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異世界依頼人〜何万もの前世の能力で無双する〜  作者: 最大値
第1章 アビスロック編
6/12

第4話 「ソフィア」

前の話に引き続き流星の前世の記憶についての話です。

次話から元の時間軸に戻ります。



 

 俺は今、俺の姉であると言い張って聞かないエルフ族のソフィアと朝食を共に食べている。


 俺が住んでいるエルフ族の村の朝食は毎日決まって日本人の主食の白米とほぼ類似しているゴヌギという食物と村の上空に飛んでいるカラス程度の大きさのケッソンという鳥の丸焼きだ。

 エルフ族の村はついさっきソフィアが消滅させたのだが…。


 味はというと、ゴヌギは白米のような見た目をしていながらも少し甘い。丁度おにぎりに塩と間違えて砂糖を入れてしまった時のような味だ。

 その時は白米の存在を知らなかったが、日本人に生まれかわり初めて白米を食べた時には甘くないことに感動したものだ。しかも強い味は無いのだがとても深みのある味がして驚いたものだ。

 日本人にもゴヌギを食べてもらいたいものだ。きっとあまりの甘さにむせ返ることだろう。


 そしてケッソンという鳥はというとこれはゴヌギに反してとても美味い。ケッソンは食べられる箇所がとても多いく肉自体もとても柔らかい。朝食からゴヌギを抜いてケッソン2匹の丸焼きにした方が良いとさえ思う。


 俺は無言でケッソンの肉の味を味わいながら黙々と朝食を食べていたのだが、ふとソフィアの方を見るとソフィアは如何にも不機嫌そうな表情をしていた。


 「えぇと…ソフィア…俺何かした?」


 ソフィアは黙ったままだ。

 俺はソフィアに何かしたのだろうか?

 嫌がらせなどは一切してないと思うのだが。

 分からない。

 とにかくソフィアの機嫌を損なわせることだけは絶対にしてはいけない。

 考えろ。

 ソフィアは俺に対して何でそんなに不機嫌な表情をしているのかを。


「ソ…ソフィア。今日の朝食のケッソンおいしいね。」


 やらかした。  

 考えすぎてこんなどうでもいいことを言ってしまった。

 俺は恐る恐るソフィアの方を向いた。


 ソフィアの方を見るとソフィアは満円の笑みで小さい口の口角を上げていた。

 こ…これはセーフなのか?


 「ソフィア?」


 ソフィアは食べている途中なケッソンを置いて、俺の方に駆け寄ってきた。

 ソフィアの顔が俺の顔と当たる寸前にまで迫ってきた。

 どちらかが少しでも動いたら俺とソフィアな唇同士が触れ合う位置だ。

 

 「ソフィア?どうした?」


 「やっとだ!」


 「すまない。何がやっとなのか俺には分からないが一度離れてくれるか?」


 俺がそう言うとソフィアは離れてはくれた。

 離れてはくれたが、俺の横で密着した状態で座っている。

 まぁ、さっきよりは絶対マシだ。

 あれ以上されたら俺の心臓が持たなかったところだ。

 子供のような体型と言ってもエルフなのだから何千年間も生きているれっきとした女性だ。俺だってドキドキする。

 なんせソフィアは女神様と比べても引けを取らないくらいの超絶美少女だ。

 さっきまでは村を壊滅させた張本人だという印象が強すぎて気づかなかった。


 「やっとだ!」


 「だから何がやっとなんだ?」


 「やっとだ!」

 

 どうやらソフィアは可哀想なことにやっとだ!としか喋れない呪いに掛かってしまったらしい。


 「やっと、マシューが私に話かけてくれた!」


 どうやらソフィアは俺から話かけて貰えたことがとても嬉しかったようだ。

 ソフィアはかまってちゃんなのかもしれない。


 「さっきも話してただろ。」


 「それは、マシューが私を姉と認める前だ。認めてからはマシューが自分から私に話かけてくれたのは今のが初めてだ。」 


 確かに考えてみればそうかもしれない。

 俺がソフィアを姉と認めてからはソフィアが俺に話かけてきたことに対しての返答しかしてなかった。

 考えてみれば俺は結構失礼な奴だな。

 人とのコミュニケーションが必要最低限の返答のみだなんて。

 しかもソフィアからすれば実の弟からそんな態度を取られているのだから、そりゃあ不機嫌にもなるだろう。

 

