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第2話: 火の鳥のように舞い上がれ

電波塔の動画は、予想通りバズった。

いや、バズったというより、炎上したと言った方が正しいかもしれない。


「おい、電波塔に不法侵入したYouTuberがいるらしいぞ」

「あいつ、キラってやつだろ?前も激辛チャレンジで炎上してたよな」

「迷惑系YouTuberかよ。マジで消えてほしい」


ネット上は、俺への批判コメントで溢れかえっていた。

テレビのワイドショーでも取り上げられ、コメンテーターたちは口々に俺を非難した。


「これは明らかに違法行為です。厳正な処罰が必要でしょう」

「承認欲求の塊ですね。こんな人間は社会から隔離すべきです」


散々な言われようだった。

しかし、皮肉なことに、この炎上騒ぎが逆効果を生んだ。

批判コメントが増える一方で、チャンネル登録者数と再生回数も急増していたのだ。


「おいおい、マジかよ……」


俺は驚きを隠せない。

まさか、批判されることで数字が伸びるとは。


「これが……運命の書の力なのか?」


俺は、あの古びた本を再び開いた。

次のページには、こんな言葉が浮かび上がっていた。


「火の鳥のように舞い上がれ」


舞い上がれ……か。

電波塔の動画で炎上した今、さらに過激なことをすれば、もっと注目を集められるかもしれない。

火の鳥のように……高く、激しく、燃え上がるような動画を。


「よし、分かった。やってやるぜ!」


俺は、目を輝かせた。

次の動画のテーマは、自作の翼で空を飛ぶこと。

無謀だ、危険だ、そんな声は聞こえない。

俺は、ただひたすらに、再生回数を追い求めていた。


俺はホームセンターで材料を買い込み、翼の製作に取り掛かった。

設計図も何もない。

ただ、頭の中のイメージを頼りに、木材や布、金属パイプなどを組み合わせていく。

完成した翼は、見かけこそ立派だったが、とても空を飛べるような代物ではなかった。


「まあ、いいか。どうせ動画映えすれば」


俺は、そう自分に言い聞かせた。

そして、撮影当日。

俺は翼を装着し、崖の上に立った。

眼下には、深い谷底が広がっている。


「みんな、見てるかー!今日は、この自作の翼で空を飛んでみせるぜ!」


俺はカメラに向かって叫んだ。

内心では、恐怖で震えていた。

しかし、そんなことは顔に出さない。

俺は、虚勢を張って笑ってみせた。


「さあ、行くぜ!」


俺は、崖から飛び降りた。

次の瞬間、俺は地面に叩きつけられた。

翼はもろくも壊れ、俺は激痛に悶絶した。


「うああああああ!」


カメラは、その一部始終を捉えていた。

この動画は、さらに大きな炎上を引き起こした。


「あいつ、ついに頭おかしくなったか?」

「危険すぎるだろ!マジで通報レベル」

「もう二度とYouTubeに顔出すな!」


批判の声は、さらに激しさを増した。

しかし、それでも、チャンネル登録者数と再生回数は増え続けていた。


俺は、病院のベッドの上で、その数字を眺めていた。

全身に包帯を巻かれ、身動きもままならない。

しかし、不思議なことに、痛みよりも、数字が増えていることの喜びの方が大きかった。


「俺は……間違ってない……」


俺は、そう呟いた。

炎上すればするほど、数字が伸びる。

それが、今のYouTubeの現実なのだ。

そして、俺は、その現実に適応した。

俺は、承認欲求のモンスターと化していく。


「もっと……もっとだ……」


俺は、渇望していた。

もっと炎上を。

もっと批判を。

もっと注目を。


まるで、火の鳥のように、燃え尽きるまで。

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