2章 1節 21話
星歴996年 6月25日
軍に加入し、3年目を迎えるウルスは
22歳になっていた。
第8艦隊の司令部に配属された王太子は
3度の海賊討伐の任にあたったが、
司令部付きであったため、前線に出る事はなく、
初陣と呼べるような戦場は経験していなかった。
ただ、第8艦隊が行う軍事行動に付き添っていたという感じである。
空戦隊に配属されたガルや、陸戦隊に配属されたティープは、
既に実戦の場に投入され実戦を経験していた事に比べると、
多少の焦りを感じている。
4度目の宇宙討伐の任に関しても、これまでと同様に
作戦会議などには参加していたが、
周囲の作戦案に賛成するに留まり、あまり存在価値を発揮することが
出来ていなでいた。
それは同じく司令部に配属されたゲイリも同様である。
「まぁ、俺たちはいわば、エリートコースに乗っているわけだから、
このまま失敗をしなければ、何もしなくても出世コースに乗って、
階級はあがっていくわけだが。」
艦橋の隅でゲイリがウルスに話しかける。
この幼馴染はウルスの焦りを微妙に感じ取っていた。
ゲイリの言葉にやや不満そうなウルスである。
「ああ、わかっているよ。」
ウルスの焦りは、彼の身分によることろが大きい。
彼は王太子である。
いずれ、王宮に戻ることになる。
それまでに何かしらの軍隊での実績をあげておかなければ、
軍人になった意味がない。
彼は軍への発言力・影響力を得るために軍人になったのである。
このまま何もなく王宮に戻っては、軍人になった意味がなかった。
不満そうなウルスをみてゲイリは話題を変える。
「しかし、これからは少し忙しくなるかもしれないぞ?
試作機が12機納入されたからな。
見に行こうぜ。」
ゲイリはウルスの背中を叩いた。
「試作型のFGか・・・・・・。」
ウルスが応える。
FG、人型ロボット・ファントムグリムの軍事運用については、
士官学校高等部でゲイリが卒論を書いたのを始まりに、
軍人と大学生の2足のワラジを履くウルスとゲイリにとって、
大学での研究課題の一つとなっていた。
更に言えば、卒業演習での対FG戦闘という実戦を経験している彼らは、
軍のFG計画においても中心人物に位置し、
ウルスが王太子の身分であることも後押しして、
かなり本格的に軍と大学で研究が進められていたのである。
ウルスら128期生が第8艦隊に集められたのも、
このFG研究の実験部隊として、第8艦隊に任務があてがわれたためであるという
認識も現在は広まっていた。
そして遂に試作機12機が、第8艦隊に配備されたのである。
格納庫についた2人は、周りを見渡した。
本来であれば空母等の格納スペースが広い艦艇に配備されるのが常であるが、
12機と言う少ない機数と、試作機のテストという事で
第8艦隊旗艦である「バイオス」に運ばれていた。
周囲の人間達が慌しく動いている。
「あれか!?」
2人は格納庫の中心で威圧感をかもし出している大型のロボットを見つける。
全長18m。
作業用FGの中では最大の大きさになる巨大な人型ロボットが
12機、立てかけられる状態で横に並べられていた。
今回のFGの納入のために、格納庫には改造がなされ、
FGのメンテナンスのための設備が揃っている。
旗艦バイオスは小規模ながらFGのメンテナンスができる唯一の戦艦となったのである。
「でかいな。」
ウルスの第一印象である。
彼は試作機のテストなどに携わっており、試作機を見るのは初めてではなかったが、
日常で暮らしている旗艦バイオスの中で見るFGは、
その巨大さを実感させた。
見慣れた光景に入り込む巨大な異物は、存在感を感じ得ざるをえない。
「運動性能と装甲を考えると、この大きさになる。
戦闘機の全長だって、20m近いんだ。
小さくしたほうだよ。」
ゲイリが言った。
戦闘機は横に20mなのに対し、FGは縦に18m。
実際のところ、そこまで大きさに差はなかった。
むしろ艦船への収容の面では、縦に収納できるFGのほうが運用しやすい。
2人がFGを見上げていると、彼らに近付く人影が二つあった。
「ウルス大尉、ゲイリ中尉。
珍しいなこんなところに。
ああ、FGか。気になるよな。」
笑顔と共に近付いてきたのはティープである。
隣にはガルがいた。
128期生の4人が揃うのは、久しぶりだった。
「やぁ、ティープ中尉、ガル大尉。
FGの部隊に志願したんだって。
テストパイロットを務めていたティープは当然として、
ガル大尉、君が志願するのは意外だったよ。」
ウルスは2人に挨拶を返す。
ガルは横目でティープを見た。
「空戦隊から8名、陸戦隊から10名。
募集されていたからな。
君たちが中心になっている計画だ。
志願するさ。」
ガルはぶっきらぼうに言った。
愛想がないのは今も変わらない。
「他の128期卒業生も何人か部隊に志願があるらしい。
俺らのための部隊だな。まさしく。」
ティープはFGを見上げる。
この兵器が学友の命を奪ったことは、128期生全員が忘れることは出来ない。
「因縁・・・・・・か。」
ウルスは呟いた。
軍の中には、FGの軍事運用に否定的な意見も多いと聞く。
FGの脅威を身をもって知っている彼ら128期生が
FGの運用の中心的存在になる事は、歴史の必然だと言えた。
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