感動モノは彼女と観にきたらいけない理由~映画
大画面から焦点をぼかし、頭の中はまったく別のことを考えた。
なんとか目に溜め、瞬きを堪える。
長袖を着てくればよかったかな。
周りから啜る音が聞こえる。隣の彼女の状態を知りたい。
飲み物を飲むフリをして鼻を啜るのはおかしいよな?
カバンを落とし、それを拾う仕草に織り交ぜる?
仕方がない、次のアクションシーン中まで我慢しよう。
……
最近の映画はこれでもかというぐらいに次々と感情を揺さぶる。
勘弁してくれ。せめて彼女が目頭を押さえるまで……。
もう、映画も終わる。
クレジットが終われば明るくなってしまう。
初めてが映画はハードル高かったんだろうか? みっともなく見えているのかな?
大好きな映画を大好きな子と観に来たのに――。
終わったらきっと食事中にでも、この場面を振り返るんだろうな。
「感動したねー、私泣いちゃった」
俺はなんていえばいい?
恥ずかしい。帰りたい。
最低だな俺。
そのとき隣の彼女が静かにポケットティッシュを渡してくれた。
END