僕はアメリカ人
「非国民!」「裏切り者!」「お前なんか儂の息子じゃ無い!」「帝国海軍に志願した従兄弟を見習え!」
背中に罵声を浴びながら門を抜け僕に敬礼する門の前に立つ兵士に敬礼を返し、丁度門の前のバス停に停車したバスに乗車。
座席に座り、涙目で僕の胸ぐらを掴み揺すりながら僕の胸ポケットに母がねじ込んだ紙を引っ張り出す。
紙……じゃ無い……便箋?
便箋に書かれた文字を読む。
『貴方がどんな道を進もうと私にとっては可愛い息子に変わりは無い、だから死なないで、戦争が終わったとき元気な顔を見せて…………お願いよ…………』
一緒に暮らしている親父や叔父叔母に見つからないように急いで書いたのか、殴り書きで所々が涙で滲んでいた母からの手紙を丁重に折り畳み手帳に挟んでポケットに仕舞う。
それから僕はバスの窓から身を乗り出し、戦闘中負傷し療養のためアメリカ本土の病院に入院していたが傷が癒えて前線に戻る前に貰えた休暇で、敵性外国人である日本人が収容されている収容所に両親や親戚を訪ねて来ていた収容所の門、どんどん小さくなっていく門に向け手を振った。