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3.無尽の荒野


 新しいイベント、『無尽の荒野』はセキハラ平原から続く新マップを攻略していく形のものだった。砂漠マップに似た砂と岩、それから乏しい植物で構成されたマップが広がっている。アフリカのサバンナをモチーフにしたと思われる肉食獣系のモンスターなどがみられる。砂地のマップにはいくつかの足跡が残っていて、既に他のパーティが先行しているらしいのがわかる。

「モンスター避ける? 倒す?」とアザミ。

 ハチノスの『影走り』には足音や匂いなどでこちらを察知するモンスターを避ける効果がある。注意して進んでいけば避けれなくはない。

「試しに戦ってみてそれから考えよーぜ」と俺。

「そだね、強さ分かった方が方針立てやすいだろうし」

 というわけで、近いところをうろついていたキマイラ系統――軽トラぐらいのサイズの体にライオンとトラの頭がついてしっぽがヘビに、背には大鷲の翼がついたモンスター――に挑んでみる。もう少しサイズの小さいハイエナ系統のモンスターもいたのだが、基本的にモンスターはサイズが大きい方が強力だ。マップのレベルを推し量るにはデカいモンスターの方が都合がいいと判断した。

アザミの『スプリットショット』が先陣を切って飛んでいく。ブラッディレインによる定数ダメージが5000以上のダメージを与える。……改めて遠距離スキルのダメージじゃねーな。(以前にも少し触れたが、聖騎士の強攻撃である『エクスカリバー』で4000いけばいいとこだ)

「ぐるおおお」

 キマイラが咆哮をあげてアザミをターゲットにして疾走してくる。

 ハチノスが『猿飛の術』で跳躍。キマイラの広い背中に飛び乗り、羽根を攻撃する。『暗殺』が入るが、不意打ちにはならなかった。尻尾の蛇がハチノスをターゲットにしていたからだ。どうやら“マルチターゲット”を搭載しているタイプのモンスターらしい。尻尾が襲い掛かってきてハチノスは対応に追われる。

 俺は『アイアンシザース』を召喚する。キマイラに劣らない巨体を持つ鋼鉄製のクワガタが召喚されて、鋏の顎でライオンとトラ、二つの頭部を挟み込もうとする。と、ライオンの頭が炎を吐いた。『シザース』に火炎が直撃してHPが削れる。削れながらも、顎で頭部を挟み込む。咥えこんだ相手に「拘束」を発生させるのが『シザース』の特性だが、キマイラは「拘束」の状態異常にかからない。耐性があるのだ。

 クスノキさんが『フレイムストライク』を使う。派手な炎のエフェクトがキマイラを包むが、ダメージは軽微だった。火炎耐性もついている。

 キマイラが頭を振って『シザース』を振り払う。『シザース』の巨体が跳ね飛ばされる。キマイラが最初にターゲットにしていたアザミに向かって突っ込んでいく。アザミが逃げるが、敵の方が全然速い。ぱんっ。キマイラの顔が弾けた。ゴルゴーンの『瞳を狙う』だ。四つある目玉の一つを潰されただけだが、一番左端の目を失ってアザミはその死角に逃れる。キマイラが頭を振ってアザミを探したところに、アザミの『スプリットショット』とクスノキさんの『アクアブレイド』が炸裂する。ヒットストップで怯んだところへ、俺が接近、剣を振り上げる。尻尾を切り裂いたハチノスが背中を伝って頭部に駆ける。俺が振り下ろした『ヘイムブレイカー』とハチノスの『首刈り』が二つの頭部をそれぞれ切り裂いた。

 キマイラのHPがゼロになって、ドロップアイテムと経験値に変わる。

「結構タフだったな」

「わりと厄介だな。ちょい慣れるのにもう少し狩ってみるか」

「りょ」

「じゃ、次向こうのハイエナで」

「おーし、どんどん行こう!」

 アザミが思い出したみたいに振り返って「ナイスアシスト! 助かった!」と言ってゴルゴーンに親指を立てた。「……」ゴルゴーンはぷいっとアザミから顔を背ける。俺はぐしゃっと乱暴にゴルゴーンの頭を撫でた。撃たれた。ハチノスがそれを見てげらげら笑う。

