後編
キイナ様率いる女性陣VSナンパ騎士サンソン
ついに決戦の火蓋は、切って落とされた!
たまに視点が変わります。
その日のうちに通称『学園女子連絡網』によってアイツの事は、周知され被害者は、減っていった。
それでもしつこくナンパして来た時は、私の出番だ。
「よぉ〜♪中々可愛い顔してるじゃないか。
オレと付き合わないか?
けっこう強いし頼りになるぜ!」
アイツがナンパしているという知らせを受け現場に向かう。
「やぁ、お困りの様だね♪子猫ちゃん良かったら私とカフェで有意義な時間を過ごさないか?」
私とアイツを見比べた可愛いらしいお嬢さんは、当然のように私を選んで横に並んだ。
「ごめんなさい。私ムキムキ系な方は、ちょっと……。」
というようなやり取りを既に数回。
そろそろ我慢の限界だろう。
アイツを横目に私は、お嬢さんを連れてお気に入りの喫茶店に向かった。
(サンソン視点)
「クソッ‼︎またヤツに邪魔された!
いったい何者なんだ?
騎士科には、いないようだが……。」
ナンパに失敗した俺は、仕方なく行きつけの店で酒を飲んでうさを晴らしていた。
するとそこへいつも俺をアニキと慕っている連中がやって来て面白い情報を教えてくれたのだ。
「なるほど、そういう事か!
舐めた真似してくれるじゃねーか‼︎」
〜数日後の放課後〜
喫茶店【ユウリン館】個室
「皆さまコップは、持ちましたか?」
「はーい♪」
「では、計画が順調に進んでいる事を祝して果実水ですが♪」
「「「「乾杯♪♪」」」」
はぁやはりこの店の冷えたレモ水は、美味しいな。
この計画が成功したらレオルと飲みに来よう♪
「今のところ計画は、順調に進んでますわね。」
「そうだね。後は、エリーがアイツを呼び出す場所を確保してくれたら一気に皆んなで‼︎」
「腕がなるぜ!ボクのショートソードの錆にしてやる!」
いや、切っちゃダメだろう。
いくら相手がナンパ騎士でもマズイと思う。
「エリー遅いね〜。何かあったのかなぁ?」
「あら?お約束の時間に来ないなんて珍しいですわね?」
そういえばエリー嬢がまだ来てなかったな。
しばらくするとノックをする音が聞こえたので
ドアを開けるとこの前のウェイターが
「すみません。エリー様からとこちらにお使いを頼まれたのですが。」
と言ってメモを差し出して来た。
渡されたメモをターク嬢に確認してもらう。
「確かにエリーの字だね。
別に脅されて書いた様子もない。」
「じゃあ本物なんですの?」
「『夜8時 旧闘技場に下見。』か。」
【旧闘技場】夜8時〜
この旧闘技場は、学園の外れにある数年前まで使われていた場所だ。
「この時間になると流石にちょっと不気味だな。」
薄暗がりの中皆んなで旧闘技場の中に入って行く。
「エリーさんどこにいるのかしら?」
周囲を探していると闘技場の真ん中に人影が見えた。
「エリー嬢?」
!!
しかし様子がおかしい!
「たいへん!縛られてますわ!?」
そう叫んでサーラ嬢が止める間もなくエリー嬢のところへ走って行ってしまった。
「いかん!罠だ!!サーラ嬢戻れ!!」
そう叫んだが時既に遅くサーラ嬢と縛られていたエリー嬢は、上から投げられた網に絡め捕らえられてしまった。
「キャー‼︎」
「うぅ〜!」
焦る私達に突然アイツの声が聞こえた。
「チッ!流石に全員は、掛からなかったか。」
声の聞こえた方を見るとアイツは、数人の男達と一緒に観客席に立っていた。
「よくもさんざん俺の邪魔してくれたなキースさんよ!
いや、本当は、淑女科のキイナだっけ?」
!!
「『何故それを?』って顔してるな!
