲にひたすら設置する。
まずは片手剣からだ。
片手剣のレベルは10まで成長している。
アビリティ『回転切り』ができるはずだ。
心の中に沈んで剣を意識する。これだという感触があった。
――回転切り
周囲に設置された巻き藁に一斉にヒットする。
取得 片手剣Lv:12
アビリティや攻撃を使うたび疲労度が蓄積していくし、スキルを上げようと同じことを連続して行っていくと成長度が低くなっていく。
でも俺なら?
――回転切り
取得 片手剣Lv:13
早い。早すぎる成長だ!さあ、どんどんと色んな武器でしていくぞ。
取得 片手剣Lv:65
取得 両手剣Lv:79
取得 槍Lv:61
取得 斧Lv:52
取得 ハンマーLv:51
取得 短剣Lv:38
取得 双剣Lv:52
取得 拳Lv:35
これが本日の成果だ。ゲームでは巻き藁は壊れなかったが、現実となった今は、壊れてしまう。
それを騎士団にお願いして取り換えてもらっていたが、取り換えてくれた騎士たちが狂気を見たかのような表情をしていた。
教官も目を逸らしていた。
うん。こんなにアビリティを連打できるわけがないからね。
でもその表情はやめようか。なんか傷つく。
でも仕方がないか。この世界。レベル50まで行くのは天才ぐらいなものだ。
大体はレベル限界に達する。
その中でこの数値は、異常だ。
『レゾナンス・ハート』ではスキルレベルを上げることでもステータスを上げることができるから、これだけ上げていたら、相当な強さにまでなっているだろう。
本当はカンストまでやっていたかったが、家族に止められた。
現状の装備では効率的でないことだし、今日はここまでだ。
◇◇◇
そこは騎士たちの営舎。
話題の中心になっているのは最近めっきり態度が変わった噂の若君だ。
三日前は、シャツに重りを着けた状態で、独走状態だった。
俺たちはフル装備なんだから差は出る……かもしれないと無理やり納得した。
おとといは、同じフル装備にさらに重しを着けた状態で、独走状態だった。
俺たち以上の装備で。どんな身体をしているのか?常識が崩れ去った。
昨日は、一対一での実戦で強者を相手に戦いを制した。
俺たちの若君は実は武神かなにかの生まれ変わりなのかもしれない。そう噂した。
そして、今日。
「見たか?あれ……」
「もちろんだ。巻き藁を交換したのは俺もなんだぞ」
そこには、自分たちが見たことのある、どの戦士よりも鋭く、美しい軌跡を描く技の数々。
武器を変えたときは、自分たちと大差ない技量だった。
しかし、巻き藁を叩きつけて、アビリティを発動するようになってからは。
すさまじい成長だった。
まるで達人が技を思い出すかのようなスピードだった。
「昨日、若様は武神の生まれ変わりなのかもしれないっていったな?」
「……ああ」
「あれは違った。若様こそ武神だ」
「……ああ」
今度、もし若様が訓練に参加することになったら、あの抜き身の武そのもののようなお方と対峙しなければならない。
騎士たちは震えていた。
教官たちもひっそりと同意していた。
すでにあの方はこの騎士団の誰よりも強いと確信していたからだ。
この日以降、騎士たちはアッシュとすれ違うたび、息を止めて敬礼した──目を合わせる勇気は、まだなかった。
◇◇◇
次の日。
ランデル侯爵家の庭の隅に、秘密基地のような工房が誕生していた。
黒鉄の金床と鍛冶台に鍛錬炉。錬金薬品の保管棚や蒸留器。
装飾台や宝石加工用の細工台。刻印を刻める魔導器もあった。
そして場違いな台所。
侯爵家の実行力と財力、恐るべしである。
「これ、まるで研究所ですね」
工房の扉を開いた途端、リリスが声を漏らした。
ワンピースの裾を両手で押さえながら、きょろきょろと工房内を見まわしている。
設置された器具、ひとつひとつに目を輝かせるその様は、小さな探検隊か考古学者のようだ。
試しに金床に手を当ててみる。しっかりと固定されていた。
城の鍛冶場と同等以上のものだろう。
「うん、いい感じだ」
「アッシュ様」
背後から声がかかる。振り返ると、工房の管理を任された管理人が道具箱を持っていた。
「書かれていた初期素材を一通りそろえました。鉄鉱石に魔鉱石、青銅、銀、魔法水晶。錬金素材も薬草から希少素材まで用意しております」
「ありがとう。すぐに始めたい」
「はい。準備は万全です」
その言葉の通りだ。俺の周囲にはすでに素材と器具が揃っていた。
やるべきことは一つ。生産でスキルを得る。
そして、チートとして成長することだ。
生産チートを始めよう。
こんなレベリングあるわけないって思います?
『ルーンファクトリー5 パンチングマシーン』で検索してください。
それが、答えです。
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作者が踊りながら続きを書きます。