 俺たちは少しモンスターを狩って、クスノキさんに回復してもらってから先に進むことを決める。

 火炎耐性に注意してみればポップするモンスターはさほど強くはない。ハチノスは敵のハイエナが群れで行動していてターゲットがばらけていたり、キマイラのマルチターゲットのせいで「不意打ち」が通らないことにやりづらそうにしていたぐらいだ。ちなみにこの手の動物系のモンスターには「霧隠れ」が効かない。臭いによってこちらの位置がわかるからだ。

 “無尽の荒野”なんて題の割りにマップはそれほど広くなかった。

 わりとすぐに最奥の近くにあるテレポクリスタルまで辿り着く。大してアイテムも持っていなかったのにあっさり辿り着いてしまって、ここまではわりと拍子抜けした印象がある。でもこういうのって大抵、道中がゆるい分ボスがつえーんだよなぁ。

他のパーティがクリスタルの前でなにか話していた。

「こんちはー」

 人見知りしないアザミがそこへ飛び込んでいく。「あ、ボスのネタバレはしないでください! 最初の一回は自分たちで死んできます!」と言って、道中までの情報を交換する。

 俺たちはテレポクリスタルに触れる。クリスタルに振れるとHP・MP・SPを回復することができる。それから「死に戻り」の場所にこのクリスタルを設定する。

 ダンジョン中などではそういう設定ができる。……できなかったら、ボス戦で何度も死んで道中を何度もやり直すハメになって心が折れる。それぞれ倉庫と接続してアイテムの補充、装備の変更などもここで出来るようになっている。

 よーするに、ここでいろいろできるようにしておくから何度も死んで、何度も挑んでね! ってことだ。はぁ。

「俺らは、一回諦めてメンバー変えて再挑戦するよ。じゃあ、頑張ってね」

 聖騎士を中心にした耐久型編成のパーティがテレポして街へと帰っていく。

「んじゃ、試しに一回、死にに行くか……」

「うん!」

 元気よくアザミが最奥のエリアに踏み込んだ。




 マップの奥。円形の窪みの真ん中で黒いモンスターがゆっくりと体を起こす。

 外見は、人間サイズの二足歩行のカマキリといった印象。細い体つきに外骨格の鋭角でトゲトゲしたデザイン。両腕は手がなくて大きな鎌になっている。昆虫の無機質な感情のない瞳が俺たちを見る。名前は「ジン」。

「とりあえず『ミサイラント』で」

「異議なし」

 俺は『武器召喚・ミサイラント』を発動させようとした。ほとんど瞬間移動したジンがカマを振りかざして俺の喉を切り裂いた。

 !!!!? 9500ある俺のHPが一撃で半分以上削れて、同時に入った「沈黙」の状態異常によって詠唱が失敗する。ジンが使ったのは『喉裂き』のスキル。ハチノスが咄嗟に短剣を振る。カキン。外骨格が通常攻撃の短剣を弾いた。ダメージがほとんど通っていない。アザミが弓を構えた。『スプリットショット』が無数の矢を突き立てる。「はにゃ!?」同じく、外骨格に弾かれた。定数ダメージが無効化されている。ターゲットをアザミに移したジンが「ハイパースラッシュ」のスキルを使う。斬、斬斬斬斬斬斬。袈裟懸けの最初の一撃しか見えなかった。細い体が切り刻まれて、13000あるアザミのHPが一瞬で零になる。敏捷に優れたアザミが間合いを外す間もなかった。速すぎる。一瞬遅れてクスノキさんのヒールが、入、らない。クスノキさんの喉が裂かれてまた魔法が失敗。俺より防御力が低いクスノキさんのHPが7000以上持っていかれる。ゴルゴーンの『心臓を狙う』が胸を射抜いた。「!?」しかしそれでもHPのバーが減らない。硬い。HPそのものは30000程度とこの手のイベントボスモンスターの中では異例の低さなのに全然ダメージが通らない。(『双頭の究極龍』のHPは250万だった)

「こ、っの」

 ハチノスの『暗殺』が不意打ちで決ま、らない。高速で飛びのいたジンが『暗殺』を回避した。着地してすぐに接近。「ハイパースラッシュ」がハチノスのHPを零にした。ほとんど即死攻撃……! 攻撃力が高すぎる。俺は上段に構えて『ヘイムブレイカー』を繰り出そうとして、するりと躱される。直後に鎌の腕で胸をぶった切られて、既に半分減っていたHPが零になって俺は「死」んだ。



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