俺にだって仲間は、たくさんいるんだぜ。
例えばコイツとかな。」
そう言われてアイツの隣にいる男をよく見るとそこにいたのは……
「あー!アンタ先月まで演劇部にいた大道具のガッツ!!」
それは、先月まで演劇部に所属していたが大道具代を誤魔化し予算を着服していた為に退部させた男だった。
演劇部の予算が合わず泣いていた会計の可愛い後輩(女の子)の為にエリー嬢を通してターク嬢に調べてもらって発覚したのだ。
まさかあの男のせいで私の正体がバレるとは‼︎
アイツ等を警戒しながらもお互いの武器の確認をする。
(小声で2人に)
「私は、レイピアしか持ってないんだが。」
「ボクは、ショートソードと投げナイフ。」
「僕は、護身用の催涙スプレーとクナイと煙幕と各種特別弾とパチンコ玉とビリビリ君だね。
因みにニンジャ刀は、まだ手に入れてない。」
「何ごちゃごちゃ言ってやがる‼︎
女3人でどうするつもりだ?」
それに対してシノン嬢が反論する。
「3人じゃなくて5人だ!ボク達は、仲間を見捨てて逃げる様なマネは、しない‼︎」
その言葉をアイツは、馬鹿にして
「フンッ!足手まといを2人も連れて逃げられると思っているのか?」
確かにエリー嬢とサーラ嬢を救出して5人で逃げられる確率は、低い。
「私とシノン嬢で時間を稼ぐターク嬢は、2人の救出を頼むぞ!」
「「了解。」」
(サンソン視点)
女のくせにコイツら思っていたより強い。
「えいっ‼︎この‼︎」
騎士科の女は、ショートソードで次々と仲間を斬り伏せている。
「ハッ!」
キイナって女は、長いリーチを活かしてレイピアで攻撃を仕掛けている。
人質にしてた魔術科の女は、火魔法使いのようだ。
「よくもやってくれたわね!
ファイヤーボール‼︎10連発乱れ撃ち‼︎」
(ただのノーコン)
「よし!当たった!」
チビ女は、パチンコ玉や煙玉で撹乱するのが役目らしい。
特進科の女は、特に攻撃手段は、ないらしいな。
「頑張ってくださいまし!
左側弾幕薄いわよ!」
やっぱり狙うならあの女だな。
なかなか好みの体だし俺の女にしてやるか。
「俺が直々に相手をしてやる!」
バスターソードを引き抜き特進科の女に近付いて行くとチビ女がこちらに向かって玉を投げて来たので切り伏せる。
中から出て来たのは、何かネバネバした真っ黒い粘液だった。
!!
「ギャー‼︎痒いー‼︎」
何だこの液は?
痒くてたまらん!!
(キイナ視点)
!!
「ターク嬢何を投げたんだ?」
私の問いにターク嬢は、自慢気な顔で
「ターク特製漆液パチンコ玉。
魔物用に作ったんだけど持って来て正解だった。」
漆液?
「漆液っていうのは、東方の国で採れる樹液で耐性の無い人が乾いてない内に触るとかぶれてもの凄く痒くなるの。」
よく見るとアイツ以外も酷い有り様だ。
ある者は、何かネバネバする液で地面や壁に貼り付けられていたり臭い液をかけられてその臭いの酷さで気持ち悪くて吐いていたり。
「タークちゃん鬼畜〜。」
などと呑気に構えていたらいつの間にアイツが復活してしまった。
「お、お前等…よくもやりやがったな‼︎
もう許さねー!!」
立ち上がったアイツは、こちらに向かってバスターソードを構え凄い勢いで突撃して来た。
私とシノン嬢で止めようとしたがレイピアとショートソードでは、流石にバスターソードを防ぐ事が出来ず私とシノン嬢の剣は、弾き飛ばされてしまった!
残念無念!
目早これまでか!?
と思ったその時、私達の前に二つの黒い影が立ちはだかりアイツのバスターソードを受け止めてくれたのだ。
ガキーン
「何やってるんだ?キイナ!!
レイピアでバスターソードの相手ができるわけないだろう!!」
そう言いながらアイツの剣を受け止める背の高い男。
「間に合って良かった。
今度から相棒の僕には、ちゃんと相談しろよ。」
素早くシノン嬢をアイツの側から引き離し安全を確保している細身の少年。
それは、レオルとケントだった。
私達を助けに来てくれたのだ。
「クッ‼︎お前等何故ここがわかった?」
するとアイツの質問にケントが答えた。
「僕にも仲間がいてね。アンタの仲間の動きがおかしかったから急いで知らせに来てくれたんだよ。」
それを聞いてアイツは、悔しそうに
「女だけで動いてたんじゃなかったのかよ!」
「そんな訳ないだろう。
もうこの件で上が動いている。」
えっ?そうなのか?
きょとんとしている私達にレオルが
「全くお前等だけであの男がどうにか出来ると思ってたのか?」
まさか脳筋のレオルに怒られるなんて思わなかった。
「な、何だよ!その目は?
俺だって一応騎士なんだからな‼︎」
照れながら話すその姿……
あゝレオルが久し振りにカッコ良く見える!