 「ごめん。俺が悪かった。そりゃあ最低限の返答しかしない奴に怒らないわけないもんな。別にソフィアのことが嫌いなわけではないよ。」


 「本当か!私が何か嫌なことをしたのだと思って、ずっと考えていたんだよ。」

 

 さっきの不機嫌な表情は考えている時の表情なのか。

 そう思うとソフィアのことが可愛らしく思えてきた。


 「嫌なことがあれば私に直接言ってね!私は人と接するのが苦手だから。」


 確かにソフィアは人と接する得意ではないだろうな。

 1人で勝手に話を進めだすし、言ってることの意味が分からないのにことが大半だからな。


 「あぁ分かった。嫌なことがあればその都度言わせてもらうよ。」


 ソフィアと話している内に俺は朝食を食べ終わった。

 ソフィアは食べるのが遅い。俺が食べ終わってからも30分近く朝食を食べるのに時間がかかっていた。


 「ごちそうさまー!!!」


 ソフィアは元気いっぱいな声でそう言うと立ち上がって隣に座っている俺に手を差し伸べてきた。


 「ありがと。」


 俺はソフィアの手を取って立ち上がった。

 ソフィアの手は思っているよりも小さくて柔らかくて少し力を込めたら折れてしまうんじゃないかと思うほどだった。


 「ここに居てもすることが何も無いから、とりあえず近くの街に行こうか。」


 「ごめんソフィア。俺も行けるものなら行きたいんだが、俺は族長になるまでに村から一歩でも出たら心臓が止まって死ぬ呪いに掛かっているんだ。俺のことは置いて1人で街に行ってくれ。」


 そう。俺だって街に行きたい。

 行きたいんだけど、この禍々しい呪いのせいで村から出られない。

 俺はソフィアと一緒に街に行きたいんだけどな。

 無理なものは無理だ。諦めるしかない。


 「何言ってんの?その呪いって村から出たら心臓が止まって死ぬんでしょ?ていうことはもう大丈夫。」

 

 「そっちこそ何言ってんだ?村から出たら死ぬんだから街に行けないんだよ。意味分かって言ってる?」


 ソフィアはまたおかしなことを言っている。

 村から出たら死ぬんだから街に行けるわけがないだほう?

 

 「分かってるよ。村から出たら死ぬんでしょ?じゃあもう大丈夫。だって、村はもう私が壊滅させてもう無いから。呪いの対象となる村はもうこの世界には存在しない。」


 「そんな理屈で俺が元々村の敷地だったところから出た瞬間死んだらどうすんだ?俺が死なない保証はどこにも無い。」

 

 「保証は無いよ。でも…」


 村が壊滅しなくなった事で呪いの対象となる村はこの世界から消えたという説も絶対に間違っているとも言えない。

 だが、どこにも死なない保証は無い。


 「でも、なんだ?」


 「私を信じて。」


 その言葉を聞いて俺の体はビリビリと電気が走ったような鳥肌が立った。

 俺の本能がソフィアのことを信じろと言っているのか鳥肌が止まらなかった。


 「分かった。ソフィアを信じる。もし死んでも恨みはしない。」


 「絶対死なないから。マシューは私が死なせない。」


 ソフィアはまた俺に手を差し出してきた。

 俺はソフィアの手を取り、共に歩き始めた。

 暫くするとやがて村と世界の境界線の間近まできていた。

 あと一歩でも前に足を踏み込めば俺は村から出れる。

 俺は手を繋いでいるソフィアの方を見た。


 「大丈夫。私を信じて!」


 ソフィアは俺を真っ直ぐに見つめている。

 俺は覚悟をして頷いて、足を前に出した。

 足が村の敷地外に着陸した。


 何千年間振りに俺が外に出た瞬間だった。


 胸に手を当てて心臓を確かめる。

 ドクンッドクンッ。 

 心臓は鼓動を打っていた。



 俺は生きていた。



 「私を信じろって言っただろ?」


 「そうだな。ありがとう。ソフィア。」


 「どういたしまして!」


 ソフィアは満円の笑みでそう言った。

 その笑顔を見て可愛いと思ってしまった。


 可愛いと思ってしまったことは一旦置いといて、これからどうするべきなのか。

 俺は村の外にろくに出たことがない。

 

