題89話 クラーケン
「……ルカはやっぱりすごいね」
「ルカ……また変なの呼び出したんですか?」
「いや呼び出してなんかないよ!?」
カイルはともかく、フィーアのは見過ごせない。
呼び出したんですか、って。こんなでっかいイカタコ呼び出すわけないでしょ。
「っ!?キャル!」
「きゃぁぁ!?く、クラーケン!?」
「……僕は残って戦ってみるよ。みんなはその間に逃げて」
「死ぬ気かアルファード!?クラーケン相手に勝ち目なんてないだろ!みんなで逃げるんだよ!」
キャルとマルクスが言ってるクラーケンって、あの海の魔物?イカみたいなタコみたいな……確かに!!
本当にイカみたいでタコみたいなんだね。
足は1、2……17本で、色は……何色かな、あれ。
光の加減によって、水色にもピンクにも見える。もしかしたら、本当の色は虹色だったり?
「考えていることは分かりませんが、呑気にしている場合じゃないみたいですよ」
「え、ほんと?」
フィーアの言葉に驚いて振り向くと、確かに呑気にしてる場合じゃないみたいだ。
マルクスとアルファードが、穴が開けられた船に2人だけ残ってクラーケンを足止めしようとして、マインとキャルに止められているらしい。
船に乗っていた漁師さんたちや生徒は、すでに泳いで逃げている。
あれ?エルル先生は?
「ほらみんな!何やってるんです!」
「へっ?って、エルル先生!」
「急いで逃げますよ。みなさん、泳げますか?」
泳げないと答えた4人は、エルル先生の風魔法で連れて行かれた。
クラーケンは、ここぞとばかりに魔法で作った水の刃を大量に飛ばしてくる。
フィーアとカイルは泳げるけど、商人のマインとキャル、剣の扱いや魔法の訓練が基本の貴族であるマルクスとアルファードは泳げないらしい。
……私?えぇ、えぇ、お約束通り、風魔法で飛んでおりますとも。クラーケンの攻撃から目をそらすことのないように、後ろ向きで。
そんなどうでもいいことを考えながらクラーケンから逃げるけど、やっぱりクラーケンは速い。
エルル先生の風魔法で飛ばされている4人組にも水の刃が届きそうなときは、私が風で壁を作って防いでいる。
でも、もう陸が近づいてきている。このまま行けば、誰も怪我せずに──
「──っ!?」
私は、嫌な予感がしてみんなの方を振り返る。
すると、クラーケンがみんなを捕らえるために、海の中から出した足をみんなに巻き付けようとしていたところだった。
「ちょっやめ!」
後ろ向きに風の壁を展開していた私が叫ぶが、それを無視してクラーケンの足はスルスルとみんなに巻き付いた。
「「「「「「「──ッ!!」」」」」」」




