機転が利いていることを自慢して誉めてもらおうという魂胆のエッセイ
その1 VS干ししいたけの軸
その日、わたしは干し大根を買うつもりだった。
あたらしくできたスーパーマーケットにはお客さんが沢山居て、活気がある。あまり行ったことがない場所だった上に、以前干し大根を置いてあった場所に干し大根がなかった。わたしはしばらく、売り場を徘徊した。
乾物がかごに山盛りになっているのを発見し、干し大根かと思って近寄ると、干ししいたけや干し筍だった。春雨もあったと思う。
そのなかにあいつを見付けた。
干ししいたけの軸である。
これ、安くない……?
干ししいたけの軸のパックを手にしたわたしは驚愕した。
隣り合って置いてある干ししいたけの、三分の一くらいの値段なのだ。
普段買っている、乾物屋さんの訳あり干ししいたけ(割れたりうすかったりで商品価値が損なわれたもの。味は凄くいい)よりも相当お安い。
その時ろくでもない案が頭にうかんだ。これをフードプロセッサで粉々にしたら、ふりかけに加工できるのでは?
もともと、干ししいたけを調理する時、軸は捨てないしとりのぞかない。何故ならしいたけで一番おいしいのは軸の部分だからだ。あそこを捨てるなんて狂気の沙汰である。
その一番おいしい部分だけをまとめて売っているなんて、と喜んで購入したのだが……。
結果としてはうまくいかなかった。
干ししいたけの軸というのはもの凄くかたいのだ。幾ら大型であっても家庭用のフードプロセッサでは歯が立たない。
かたくてどうしようもない干ししいたけの軸が、大量に手許に残った訳である。
が、わたしはそこで起死回生の一手を思い付いた。
「だしとしてつかうだろう」とメーカーは考えているのだ。なら本当にだしとしてつかおう。
まず、お米ともち米をとぐ。
文化鍋にお米とお水をいれ、お塩とお醤油で調味したら、まんなかを少しへこませておく。
干ししいたけの軸をめいっぱい、その上にばらまく。
しばらくお水を吸わせて、炊く。
干ししいたけの軸の味をご飯へつけられたらそれでいい。かたくて食べられなかったら軸自体は捨てても仕方ない。
そう考えていたのだが、物事とは予想外の方向へ転がるものだ。
炊きあがったしいたけの軸ご飯をかきまぜると……なんと、あれだけかたかった干ししいたけの軸が、信じられないくらいにやわらかくなっている。
いつもつかっている干ししいたけの、その軸よりも寧ろやわらかい。しゃもじで簡単に解れてしまう。
勿論、味は最高だった。
干ししいたけの炊き込みご飯だと、原料費を気にして干ししいたけの量をけちってしまうのだが、干ししいたけの軸ご飯ならそんな心配は要らない。ほんの少しの浸水時間をとれるかとれないかの問題で、それだって干ししいたけをつかっていても必要な時間なのだ。
干ししいたけの軸ご飯、おすすめである。
その2 VS中途半端なビーズと糸
タティングレースをしている。
ビーズをいれてあむことがあるのだが、必要以上のビーズを通してはじめる。
あとから「ビーズが足りない」となって解くのが面倒だからだ。
ビーズが46個必要なモチーフを二枚あんだあと、21個のビーズがあまっているのを確認した。
ビーズを追加しても、先程のモチーフをあむだけの長さの糸が残っていない。
さてどうするか、と考え、七で割れることから「ピコにみっつのビーズをいれたはなびらを七枚あむ」ことを考え付いた。
わたしはあんまり計画性がないので、とにかく練習にもなるし不出来なら解けばいいやと考えてあみはじめた。
結局、当初の想定どおりにはいかなかった。
リングをみっつあんだところで、これを七つつなげるのもそもそも七つつくるのも無理だと悟ったのだ。糸が足りない。
そこで、急遽予定を変更した。そもそもたいした予定でもないのだが。
R:2◦2◦(B3)2◦2
R:2J2◦(B3)2◦2
R:2J2◦(B3)2◦2
R:あみはじめにB1 2◦(B1)2◦(B1)2◦(B4、芯糸にB2)2◦(B1)2◦(B1)2
B1 t&c
これで小さなクロスモチーフの完成だ。きっと誰かが思い付いているような編み図だろうけれど、とっさにつくったのだから満足だ。
あとから、リング1と2の間、リング2と3の間にもビーズを通しておいてほうがバランスがよかったかなと思った。今度はそれであもうと思う。