第四話 安心と焦燥
「エリシア王女、気分はいかがですか?」
今日も、彼女の部屋で三食を取る。
今は夕方で、町の先に見える港には、多くの船が着いていた。
「先日から悪魔になってしまった被害者を救出していまして、幸運なことに、今のところ数名の方を救うことができたのです。エリシア王女も一度顔を合わせてみてはどうかと」
黙々と食べるエリシア王女を前に、ライアンは只微笑む。
「最近はどうですか?何か好きな事は見つかりましたか?」
答えは帰らない。
しかし、食事を取ってくれるところは、少し進展したと考えるライアン。
きっと彼女は、まだ消化できていない。
悩みを使命に変えることこそが今の彼女に必要だと考えるライアンは、何度でもいう。
「大丈夫です。焦らなくても。しかし、できれば救出した方々にも会っていただきたいです。誰よりも苦しんだ貴方にしか分からぬ心が、彼らにあるからです。」
彼女を立ち直らせることこそ、ライアンの最近の目標である。
似たような経験をして、それでも励ましを送る彼女の姿は多くの人を励まし、あらゆる可能性を切り開ける。
そう確信していたからだ。
「庭の散歩は如何でしたか?なかなか美しいでしょう!」
ライアンの一人ごとは続く。
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お昼時、執務室には、スーツの男性1名と、白スーツの女性が並んで立っていた。
「進捗はどうだ」
ライアンは彼らに椅子を進めて、話をする。
ライアンの顔には真剣な表情が宿っていた。
「失礼します」
二人は席に付き、報告をする。
「いずれも計画は成功しています。また、天使の捕獲にも成功し、今は大部屋にて拘束しています」
天使とは、この世界が毎度討伐する、人類に害をなす者達だ。
総じて銀色の羽を持ち、人類をもてあそぶ。
しかし、知性と感情がある以上、彼女らにも可能性があると見たライアンは、順次彼女らの捕獲をしている。
「必ず生かして捕まえるんだ。カウンセラーは足りているのか?」
「現状、秘密警察の人員を使う程ではありませんが、少々人手が足りません」
「ブライアン長官、秘密警察を軽視していませんか?」
秘密警察長官の彼女は、ブライアン長官の言葉に反応する。
「毎度毎度、情報の共有を怠っている君達では信用に置けないと言っている」
ブライアン長官は、ライアンに直接訴える。
ブライアン長官は長年クラディウス領を守ってきた領警察の働きをよく知っている。
その上で、先先代当主が建てた秘密警察の存在をよく思っていないと同時に、その役割を疑問視している。
「ブライアン長官、ありがとう。確かに、情報の共有は迅速な対応をもたらす。ミーシャ長官、相互、必ず行動する前に報告と、情報共有をお願いしたい」
ライアンが求めるのは即応性と俊敏性がある優秀な組織だ。
いかに組織が大きくても、いざ動けなければなんの意味もない。
「言うまでもなく、クラディウス領は領民あっての土地だ。君たちの服や書類一つ一つが、信用と信頼の証である真心と受け取ってもらいたい」
「「はっ!」」
二人は揃って敬礼する。
「それで、秘密裏に動いてくれる半民間的組織である秘密警察はどうかな?カウンセラー、つまり彼女らととことん対話を重ねて、理解を得てもらいたい」
秘密警察長官のミーシャは、少々困ったかの様に眉根を下げる。
「天使に対する対話の試みは初なので、なんとも。そもそも、対話が可能かどうかがわかりません」
「君達が諦めては進まない。私も話してみよう」
ライアンは、サリナと名乗る天使と部屋越しに対話をする。
ライアンの後ろには数十人の警察と、屋敷に元からいる、セバス、そしてグラシア、バニルが後ろについていた。
「私はライアンです。この領の管理をさせていただいています。貴女のお名前をお聞きしてもいいですか?」
「・・・サリナ」
天使は、間をおいて語り出す。
「サリナさん、貴女は何故人間を襲うのですか?」
「人間は脆い、その上弱い、そんな下等生物など目障りなだけだ」
「なるほど、貴女はそんな人類に捉えられています。何故だと思いますか?」
「単純なことだ。私が油断し、人間が想像より強かっただけのこと」
サリナという天使からその価値観や情報を得る。
「強弱で世界を見るのですね。あなた方の強弱の概念はどこですか?」
「概念?」
「そうです。人間には、精神的な強さと力持ちの強さがあります」
「ああ、そんなの魔力的、そして力的強さだ。精神など後からついてくる」
イライラしているのが感じられる声音は、会話の合間に舌打ちをし、壁を殴る音でわかる。
「では、貴女は精神的に人間に負けていることになります」
すると、彼部屋からの騒音が止まり、気配も止まる。
「何?人間が我々天使より優れているだと?」
「違いますか?今話している最中にも私の身を案じ、守っている彼らの方がよほど精神は強い。かたや、大きく豪華絢爛な部屋で待機しているのにもかかわらず、貴女は感情を制御できずいいる。精神的に未熟に感じます」
サリナは鼻で笑う、
「お前なんぞ、拳一つで殺せる。」
城塞:大森林に隣接した城壁
大森林に隣接しているクラディウス家が建造している城壁である。その大きさや頑丈さは、魔王の復活に備えた物であるため、対魔法にもなっている。