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転生は公爵家  作者: 梅雨川
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第七話 不安と疲れ

この世界において、移動手段は三つある。


一つは馬車を利用すること。

二つ目に船を利用すること。

そして三つ目に飛空艇を利用すること。


飛空艇とは、空飛ぶ船だ。

飛行船の様な形もあれば、船の様な形もある。千差万別、飛空艇内部にガスをためる場所踏破存在せず、その中にまで生活環境が詰まっている。空飛ぶ家の様な物。


ここがゲームの世界の為か、見た目が現代にないほどの物であることは確かだ。

何のために作ったかは分からないが、生前の知識に従えば、宇宙船もこの世界のどこかに眠っている。この世界は現代を超える技術を内包した世界、今時もとは人類がいた、みたいな設定ははやらないと思っていたのは俺だけなのだろうか?


屋敷の前には、数台の馬車が停車し、使用人が荷物をまとめ、詰め込んでいく。

夕方には旅支度が終わりいつでもいけるとのこと。


ライアンはいつもの服装そのものだった。


クラディウス領では牛に羊、それにタイガーウルフなる、虎に銀の毛を生やしたような動物を放牧し、そしてシルクや綿、麻などを生産している。

人口を保つために無理やり植物の生産を早めたシッチャカメッチャカなこの世界では、広大な領地を持つクラディウス家はそれをうまく利用していた。


いつもライアンは、実家のものを着ている。


それも似たような柄の似たような色の物を。


既に両親に手紙を書き置き、屋敷をあとにする。


==========

ライアンの父、エドワードはライアンの部屋で置手紙を発見していた。ジョウは部屋の前でエドワードが来るのを待っている。

エドワードは置手紙を見つめ、ため息をつく。


「せめて一言かけてから行ってほしかった」


エドワードは、ライアンの部屋を出て、廊下を歩く。ジョウも後ろに付く。

手紙には、ライアンの字でセリーナに行くこと、馬車を使うことが記してある。


「何故、この時期に?」


エドワードの眉間には皺が寄り、ライアンの行動を理解できないでいた。


皇国貴族として、イシリス教は無視できない影響力を持つ。

世界で最も入信者が多く、皇国の民のほとんどがイシリス教に入信しているからだ。

しかし、その中でも領域外の領地、クラディウス領は独自の思想の上に発展しているため、イシリス教への入信者が極めて少なく、信仰も薄い。


故に、クラディウス家は毎年の巡礼期間になっても巡礼しないことが多く、イシリス教の総本山、セリーヌに来ること自体が一大事になるほどだ。


クラディウスのこれまでの対応に一転し、今年は巡礼次期前にクラディウス家の長男が聖地に訪れた。

この事実をとらえる側として、クラディウス家が遂にイシリス教に入信したと思い違いをすることが考えられる。エドワードとて無用な荒波は立てたくなかった。


廊下を突き当り、執務室に入れば、最奥の席に座り、便箋を用意し紙に筆を走らせる。

書き終わった紙を折り畳み便箋の中へ入れ、状に手渡す。


「これを早馬でレコンティヌス大司教へ」


「至急届けます」


ジョウは早々に執務室を立ち去る。


エドワードは窓に目をやり、月光で照らされる東屋を見る。


「一時の休養か。知らないうちに精神的な疲労を与えていたのかもな」


立ち上がり、執務室を出る。

その足は食堂に向き、エドワードはライアンの事をマリーとサクラにどう伝えようか考えあぐねていた。


==========

ライアンは車窓からの景色を見つめている。

領地を離れ、城塞を抜ければその先にまさに中世の様な畑が茂っていた。


既に城塞を抜け、ここはクラディウス領外になっている。


「ライアン様、このような時期に行くべきではなかったのでは?」


付き添ってくれているエリーが進言する。

彼女は既に15歳を超え、成人女性として執事をしている。


「いつやるの?今でしょ!」


空気が死んだ。

その場には空白の時間が停滞していた。


「・・・わかりました。先を急ぎましょう」


エリーは素知らぬ顔で御者に指示を出す。


「ああ。頼んだよ」


エリーは馬車を出て後ろの馬車に移動する。

今回は、ライアンの馬車とエリー、兵士の乗る馬車、そして五人の兵士との旅路だ。


ライアンは外に目を向ける。

既に日は沈んでいるため、外は暗闇に包まれていた。


そろそろ馬車も止まるころだろうと思い、眠りに入る。

座ったまま不動しなくなった。


やがて、一人の寝息が車内に聞こえてきた。


こうしてライアンの今日は終わった。


==========

目を覚ますと、馬車が動いていた。


ライアンは御者に声を掛ける。


「すみません、昨日休息は挟みましたか?」


「ええ、昨夜野営をしまして先ほど出発しました」


既に野営をした後だったようだ。

其れなのにこの姿勢のままと言うことは、気を使ってくれたのだろうと思う。


「そうですか、ありがとうございます」


「はい」


ライアンは再び先ほどの姿勢に戻る。


窓の外には昨日と違い、石畳で整備された道が続いていた。

既にどこかの都市に近づいているのか、民家もちらほらと見え始めた。


既に他領に入っているであろうこの道のりの先にセリーナがある。

セリーナ、宗教国の強い街に住む将来の魔王、魔王が人間に恨みを持つならばここはうってつけの場所だ。


異端を嫌い、宗教を教養する町。


そのおかげで価値観が会わない物は出て行く。


おそらく、魔王もそのタグに入っていたとみるべきだろう。

そして、将来的に両親がいないことを鑑みるに、両親が原因であるとも考えられる。

いかにも製作会社が考えそうな設定だ。


それ故に、いつ頃その事柄が起こるのかが分からないために先を急ぎたかった。


「・・・眠い」


ライアンは、そのまま寝入ってしまうのだった。


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