 そうだな。旅をしたいな。


 「ソフィア。」


 「なに?」


 「旅がしたい。ソフィアと一緒に旅がしたい。」


 気づいたら一緒に旅がしたいなどと恥ずかしいことを言ってしまっていた。

 

 「え、それめっちゃ楽しそう!マシューとの旅なんて絶対楽しいじゃん!」


 「俺もソフィアとの旅は楽しいと思う。」


 「「これからよろしく!」」


 俺とソフィアは同時にそう言った。

 初めてソフィアの考えていることが分かったみたいで嬉しかった。


 それから俺達はその日の内に村を掃除して、エルフ族の人達の墓を作った。


 その後俺達は浮遊魔法で上空を飛んで、近くの街に行った。

 

 「今日はここで泊まろうか。」 

 

 ソフィアはそう言っていかにも高級な宿に入っていった。


 「お金は大丈夫なのか?」

 

 「こう見えて私お金は沢山あるから心配しないで。」


 「そうか。じゃあお言葉に甘えることにするよ。」


 「そうしてくれ。」

 

 ソフィア程の実力のある魔法使いならばお金があるのも当たり前といったら当たり前だろう。

 なんせエルフ族を壊滅させたんだからな。

 エルフ族は決して弱いわけではない。

 むしろ大魔法使いになる様な逸材も大勢いるくらい。

 そのエルフ族を一晩で壊滅したのだからソフィアの実力は大魔法使い達よりも上だろう。

 俺には想像のつかないくらいの実力だ。

  

 「部屋まで案内いたします。」 


 俺がそんなことを考えている間にソフィアは宿代を払ったようだった。

 宿の従業員が部屋に案内してくれた。

 

 「こちらのお部屋になります。」


 「「ありがとうございます。」」


 俺達は礼を言って部屋に入った。

 夕飯は街で買った鳥肉を食べた。

 その鳥肉はケッソンとは違い肉質は硬かったが味は美味しかった。

 

 その後俺はすぐに部屋のベッドに横になり、やがて寝た。


 次の日。

 俺達は宿を出ると街の最端まで行った。


 「旅をするといっても、最初はどこに行く?」


 「それなら私行きたいところがあるの!精霊の国アレクサンダーってところなんだけどいい?」


 精霊か懐かしいな。

 俺は精霊として生まれたこともある。

 どんなところか気になるな。


 「うん。そこでいいよ。」


 「やったぁ!!!」


 それから俺達は精霊の国アレクサンダーに向けて出発した。


 約3ヶ月間かかってようやく精霊の国アレクサンダーに着いた。

 アレクサンダーの景色は本当に神秘的だった。

 精霊の森では見た事も無いような様々な植物があり、その全てがまだ完全な精霊ではない微精霊が発する魔力の光によって輝いているように見えた。

 ソフィアもそう光景を見て目を輝かせていた。


 その後も俺達は様々なところに旅をした。


 獣人王国に行った。

 

 獣人王国は獣人が人口の大半だが、その他の人種の人々も住んでいた。

 獣人王国の文明レベルはこの世界でも高い方だろう。

 魔法を使わずに金属を加工することが出来ていた。

 魔法がある世界は魔法に頼り切りで魔法以外の技術の発展が文明レベルに反して極度に遅れていることがほとんどだ。

 もしかしたら獣人王国には転生者がいるのかもしれないな。


 亜人の国テオドールに行った。

 

 テオドールはエルフを信仰していた。

 ソフィアは道中で度々神のように崇められたことで調子に乗って、謎の集会を開いてテオドールの人々にソフィア独自の思想を解いていた。

 テオドールの人々もそれを正しいと信じた者が大勢いてソフィアの宗教でも出来そうな勢いだったので俺が止めた。

 危うく手遅れになるところだった。


 魔族の国アドルファスに行った。


 アドルファスは魔族の国で魔族以外はほとんど見かけなかった。

 魔族といっても誰彼構わず襲ってきたりはしない。

 誰彼構わず襲ってくるのは魔族ではなく魔物と俺達は呼んでいる。

 彼らは俺達と同じくらいの知性があるからだ。

 まぁ、多少気性の荒い者は多いが…。

 ソフィアと俺はアドルファスには長く滞在した。

 なんせダンジョンや魔物が沢山いるからだ。

 ダンジョン巡りをしたり、希少な魔物を見つけて捕獲したりもした。

 

