第2話 「エミリアの依頼」
「では、詳しい話を聞きましょうか。」
「分かりました。」
エミリアはまた木で作られたベンチの様なところに座り、俺を見ながら左手で空いているスペースを軽く叩いた。
そこに俺に座れと言っているのだろう。エミリアの導くままに座ることにしよう。
「では、私が今回依頼した内容について詳しく話します。」
「おう、頼む。」
「まず、私が通っている魔法学校、《ハピネス王国ダイバーシティ》魔法学校についてお話します。私が通っているダイバーシティ魔法学校はハピネス王国の中で最もレベルの高い魔法学校です。魔法は勿論のこと、勉学に関してもトップクラスで無ければ入学試験に合格することが出来ず、入学することすら非常に困難です。まぁ例外もありますが。」
エミリアがダイバーシティ魔法学校に通っているということはこの国では魔法も勉学もトップクラスということになるが、依頼内容のどうしても魔法が苦手と言うのはどういうことなのだろう。
もしかしてエミリアがさっき言っていた例外なのか?
「エミリアは依頼内容の中でどうしても魔法が苦手だと言っていたな。」
「はい。」
「ではエミリアはさっき言っていた例外なのか?」
「いいえ。私は普通に入学試験を合格して魔法学校に入学しました。」
入学試験に合格して魔法学校に入ったのならば魔法もトップクラスということになるが、卒業試験というものは国のトップクラスの魔法使いでさえも魔法が苦手と言わざるを得ない程難しいのだろうか?
「何故エミリアは魔法苦手なんだ?卒業試験というものはそれ程までに難関なのか?」
「確かにダイバーシティ魔法学校の卒業試験はとても難関です。ハピネス王国の大魔法使いの方々でも難関だと言う者も少なからずいます。ですが、私は魔法は一通り使えますし、魔力量が少ない訳でもありません。むしろ私の魔力量は魔法学校の中でも5本の指に入るでしょう。」
「ということはエミリアが魔法我苦手なのは魔法の才能や魔力量とは関係無く他にあるということだな。」
「はい。そうなりますね。」
俺はこの依頼を初めて見たときは魔法を使うのが苦手な魔法使いに魔法の指導をする程度だと思っていたが、実際は全く違った。
「私は魔力量が多すぎて魔法を使う際魔力を抑える魔具を使用するのですが、卒業試験では魔具の使用は禁止となっています。なので、私に魔具無しで魔力を抑える方法を教えて下さい。」
マジかよ。魔力量我多すぎて魔力を抑える魔具を使っているだって?
俺は何万回もの間色々な世界で生きてきて魔力量が多すぎて魔具などによって抑えていた奴らは何度も見てきた。
だが、その魔力を魔具や小細工無しに抑えることが 出来ていた奴を俺は見た事が無い。1人を除いてだが。
まずまず魔力は、ある程度なら常人でも抑えることが可能だ。物凄い魔力量でも魔法の才覚に長けている者ならば抑えることが可能だ。
おそらくエミリアの魔法の才覚も超人レベルだろう。その超人レベルの者でも抑えられない魔力量を魔具無しで自力で抑える方法を教えろって?
無理だね。絶対。
エミリアが依頼してきた理由は大体把握出来たが、今回は依頼内容が悪すぎる。
断念したいところだ。
断念したいところなのだが、一度依頼人から引き受けた依頼を破棄することは出来ない。
書物に記してあった通り、解決者が依頼人の依頼を解決出来なかった場合、解決者はペナルティを受けるだけだが、依頼人は死ぬ。
なので今回の依頼内容がほぼ不可能な案件だとしても期限まで精一杯解決に向けて専念しなければならない。
エミリアも今回、俺に依頼することに相当な覚悟をして依頼したのだから、それを蔑ろにするわけにはいかないだろう。
「分かった。君の依頼内容を理解した。したのだが、俺はその方法を今は持っていない。」
「そ…そうですか…」
「だが、ある方法を使えば君の魔力を抑える方法が分かるかもしれない。」
「ほ…本当ですか!」
「あぁ。だが少しばかり時間がかかる。5日後に今日と同じ時間にここに来てくれないか?」
「分かりました。5日後にここで待っています。」
「じゃあ、またな。」
「帰還」
エミリアに別れを告げて俺は元の世界に帰った。
ハピネスに行く時と同じく一瞬目の前が真っ白になり、やがて色を取り戻した。
目の前に机があった。どうやら帰還したらその世界に居た最終地点に転移されるようだ。
俺は自室を出て廊下を歩いてドアを開けてリビングに入った。
優はまだ寝ているようだ。それもぐっすりと。
人が大変な目に遭っていたというのに罰当たりな奴だ。
「優!起きろー!!」
「ん…こ…ここは、何処だ?」
「俺の家だ。お前が帰り道休憩したいと言って公園のベンチに座って話している内に寝落ちしたんだ。それで俺の家に連れて帰った。」
俺は適当に嘘を息をするように言った。優には一切罪悪感などはないからな。
「そ…そうなのか。すまん迷惑かけたな。用意したらすぐ帰るわ。」
どうやら優は学校での出来事についての記憶は一切合切無いようだ。創造者が小細工を仕掛けて記憶を消したのだろう。
まぁ、優のアホのことだから本当に記憶に残っていないのかも知れないがな。あいつみたいなタイプは自分に都合の悪い記憶を本能的に消すからな。
暫くして優が帰った。
俺は書物を開いた。
そしてある国の依頼を探した。
だが、あまりの依頼の多さに探すだけで何年も掛かりそうだ。
書物に検索機能が有れば楽なのにな。
俺がそう思っているとすぐに書物のページの右上の方に検索というものが出来ていた。
創造者の仕業だろう。
創造者の奴、俺の事をずっと見ているのか?
気持ち悪いストーカーみたいだな。
まぁそのおかげで検索機能がすぐに追加されたわけだが。
早速検索機能を使った。
俺は《アビスロック》と検索した。
検索機能は優秀なようですぐに検索結果が出た。
《アビスロック》と書かれた依頼が大量にあった。
「これならソフィアの依頼もあるかもしれない。」
俺は目的のものを探した。
それは意外とあっさりと見つかった。
《この私の永遠を終わらせに来てくれ。
勿論決闘でだ。
まぁ私に勝つことは不可能だろうけど。
ムカついたなら直接私と決闘しに来い!
場所 アビスロック ブルーチェリー 第2の森
名前 ソフィア
期限 無期限
報酬 私の気分次第》
見つけた!
依頼内容もソフィアらしいな。
まさかこんな形でもう一度ソフィアに会えるとは。
俺は大分前、アビスロックに生まれたことある。
その時に俺とソフィアは一緒に旅をした。
ソフィアならエミリアの魔力を抑える方法を知っているはず。
ところで俺が今何をしようかというと、同時に受けられる依頼は1つまでとは書かれていない。
だから追加の依頼を受けることにより他の世界にも行くことが出来る。
エミリアの依頼を解決する為にはソフィアが必要不可欠だ。
「ソフィアと早く会いたいな。」
そうして俺はソフィアの依頼を受ける事を決めた。
「ソフィア」
そう言って俺はアビスロックに転移した。
次回から2話ほど流星の前世についての話になります。
ぜひ読んで下さい。