チートを見つけました
さて、リリスが悪役令嬢になる原因である。
家族との不和は解消した。
これで仮に王子と婚約者になってもリリス・病んでるにはならないだろう。
そのうえで懸念されることは何だろうか。
それは、この世界がRPGだということ。そして将来侯爵家は妹を売り払ってでも借金を返そうと考えてしまうことだ。
つまり、生き残るためには強さがいる。
さらに家のために金を稼がないといけないということだ。
現状家は裕福で、そんな心配はない。
ないが、将来その懸念があるのであれば、今のうちに対策するべきだろう。
それで俺が出した答えが、強くなることである。
このゲームは恋愛シミュレーションRPGというジャンルでありながら、領の開発や生産といった要素大きい。
今のうちにレベリングして強化していけば、領の生産力を向上させることができる。
つまり、金が稼げるということだ。
最悪のパターン(主人公が邪教徒ルートに進む)ことを考えれば最強になっておいても、損はない。素材収集のためのバトルのためや、ストーリーの打開のためにも。
とはいえ、この世界には限界値が存在する。人には向き不向きがあって。キャラクターごとに育てられる限界が存在する。
限界突破には裏ダンジョンに突入するしかない。
その裏ダンジョン攻略のためには能力限界がすべて99の主人公と、英雄クラスの仲間や従魔が必要になるわけで。
そもそも俺が弱かったら別の方法を模索しなければならない。
いざ、ステータス確認へ。
「ステータス」
Lv :2/-
疲労度:-/-
成長度:-/-
剣術 :3/-
学習 :2/-
乗馬 :4/-
どういうことだろう。限界値が設定されていない?
それとも見ることができない?
それに疲労度も同じ訓練を繰り返すことで経験値減衰を招く成長度も設定されていない?
仮説① 今は限界値が見られていないだけで、存在する。
仮説② ゲームで存在しないキャラだから設定されていない。
最高なのは②だが。期待しすぎ。しすぎだろう?
どこまででも成長ができるだなんて。
熟練度が百以上になるのは最初から+補正があるような天才キャラのみだ。
それも裏ボスクラスの。
それを、もしかして越えられる?
期待しすぎだ。
期待しすぎであると分かっている。
もしも、そうなら最高の素体だ。
主人公よりも強くなる裏ダンジョンのモンスターすらも超えて強くなる可能性があるなんて。
まずは検証するべきだろう。
俺はパパンの元に向かう。
「リソス……愛して……どうしたんだいアッシュ?」
不満そうなママン。
頼むよママン。これ以上息子の前でいちゃつかないでくれ。
「お父様。お願い事があってまいりました」
「――なんだい?」
立ち上がる覇気。
侯爵家として家を維持してきた化物の圧が俺に押しかかる。
「お父様の騎士団の訓練に混ぜてほしいのです。自分の限界を知りたくて」
「そんなことかい。アッシュもそんな年頃になったんだね。僕も最強になりたくて、騎士団に混ざって訓練したことがあるよ」
「そうなんですか?お父様ほど落ち着いた人が、意外です」
「男の子ならだれでも通る道だからね」
正直意外だ。パパンは明らかに文官タイプのお人だ。そんな経験があるとは、思ってもみなかった。
「では……」
「許可しよう。ただし、僕の信頼する者の部下として、だ。わかるかい?」
身分が劣るものに従えるかということだろうか?
問題ない。前世は祖父が農家だ。いまさら誇る血筋でもないだろう。
「わかりました。おねがいできますか?」
「ふふっ……。アッシュがそんなことをいうとは思ってもなかったよ。やっぱりリリスを引き取ったのは正解だったらしい」
正解にしていけるように頑張るよ。
兄としていえるのはそれくらいなもんだ。
その日の午後から騎士団の訓練に混ざることとなった。
俺のお守りを任された人は嬉しそうにしていた。
まあ、将来自分の上司になるかもしれない人に、自分の仕事を理解してもらえたり、経験してもらえたりするのは嬉しいことなのかもしれない。
正規装備を着けた騎士団と、重しを着けただけの俺が一斉に訓練場周りを走り出す。
3周もしたころには、若い人間は倒れだす。
俺はというと、疲れというのがいまいちわからないでいた。
十周・二十周と回り続ける。
とうとう相応に年を取った騎士たちが脱落していった。
俺はというと、疲れも感じずに走り続けていた。
正直、この時点で気づいていたのだ。
これはやばいってことを。
取得:持久力Lv:5
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作者が踊りながら続きを書きます。