13章 3節 251話 番外:FG1001 後編
●ガイアントレイブ王国のFG戦術
ガイアントレイブで人気を博したFGの格闘大会は
FGが元々作業用のロボットと言う事もあり、
民間主導で行われた。
また、パイロットも市民階級だったため、庶民の娯楽として
成立していく。
ただし、型落ちのFGを使用するにしてもメンテナンスなど
資金がかかるため、酔狂な貴族がスポンサーになる事もあった。
その代表がアサーテ侯爵であり、彼はFGチームを作ると
真和組と名付け、大会の常連となって名を上げたのである。
真和組に代表されるように、FGの運用は
民間主導であり、軍はノータッチだった。
従って、FGパイロットチームを傭兵の形で軍に組み込んだのが
ガイアントレイブ王国のFGの成り立ちである。
運用面でも、少数精鋭が活きる運用が採択され、
敵の後方撹乱や補給部隊の強襲、破壊活動、暗殺活動など
裏方の任務を想定していた。
非公式ではあるが、王弟タケイル派の貴族が複数名暗殺されている件や、
ウルス王太子の卒演事件でのFG襲撃などの関与に真和組が疑われている。
開戦前に国家主導でのFGの量産体制は整ったが、
先行してFGの兵器化を進めたにしては、遅すぎた感がある。
また民間主導であったため、FGは基本的に各パイロットによる
カスタマイズされたユニーク機体であった。
それは修理部品などの欠乏を招き、メンテナンスを難しくした。
そのため、ガイアントレイブ王国は春風戦争全体を通して
FGで数的優位を取る事が出来なかったのである。
しかし、格闘大会などで磨かれたパイロットの腕と
操縦のノウハウなどは質が高く、
真和組を中心とした教育機関の充実は他国に勝った。
数での不利を、パイロットの技量で補ったのである。
また、平民階級のパイロットが多く、
戦場で活躍すれば貴族に叙任される可能性があることも、
パイロットたちの士気の向上に繋がった。
一般的に敵機を5機撃墜するとエースと呼ばれる存在になるが、
エースクラスのパイロットは3国の内で一番多く、
1機辺りの平均的な撃墜数もずば抜けている。
それは、他国のFGパイロットが5機撃墜で
内地勤務(教官など)に転属できたのに対し、
数の不足から終戦まで前線で戦わざるを得なかった
お家事情もあるが、それを踏まえても1対1での強さは特筆すべきであり、
FGと言えば、ガイアントレイブのお家芸というイメージが定着する事になるのである。
●スノートール王国のFG運用
ガイアントレイブ王国とは違い、当初から国家及び軍の
統制化で整備されていったのがスノートール王国FG部隊である。
ウルス王太子が被害にあった卒演事件でのFGの襲撃より、
当のウルスを筆頭にした若手士官たちを中心に
FGの兵器運用についての研究は進められた。
正式量産型であるFGルックは、その後の戦闘用FGの模範となる
優秀な機体であったが、開戦前のカルス王は保守的な人物であり、
FGが本格整備されるようになるのは、開戦後である。
また、FG推進派の若手士官の中にも
積極的な推進派と、消極的な推進派がいたのは有名な話である。
消極的推進派に属するゲイリは、FGの兵器運用を
卒演事件の前から考察していたが、
艦隊戦への投入は躊躇していた。
それは、戦場が血生臭いものになるという予測の元であったが
ガイアントレイブ王国のFGの活躍に触発される形で
スノートールもFGを戦場に投入していくことになる。
国軍だけではなく、メイザー公爵など
先見の明があった一部の貴族も私兵にFGを組み込んでおり、
全体的に高水準であったと言えた。
ただし、スノートール王国のFGは
治安維持や海賊討伐用に開発が進められた機体である。
FGルックが性能的に万能で、汎用性が高く
より人間の動きに近いのは
海賊討伐を考慮したからだと言われている。
海賊の拠点攻略なども考慮し、広い宇宙空間での戦闘だけではなく
狭い通路上での運動性能なども計算されていた。
それは部隊運用にも現われており、
FG戦術の父と呼ばれるダイナ大佐が考案した
三位一体の3機編成での運用は、海賊の拠点討伐から編み出されている。
2機が先行し、右左右左とお互いが交互にフォローしあい、
1機が後方支援、策敵、指示出しを行うダイナ式と呼ばれる戦術は
FG戦闘にマッチしており、同機体で、ほぼ同数での
戦闘になったウルス軍vsメイザー国軍の戦闘では、
ダイナ式の運用が定着していたウルス軍が優勢を誇った。
問題点としては、初期のFGパイロットは一部を除き
雑兵で構成されており、エリート部隊と熟練度が低い部隊の差が
激しかったことが挙げられる。
●神聖ワルクワ王国のFG運用
スノートール王国のFG推進派ガル大尉と
ルックの前身である試作機を入手したワルクワ王国は、
ガル大尉の主導の下、FG計画を推進しており
量産体制に入ったのは、開戦後であった。
後発ではあったが、同盟国であったスノートールからの技術供給も受け
国家の威信をかけてFG開発が急ピッチで進められている。
従って、機体の性能的にはルックに模せたものの、
パイロットの技量は、他国に大幅に遅れをとった。
その不利を補うため、パイロットの個々の技量に頼らない
集団戦法が確立していく。
そのため、正式FGであるキトはルックよりも汎用性に富み、
対海賊戦では不要であった格闘性能なども高められているが、
全体的にまとまった機体であり、特化すべきところはない。
機体の性能よりも、様々な武装を装備し、
用途によって武装を付け替えるという戦術を取っている。
その為、格闘用にシールドを装備した部隊と
遠距離狙撃用の部隊とで機体性能に差はなく、
部隊が均一に連動して動く事に寄与している。
しかし、これは敵よりも数が多い場合に通用する戦術であり、
琥珀銀河1の生産力を誇るワルクワでなければ
採用できない戦術であった。
FG開発においては後発であるワルクワ王国が
FGの量産を強化することで、ガイアントレイブ、スノートール両国も
触発されるようにFGの数を増やしていく事になるのである。
上記のように集団戦法を重視した結果、
個の熟練度には劣るが、パイロットの養成課程のカリキュラムなどは
しっかりと整備され、平均的にパイロットの練度は高い。
しかし、1機で何かを打開する力などには欠け、
他国に比べエースパイロットと呼ばれるパイロットの数も少なく、
一度部隊が崩れると、一気に崩壊する脆さももっていた。
不定期更新です
( ゜д゜)ノ 週2~3予定
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史実を体にしているので、そこはご了承をw
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