 空中都市アーロンに行った。


 アーロンは行くのに苦労した。

 だって超高度の空にあるからだ。

 俺とソフィアは浮遊魔法では行けなかったので2人で超高度の空まで飛べる魔具を作った。

 その魔具を作るのに何年もかかった。

 ようやく魔具が完成して俺達はアーロンに行くことが出来た。

 アーロンは誰も住んでおらず魔物も一匹もいなかったが、神話の時代にあったとされる神具が数多くあった。

 だけど、空中都市に神具があることを誰かに知られたら空中都市を巡って戦争が勃発するので、俺達は神具を持ち帰らなかった。

 本当は使いたくてたまらなかったんだけどね。


 それからも俺とソフィアは旅を続けた。


 ソフィアとの旅はとても楽しい。

 俺にとってソフィアは無くてはならない存在になっていた。

 

 だけど俺は旅をしている時に1つだけ嫌なことがある。


 ソフィアに対してではない。

 

 俺が弱いことが嫌なんだ。

 

 旅の道中での戦闘は大抵は2人で戦う。

 だが異名という特定の事に長けている者につけられる呼び名をもつ者などと戦闘になった時、俺は実力差が有り過ぎて戦闘に参加することすら出来ずにソフィアに任せっきりになる。

 

 それが嫌なんだ。

 

 強くならなければと思った。

 

 俺はある旅の道中で思い切ってソフィアに言った。


 「ソフィア。俺を強くしてくれ。」


 「なんで?」


 「俺は弱い。そのせいでソフィアに負担をかけていることが嫌なんだよ!」


 ソフィアに指導を頼んだ。

 これ以上ソフィアに負担をかけれなかった。


 「分かったよ。私がマシューを強くしてあげる!」 

 

 「よろしく頼む!」


 ソフィアが了承してくれてホッとした。


 「マシューは私の異名を知ってる?」


 「確か…魔眼師だっけ?」


 「そう!魔眼師!私は数万の魔眼を持っているからね。凄いでしょ!」


 数万か…凄いな。

 俺は1つも持っていないのに。


 「そこで!マシューには魔眼を与えるので使い方を身につけてもらいます!」


 「俺が魔眼を?そんなことが出来るのか?」 

 

 「私に不可能は無い!!!」


 そう言ったソフィアは手を俺の顔の前に出した。

 

 そして人差し指を俺の両眼に突き刺した。


 「痛い!痛い!痛い!」


 「ちょっと我慢しなさい〜」


 「痛い!痛い!痛い!」


 「はい!おっけ〜」


 ソフィアは俺の両眼から人差し指を出してくれた。

 さっきまでの痛みは何故か消えていた。

 こんな痛みはもうごめんだ。


 とりあえず俺は眼を開けた。

 

 その瞬間、頭がくらっとして並行感覚を無くしたのか俺は盛大に転けて、立とうとしても立てなくなった。


 「大丈夫だったみたいだね」


 「ど…どこが…大丈夫なんだ!!」


 「マシューが立てないのは『万里眼』という魔眼を私から受け取ったからだよ。」


 「ば…万里眼?」

      

 頭がくらくらしながらもソフィアと対話するくらいには意識はあった。


 「これからマシューが普通の生活を送る為には魔眼を使いこなさなければいけないよ。」


 「ど…どうやってだ?方法を…教えてくれ。」


 「魔眼を使うには大量の魔力が必要なんだよ。今のマシューは魔力を魔眼に送り込みすぎて魔眼が暴走しているんだよ。だから魔眼に送り込む魔力を減らせばいいんだよ。出来る?」


 魔眼に魔力を送り込んでいたのか。

 ソフィアに言われるまで全く気づかなかった。

 

 俺は魔眼に送っている魔力量を減らした。

 する前に言って欲しかったものだ。


 「な…なんとか。制御は出来るよ。」

  

