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4.リバースクルセイダー

 

 結局のところ、この騒動はYouTuberをやっていて顔が広くて人気のあるがんもどきが、ネセサリの活動の背景を説明して、嫌がるジングウジを動画に引きずりだして一般プレイヤーが問題視していたような「誤キル」が末端のメンバーで行われていたこと、その末端のメンバーが他ならないジングウジによって制裁されていてギルドから排除されていることを話させた。それと「活動を縮小する」ことを約束させて、がんもどきが最後に「みなさん、どうか一度落ち着いて考えてみてください」と締めたことで、多くの一般プレイヤーは矛を収めた。

 結局のところこんな騒動に躍らされるような連中には「どうしてもネセサリを許せない」と主張するような骨のあるやつはほとんどいなかったのだ。

 で、俺たちのパーティの中にはある意味でその「どうしてもネセサリ、というかジングウジが許せない」と主張するやつがいてだね。

「はい、ちゃんと謝りなさい」

 神殿の前、アザミがジングウジの首根っこを引っ掴んで、ログインしてきたゴルゴーンの前に引きずりだす。ジングウジは“イチミヤくん、助けて”という顔で俺を見たが俺はさらりとその視線を受け流した。ハイドが顔を伏せてくすくすと笑っている。アザミの言いなりになっているジングウジがよほどツボに入ってしまったらしい。

「……」

 ゴルゴーンが珍妙な顔をしている。

 事情は一通り説明したのだがなにが起こってるのかいまひとつわかっていないようだ。

「あー、えー、そのだねー、俺がいまからやることは君のこれまでの活動を肯定するものじゃないし、俺はぶっちゃけ自分が悪かったとなんか微塵も思ってないんだけど、後ろのおねーさんがとてもこわいから、あいたっ」

 アザミがジングウジの尻を蹴った。

「……アイテム壊したのは、悪かったよ」

 しぶしぶとジングウジが謝った。

「つーわけだ。許してやってくれ」

「謝ってくれなんか、別に頼んでないんだけど」

 ゴルゴーンの顔がくしゃりと歪む。

「だいたい僕はもっとひどいことしてきたんだ。特殊アイテムとってきゃあきゃあ騒いでるバカパーティーの頭撃ち抜いてアイテム破壊したことだって一度や二度じゃない。それなのに、いまさらこんなことで謝られたら、どうしていいかわからないじゃないか」

 おせっかいなんだよ、とぼやく。

「反省すれば、いいんじゃねーの」

 俺は言った。

「そこのダメ大人が形だけでも反省して謝ってるんだ。見習えよ」

 シングウジはぼりぼりと頭を掻いた。

 アザミが頭を殴って無理矢理下げさせた。

「なんでおまえらはこんなことするんだよ」

「え、友達だから?」

 アザミが言う。

「友達、嫌な目にあってたら嫌じゃない?」

 アザミはほんっとにわかりやすいやつだなぁ。

 ところで「ハイドに依頼して俺に嫌な目を見せさせたの誰だっけ?」、「よーちゃんはいーの」、「なんで?」、「友達じゃないもーん」うわ。ひっでえ。

「……もう一個上だもん」

「ところでものは相談なんだけどさ、」

 ジングウジが割り込んできたから俺はアザミの小声で言ったことを聞き逃す。

「新しいギルド作るんだけど、きみら入らない?」

「ネセサリは?」とハイド。

「今回の騒動で主要メンバーが離れたから一旦は活動停止だよ。ガワだけ残しとくことになると思う。よっぽどのやつが出たら動かすけど、ほら、いまはもうそこまで気合入ったのは滅多にいないからさ。他のプレイヤーがネセサリの存在に疑問持つくらいには、DDの治安はよくなったから、むしろ退屈になってきてね。それなら別のことやった方がおもしろいかなって。どうだい? 一緒にやらないかい?」

「遠慮します」俺。

「おまえのギルドなんてまっぴら」アザミ。

「入ると思ってんの」ゴルゴーン

「私は『悪党同盟』があるから」ハイド。

 全滅だった。

「がーん」

 ジングウジは擬音をわざわざ口に出して肩を落とす。

「だいたいなにするつもりなんです?」

「ボス討伐の特化かな。期間限定イベント全部制覇するぞ! みたいなやつ」

 アザミのネコミミがぴくりと動いた。

 ……興味あるんだな。

「ギルド名とか決めてるんです?」

「うん、『リバースクルセイダー』」

「パクんなよ」

「いいじゃん。俺、センスが厨二だからさー」

 ああ、そう。

 わざわざ“魔法職+戦士職が弱い”って言われてるDDで暗黒騎士なんかやってるぐらいだもんな。




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