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4.リバースクルセイダー


 敵は倒したとはいえ、俺のMPもゼロになった。俺は片手剣の扱いが決しては上手いとは言えない。それでもまあ敵の裏をとって引っ掻き回すくらいの程度の手助けはできるだろうか。

 俺はハイドとジングウジを援護するために走る。が、視界に飛び込んできたのは敵の両方をいままさに縊り殺そうとしているジングウジの姿だった。ハイドが『喉裂き』で祈祷師を崩してからはそれほど手間がかからなかったようだ。「……」こいつまじでバケモノだな。多分両方とも名前の通ったPKで特殊武器装備だったのに。MPがほぼほぼ枯渇している条件で、他人の武器を借りてるような状態であっさり勝つのかよ。

「さて、待ってもらって悪かったね」

 ジングウジの視線が、アザミを見た。

「やろうか」

 PK二人をキルしたジングウジがコピーしたスキルドレインを握り直す。

「ゴーちゃんに謝って」

 アザミが言った。

「へ?」

「特殊素材踏み割ったの。ゴーちゃんに謝って!」

「いや、こっちも依頼とか面子とかそういうのあって無罪放免ってわけにはいかなくて」

「ゴーちゃんはもうやらないって言って、あなたはそれで納得したのに嫌がらせでやったんでしょ。謝って!」

 俺はちょっと笑う。

「そーだな。あいつもう反省してたもんな。そりゃジングウジがわるいわ」

 片手剣の先をジングウジに向ける。

 ハイドがクスクス笑って、スキルドレインをジングウジに向けて構えた。

「え? ちょっと待って。いま俺、『トワイライト』装備してるから攻撃力ゼロでイチミヤくんとハイドちゃんがパーティから外れたら攻撃手段ないんだけど」

「そりゃいいこと聞いたな」

 俺たちはじわりじわりとジングウジに対する包囲を狭めていく。

 ジングウジはやれやれという風に首を振った。

「……わかったよ。こーさんだ。謝るから、今度連れてきてくれ」

 結局ジングウジが折れた。

「なら、よし」

 アザミが弓から矢を外す。その後ろからわらわらと新手のPK共が門を出てくる。アザミはそれに向けて「うっぜえ」と呟き『サウザンドストーム』を放った。『百発千中』の効果によって一万本の矢の雨がPK共の頭上に降り注ぐ。

「お、おまえ、なんで」

 PKの一人が死に体のダメージを負いながらアザミを見る。

「え? 普段から人に迷惑かけてるあんたらが一般人(パンピー)味方につけたくらいでデカい顔できるわけないでしょ?」

 アザミのスキルはヒット数と攻撃範囲に優れている。それでいてブラッディレインの定数ダメージで火力も十分。こいつのスキル構成は一対多数戦に非常に優れている。有象無象じゃ束になっても敵わない。

 そしてうじゃうじゃ出てきたPKのさらに後ろから、金髪で光輝く鎧に身を包んだ「これぞ聖騎士」っていうような装備の男が嫌そうに顔を歪めながら歩いてきて、PKの一人に『エクリカリバー』を放った。……闘技場の、クイーンの前のチャンピオンであるがんもどきだ。「いまさら招集かけられても困るよ、ギルマス」とジングウジに向けて言う。

「いやあ、僕は嬉しかったけどね。同窓会みたいでさ」

 がんもどきの隣を歩いているのは左手に透明な盾を装備した髭面の大男、バンドウさん。

「黙れネカマ」

「ネ……!? ちょ、ひどくないかい?」

 他にも何人かの、ボス討伐や大手ギルドの主要メンバーで知られている、正規の遊び方をしている著名なプレイヤーがぞろぞろと出てくる。それぞれが適当にPK集団に襲い掛かる。

 バンドウさんが俺を見て「あれ。イチミヤくんもネセサリ参加してたんだっけ」と尋ねてきた。

「いや、俺は違いますけど、この人たちって」

「旧ネセサリの、黎明期のメンバーだよ。PKと戦争やってたころのね」

「……大っぴらにジングウジの味方して大丈夫なんですか?」

「うん、ぶっちゃけ僕らもいまのネセサリのやり方には疑問は持ってる。多くの人が彼らのやり方に反感を抱くのはわかるよ。でも。それでもね」

 襲い掛かってきたPKに『ダイヤモンドバックラー』を叩きつけて、腹に『正拳突き』を叩きこむ。

「せっかくふつうに遊べるようになったDDを、また昔と同じようなPKの楽園にするわけにはいかないから、さ」

 ……ジングウジがやたらと余裕綽々だったのは、こういう切り札があったからか。

 だからあいつは、より強い力で相手を叩きのめすために自分を囮にして「燃料を投下」し続ける必要があったのだろう。

「ジングウジは別に正しくないよ。あいつはひどく利己的だし、ネセサリをやってるのも自分が楽しく遊ぶためだ。でもこの狭い世界の平和はああした抑止力がないと崩れてしまうような脆いものなんだよ」



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