 「よし!じゃあこれから魔眼を使いこなす為の訓練を行います!」

 

 「よろしくお願いします。」


 そうして、ソフィアとの訓練は約1ヶ月続いたが俺は『万里眼』を使いこなせるようになった。


 「ありがとう!ソフィア!」


 「礼は要らないよ!まだまだこれからなんだからさ!」


 「これから?」

 

 ソフィアそう言う俺に近づいて俺の両眼に人差し指を突き刺した。

 

 「痛い!痛い!痛い!」


 「我慢我慢〜」


 「痛い!痛い!痛い!」


 「はい!完了〜」

 

 俺が眼を開けると頭がクラっとして並行感覚を失ったのか地面に転けた。

 理由はすぐに分かった。

 ソフィアが新しい魔眼を俺に授けたんだ。

 

 俺は魔眼に送っている魔力量を減らした。


 「これも魔眼だよな?」


 「うん!そうだよ!これは『転移の魔眼』って言って『転移の魔眼』を持っている同士が契約することでいつでもどこでもお互いの位置を交換することが出来るんだ!便利でしょ!」


 「確かに便利そうだな。ところで俺はあといくつ魔眼を授けられるんだ?」


 「たくさん!かな?」


 ソフィアに正確な数など聞くんじゃなかった。

 ソフィアは俺に魔眼のことを知ってもらうことに喜びを感じているだろうからな。

 人は誰しも自分の好きなことを他の人に教えることは楽しいからな。


 それから俺は万はいかずとも100を超える魔眼を授かり、その度に使い方を習得した。


 


 しばらくして俺達の旅の続きが始まった。



 それからの旅では異名を持つ相手との戦闘にも引けを取らずに戦うことが出来た。

 やっとソフィアと同等な関係になれたのだと感じて嬉しかった。


 だけど、俺には不安なことがあった。


 ソフィアに対する思いについてだ。


 俺はいつの間にかソフィアのことを異性として本気で好きになってしまっていた。


 ソフィアとことを愛していた。

 

 この世で何よりも愛していた。


 だけど、その思いをソフィアに告げることによって今の俺達の関係性が崩れることが怖かった。


 だからいつまで経っても俺はソフィアに思いを伝えることが出来ずにいた。


 だが、時はいつまでも待ってはくれない。


 物語に始まりと終わりがあるように。


 俺達の旅にも終わりの時が来た。


 


 その日は俺達は周りを見渡しても何一つない荒野の上空にいた。

 

 「近くに街でもないかな?」


 「多分あと3日も飛べば街につくと思うよ。」


 そんな会話をしていた時、上から大量の魔力弾が降ってきた。


 俺達は防御魔法でそれらを防いだ。


 「誰が撃っきたんだ?」


 「私にも分からない!」

 

 ソフィアでも分からないとは一体どれほどの手練れなんだ?


 「ソフィ…」


 その瞬間何かが俺の後ろに現れ俺の頭に向かって魔剣のようなもので攻撃してきた。


 ドジャッ

 

 俺は間一髪致命傷は避けたが相手の斬撃があまりにも速く魔剣は俺の左腕を切断した。

 

 俺の左腕は地上に落ちていった。


 次の瞬間ソフィアが魔弾を撃ち俺も素早く魔剣を作り攻撃した。


 相手が防御魔法により攻撃を受けた。


 「誰だ?お前は?」


 「そうですね。ワタシは貴方達を排除しにきた者、魔王軍四天王の1人、戦慄の魔人、アッシュだ。」


 アッシュは長い黒髪と黒い瞳、茶色の肌をしていて高そうな黒いズボンを履いていた。

 上半身には服を着ていなく腹筋が割れている。

 凄い筋肉だ。

 肉弾戦で勝つことは不可能だろう。


 「アッシュ。魔王に命令されたのか?」


 「いえ。ワタシの自己判断です。」


 最近魔王と名乗るものが魔王軍を作った。

 魔王軍は周辺の国を攻めていき勢力を広げていた。

 俺達は旅の道中であった魔王軍と何度か戦闘になったことはあった。

 だが、わざわざ四天王が俺達を排除しに来たのは何故た?