「お前等、俺の前でいちゃついてんじゃねー‼︎」
どうやらアイツをマジ切れさせてしまったようだ。
流石にマズイかもしれない。
とその時、突然旧闘技場が明るく照らされ拡声機から声が聞こえてきた。
(エリー視点)
「ハイ‼︎そこまで‼︎全員動かないでください‼︎
こちらは、ユイナーダ王国特務隊ですよー。」
その声にビックリしていると私達は、いつの間にか大勢の兵士や騎士に囲まれていたの。
この声どこかで聞いた事がある。
そして兵士達は、私達が倒したアイツの仲間達を次々と捕縛していった。
しかもタークちゃんが、やらかして色々な液塗れになっているのを見越した様にちゃんとマスクや革手袋をしているわね。
そこへ拡声機を持った男性が奥から歩いて来た。
「皆んな〜大丈夫でしたか〜?」
拡声機の声の主…それは、エミール殿下だった。
殿下は、私達の無事を確認した後サーラ様に近付き
「サーラ、ダメじゃないですか。
私のノートを勝手に持ち出すなんて。」
サーラ様は、殿下と見つめ合っていたが目を逸らし
「ごめんなさい。こんな事になるなんて思わなかったの……。」
謝るサーラ様を優しく見つめていた殿下は、そっと手を取り真剣な表情で次のようなセリフを宣った。
「今度からは、ちゃんと私に相談してくださいね。
君の為に『完璧なざまぁシナリオ』ぐらいいくらでも書いてあげるから!」
「はい♡エミール様。」
『何か違う。』と思うのは、私だけじゃないよね?
シノンちゃんの方を見るとケント君に抱きしめられて耳まで真っ赤にしていた。
羨ましい…やっぱり付き合ってるんじゃないこの2人!
「本当に間に合って良かった。
お前等が計画の相談に使ってた【ユウリン館】のウェイター、あれ僕の幼馴染でね土木建築科のハサムっていうんだけどさエリー嬢からのメモを渡しに来た男があのナンパ騎士と連んでいるの知ってたから僕に教えてくれたんだよ。
彼には、感謝しなきゃね。」
「そ、そうだったのか。
迷惑をかけてすまない……。」
なんとあの怪しく見えていたウェイターさんは、
学園生のバイトでケント君の幼馴染だったのか!
次にタークちゃんの方を見るとハーシー先生が来ていた。
「何か俺に言う事は、ないか?」
小さいタークちゃんが更に小さくなって謝っている。
「ご、ごめんなさい兄上‼︎
計画の為に研究室からいろいろ勝手に持ち出しました。
後で弁償するから許してください‼︎」
皆んなビックリすると思うけどこの2人実の兄妹なのよね。
ハーシー先生のお母様が亡くなられた後に後妻で来られたのがタークちゃんのお母様なのだそうだ。
ハーシー先生とタークちゃんが兄妹なのは、割と知らない人も多い。
先生と生徒として制服を着て行動している分には、問題無いけど私服でいるとハーシー先生が『幼児誘拐』か『ロリコン』に見られるからこの2人が一緒の時は、必ず制服なのよ。
年齢が離れ過ぎているといろいろ大変なんだね。
アレ?そういえば私だけ誰もお迎えが来てないじゃないですか。
まぁあの男に来られても困りますけどね。
「姉上…お迎えに来ましたよ。」
ヒィッ⁈
いつの間にここへ‼︎
そこに立っていたのは、妹のケイト(特進科)だった。
「な、何故アナタがここに?」
「もちろん姉上を迎えにです。
あの男は、迎えになど来ないでしょうからね。
ところで姉上…この騒ぎは、一体全体どういう事でしょうか?」
ヤバイ、ヤバイどうしましょう!
この娘怒らせたら凄く怖いのよ……
「父上様と約束しましたよね?
『絶対騒ぎを起こさないから淑女科では、なく魔術科に行かせて欲しい。』とそれなのに!」
ヒィ〜
凄く怒ってますわ!
「姉上!また余所事を考えていましたね!」
「ソ、ソンナコトナイヨ。」
「どうやらお仕置きされたいようですね!」
「オ、オテヤワラカニ……。」
(キイナ視点)
この後騒ぎの責任を取って私達5人は、1週間の謹慎処分になった。
皆んな自室での謹慎処分を受けている中エリー嬢だけは、特別に王都にあるタウンハウスで謹慎する許可が下りたそうだ。
流石は、侯爵家のご令嬢だな。
そしてナンパ騎士の一味は、ある者は、余罪が発覚して逮捕され。
またある者は、退学処分となった。
ナンパ騎士ことサンソンは、その体力がもったいないからと男だけしか居ない最北の地にある魔物を食い止めるための砦に送られる事になった。
せめて少しでも長く生きられる事を祈ろう。
数日後エリー嬢が死んだ魚みたいな目をして登校して来たと聞き心配して会いに行くと既にいつも通りだったのでアレは、ただの噂だろう。
fin
アクションシーンを書くのは、難しいですね。