第97話 水龍VS黒竜
「カ、カイル!?」
カイルの動きは、私の何倍も速い。
認識するよりも前に発された私の声が私の耳に届いたのは、カイルの剣がサイスさんに触れ──そして、跳ね返った瞬間だった。
「ほう、我の魔力感知を掻い潜るとは。本来なら踏み潰してやるところじゃぞ」
サイスさんが、普通の子供なら吹き飛ばされそうなほど強い威圧を放つ。
威圧とは、その名の通り自分の体内にある魔力を相手に集中させて発射することで相手を怯ませる技術らしい。
技術とは魔法とは違い、何度か挑戦してコツをつかむことで得られるもののため、使える人は少ない。
ちなみに、これは魔力を消費するのに魔法ではないらしい。
ややこしいな、技術と魔法の違い。
もちろんと言うべきか、私に使える技術はない。
学校の授業で習ったことを反芻していると、私の前に出たカイルも、対抗してか威圧を放つ。
「やっぱり、その身体と魔力量は伊達じゃないね。僕程度じゃ、脅威にもならないか」
カイルにしては珍しく、吐き捨てるようにそう言った。何かに怒っているのだろうか?
「竜にしては、十分強くはあるがな。そこの黒竜、名を何と申す」
「カイル。本当は、人さらいに名乗る名なんてないんだけどね!」
正体を見破られることは予想していたようで、驚くこともなく答えるカイル。
それにしても、忘れてた。私、この人にさらわれてここまで来たんだったな。
でも、カイルがここまで怒るのって珍しい。なんか面白そうだし、サイスさんの実力も見たいし……私がやるべきなのは観戦だね!
長くても、5分くらいで終わるだろう。
……そう思ってたんだけどなぁ。
「ねぇ、あと何分くらいで終わる?」
「うむ。そこのカイルが一撃でも攻撃をまともにくらったら、すぐに決着がつくであろう。まぁ、このまま避け続けるのならば分からんが」
私が聞くと、サイスさんがカイルへの攻撃の合間に答える。
カイルは人型のまま身体能力だけ黒竜にするっていう器用なことしてるから、まともに攻撃を当てにくいみたい。
対するサイスさんの攻撃も、普段戦う相手が海の大型の魔物だからか、対個人にしては広範囲かつ威力も大きいんだけどね。
だから、カイルが避けるのもギリギリだ。
「僕は攻撃にまともに当たるつもりはないし。当たりそうになったら、今まで通りギリギリで避けて回復するから」
……もうこの戦い止めようかな?




