接触
荷物を所属クラスに置いた後は入学式をつつがなく終わらせ、改めてこのクラスのメンツを再確認した。入学式では新入生代表としてエルキュール・ポワロが挨拶をし、一応厳粛な式典だっていうのに黄色い声援が後をたたなかった。それはクラスについてからも変わらず、寧ろ他の攻略キャラたちと同じクラスになった事により余計に煩くなった。
ある女子は同じクラスになれたことを喜び、逆に一緒のクラスになれなかった女子は絶望に打ちひしがれている有様なわけで、……かくいう俺もそのイケメンたちと一緒のクラスになってしまったわけで困っている。…えっなんで困るかって?そりゃ面倒だからに決まっているからだろう。何を好き好んでイケメンと同じ空間にいたいとおもうんだ?しかも面倒ごとが必ず付き纏うような連中とだ。
もうこうなった以上はこちらから面倒ごとは起こさず、事態の収拾を見守るほかあるまい。そして当然のように我らが主人公も一緒のクラスだ。しかも何を間違えたのか隣の席というミラクルの上、俺と主人公を囲うようにイケメンどもも座っている。………これ何の罰ゲーム?そうこうしている内に、我々の担任となる教諭が来たようだ。
「えーっ、静粛に。本日よりお前たちのクラスを担当する事になった“ジュール・メグレ”だ」
「これから3年間よろしく頼む」
流石に、先程まであれだけ騒いでいた女子たちも今は大人しくしており、メグレ教諭の話を聞く姿勢でいる。そのメグレ教諭だが、ゲームでも攻略キャラでも無いのにも関わらず、一部にファンができるほど聡明なキャラとして人気がある。かくいう俺も結構このキャラは気に入っており、攻略キャラよりもよっぽど好感を持てる。それからは教諭からこの学校の育成方針やカリキュラムなどについて一通り説明を受け、いよいよ自己紹介の時間となった。
「それじゃあ、席順で軽い自己紹介をしてもらう。まずは……」
前の席から順に自己紹介が始まり、攻略キャラの番に回ってきた。
「エルキュール・ポワロだ。みんなよろしく頼む」
そう言った言葉を皮切りにまたしても、そこいらから黄色い声が湧き上がった。……いや、入学式でもうやっただろう、と心の中で突っ込んでしまいまだ、こんなのが続くのかと辟易した気持ちになった。
「オーギュスト・デュパンだ。以上」
「明智小五郎です。皆さんどうぞよろしく」
「……金田一耕助。……よろしく」
「ジョン・マープルです。皆様どうぞよしなに」
とこんな具合に愛想がいいのか悪いのかわからん自己紹介聞き、遂に主人公ちゃんの番である。
「俺はシャーロック・ホームズ。名前でわかったかもしれないが我が先祖はかの名探偵であり、俺もいずれご先祖様を超える探偵になる。皆よろしく」
この発言に対しての反応はまちまちであったが、攻略キャラ達の反応はというと……少しばかり興味深い、といった具合でゲームではここから攻略キャラたちと絡む起点になる。頑張れよイケメンども……と心の中でテキトーに応援しつつ自分の手番が回ってきたため、可もなく不可もない自己紹介でつつがなく自分の番が終わった。
そこからは未だクラスの女子が攻略キャラ5人に熱い視線などが飛び交う中、どうにか濃い入学式を終えて大半の生徒はそのまま学生寮に足早に行くか、我らがクラスのイケメン5人集に着いったかになるのだが、俺はというと周りが騒がしいのも嫌だったので時間をずらすようにして寮に向かおうと教室で1人になるまで読書に老け込む事にした。
「……もうこんな時間か 」
読書に集中しすぎたせいか日はだいぶ傾いていた。流石に初日から寮の門限を破るのはまずいと思い荷物をまとめて教室を出ようとした時、自分しかいないはずの教室で聞き覚えのある声で呼び止められた。
「やあ、まだ教室に残っていたんだね」
その声の主は今最も関わりたくない相手である主人公のホームズだった。そに人物に面食らってしまう中どうにか言葉を絞り出し
「……まあ、あんな騒がしい中で出ていきたくなかったからな」
かなりぶっきらぼうな言い方になったが、その答えに満足したのかホームズは改めて自己紹介を始めた。
「改めて、シャーロック・ホームズだ」
「……白河凪だ。昼の自己紹介で覚えてないかもしれないが、一応留学生だ………」
そう言った俺の発言に対してホームズは
「ふふっ、変なこと言うんだね」
??何故ここで笑ったのだろうか、そう疑問に思っているとそれが顔に出てしまったのかホームズは丁寧に答えてくれた。
「だって留学生なのに、一応なんてつけている人初めて見たから」
その答えに対して俺は、なるほど………と得心がいき
「あぁ、そりゃ同じ留学生でもすげー目立っていたのがいたからな。俺のことなんてクラスの連中覚えてないんじゃねえのか?」
そのように捻くれた答えを言うとホームズは
「なるほどね、でも俺は覚えていたよ」
「それは、お前が変わっているからだろ」
と、思わず余計な事を口走ってしまった。これ以上余計な事を言うか不安になった為、話を切り上げるようにして急いで教室を出るようにした。
「それじゃあ」
「あぁ、それじゃあまた」
……何だか嫌な感じがしたが、まあいい。兎にも角にも教室を出た俺は今日から下宿する学生寮に向かいながら周囲の地形を把握するように歩みを進めると、ようやく寮に着くことができた。俺が下宿する学生寮はいわゆる男子寮でここからさらに離れた場所に女子寮があるのだが、……細かいことは後で説明するとして今は自分の部屋で早く休みたい。そう、はやる気持ちを抑えつつ俺が来たのを待っていた寮長が出迎えてくれた。寮長からこの寮の一通りのルールと間取りなどの説明を受けながら自身の部屋へと案内をしてくれた。
ようやく部屋に着いた俺は寮長に感謝を述べ、ドアに手をかけた。ちなみにこの学生寮は一部屋につき2人、つまり相部屋となるわけで寮長からも既にルームメイトは部屋にいることも知らせてくれた。そして部屋に入るとそこには思いもよらない相手がいた
「やあ、またあったね。これからよろしく、白河くん」
……………………………………………………マジかよ




