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告白。

作者: 愛那奈

 夕陽が海面に溶け込む頃、私はいつもの防波堤に腰かけていた。

 波の音が静かに耳を撫で、遠くでカモメが鳴いている。

 隣には葵がいて、彼の手が私の指先をかすかに触れた。

 冷たい風が頬を刺すが、彼の温もりがそっと心を包む。


「茜、寒くない?」


 葵の声は低くて優しい。

 私は首を振って笑った。


「大丈夫。こうやってると、寒さなんて気にならないよ」


 私たちは高校の同級生だった。

 卒業から二年、偶然の再会がきっかけでこうやって会うようになった。

 彼は昔と変わらない笑顔で、私の名前を呼ぶたびに胸がぎゅっと締まる。


「ねえ、覚えてる? 卒業式の後、私が泣いてた時、葵がハンカチくれたよね」


 彼は少し照れたように目を細めた。


「ああ。あの時、茜が泣き止まなくてさ。困ったんだから」


「ひどいな。私だって恥ずかしかったんだから」


 笑い合いながら、波の音に混じる私たちの声が心地よかった。

 夕陽が地平線に沈むと、彼が急に真剣な顔をした。


「茜さ……俺、ずっと言えなかったことがあるんだ」


 心臓が跳ねた。彼の手が私の手を握り、その熱が伝わってくる。


「何?」


 声が震えた。

 彼は一瞬目を逸らし、それから私をまっすぐ見つめた。


「好きだよ。高校の時からずっと。卒業して離れてからも、頭から離れなかった」


 時間が止まったみたいだった。

 波の音も、風の冷たさも感じなくなった。

 ただ彼の瞳と、そこで揺れる私の姿だけが世界に残った。


「私も……私も葵のこと、好きだったよ」


 言葉が溢れ、涙が滲んだ。

 彼の目が驚きに揺れ、次の瞬間、私を強く抱き寄せた。


「ほんと? 信じられない……嬉しいよ」


 彼の声は震えていて、私の髪に触れる息が温かかった。

 私は彼の胸に顔を埋め、心臓の鼓動を感じた。


「ずっと言えなくて、ごめんね」


 私が呟くと、彼は首を振った。


「いいよ。これから一緒にいられるなら、それでいい」


 夜が訪れ、星が空に瞬き始めた。

 私たちは手を繋ぎ、防波堤を後にした。

 波の音が遠ざかっても、彼の手の温もりは消えなかった。


「明日も会おうね」


 葵が笑うと、私も頷いた。


「うん。ずっと一緒にいたい」


海風が私たちを優しく包み、新しい始まりを祝福するように吹き抜けた。



最後まで読んでくださりありがとうございます!

“珍しく”バッドエンドのない純恋愛を書いてみました!

今後の執筆のモチベーションにも繋がっていきますので☆☆☆☆☆での高評価、ブックマークで作者を応援していただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
バッドエンドのない純恋愛。泣き出した時にハンカチを・・・というエピソードが入っていていいなって思いました。
純文とも感じるほどの透き通った告白でキュンとしました!
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