 「ワタシは魔眼師と一度戦ってみたかったんです。魔眼師が魔王軍を撃破したという報告を聞いてワタシはここに来ました。」


 「そうか。だがな、俺はこんなところで死ぬわけにはいかないんだ。俺達が勝たせてもらう。」


 そうして俺は魔剣を振りかざした。

 アッシュもそれに反応して魔剣で俺の攻撃を受けた。

 

 隙を見てソフィアが魔弾を撃っていく。


 俺も魔剣での攻撃を続ける。


 アッシュは2人の攻撃を同時に受けていた。

 いや受けるどころか俺達に反撃までしてきた。


 俺は土魔法で無くなった疑似の左腕を作った。

 それから魔剣を作りその左腕で持った。

 

 俺は2本の魔剣で攻撃した。


 アッシュは1本で十分なのかさっきと変わらず俺達の攻撃を受ける。


 それどころかどんどん反撃される回数が増えてきている。

 アッシュの動きは加速し続けた。


 アッシュな魔剣に皮膚が切りつけられる。

 このままでは分が悪い。

 仕方が無い。

 あまり使いたくはなかったが。


 「ソフィア!」


 「分かった!」


 ソフィアと合図をして1、2、3…

 

 「転移」


 その瞬間俺とソフィアの位置が変わった。

 

 変わったと同時にソフィアは高密度の魔弾を連続で撃ちつける。


 鼓膜が弾けるような音がなると同時にアッシュに魔弾がぶつかった。


 ほとんど食い止めたようだったが2、3発はかすり、1発はアッシュの腹部を貫いていた。


 「グハッッッ。」


 アッシュの口から大量の血が吹き出した。

 勿論腹部も大量の出血をしていた。


 確実に致命傷だ。

 もう長くは持たないだろう。


 「転移」


 俺達はまた互いの位置を交換した。

 

 俺は空かさず2本の魔剣で攻撃をした。

 アッシュは俺の攻撃を受けることは出来ていたが、反撃することは出来ずにいた。

 俺は攻撃を続けた。

  

 俺はアッシュの右肩、左足、左腕と次々に傷を与えていった。

 

 そして遂に俺の魔剣はアッシュの左肩から心臓を通り体の反対側までを切断した。


 「グハッッッ!!」

 

 アッシュは口から大量の血を吹き出して地上に落ちていった。


 「ふぅ、なんとか勝てたな。ソフィア。」


 「うん!」


 ソフィアの方を見ると後ろにさっき落ちていったはずのアッシュが上半身だけでいた。


 「ソフィア!後ろだ!」


 アッシュが魔剣でソフィアを切りつけようとする。

 ソフィアの防御魔法は間に合わない。

 俺は思考を放棄していた。

 そして俺はとっさに動いていた。

 

 「転移」

 

 俺とソフィアの位置が変わった。


 俺はアッシュの魔剣によって心臓を貫かれた。


 俺は力を振り絞ってアッシュの頭に高密度の魔弾を撃ちつけた。

 

 アッシュの頭部は跡形なく消えた。


 今度こそ完全に勝利した。


 だが俺の体は限界だった。

 もうすぐ死ぬのだろう。


 落下していく俺をソフィアが受け止めてくれた。

 

 「ソ…ソフィア…」

 

 「喋らないで!!」


 ソフィアが回復魔法をかける。

 だが俺の傷口は開いたままだ。


 「ソフィア…俺はもうすぐ死ぬ。」

 

 「マシューは死なない!」


 「ごめんな。ソフィア。」

  

 「そんなこと言わないで!」


 ソフィアが怒っている。

 本当ごめんな。


 あぁ今回の人生は幸せだったな。

 死にたくないなぁ。

  

 ソフィアと離れたくないなぁ。


 あぁ、それとこれは言わなくちゃ。


 「ソフィア。愛してる。」


 「私もマシューを愛してる!だから死ぬなんて言わないで一生私と一緒にいてよ!!!」

 

 「ご…めんな。ソフィア。でも俺はソフィアを愛してる。ずっと…前から愛………してる。」


 「私もずっと前からマシューを愛してる!これからもずっと!」

 

 そう言うとソフィアは顔を近づけてきた。

 そして、俺の唇とソフィアの唇が触れ合った。


 あぁ。俺は幸せものだ。

 

 そして、俺の意識は途絶えた。


 

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