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前編

ユイナーダ学園高等部シリーズ初の前後篇

皆さんお久しぶりですね。

国立ユイナーダ学園高等部淑女科のキイナです。

私は、最近ある男の事で相談を受けている。

それも1人2人では、なく35人もである。



今日は、これから私が協力を頼んだ仲間と落ち合う約束をしている。

待ち合わせ場所に向かっていると前方で女性の叫び声が聞こえた‼︎

慌てて駆けつけるとなんと大男が嫌がる女性の手首を掴んでいたのだ!

しかも襲われている女性は、淑女科のスーズ嬢では、ないか‼︎

「いいじゃねーか♪

俺と付き合おうぜ♪♪」

「辞めてください!

私には、婚約者がいるんです‼︎」

「どうせ学園にいないんだろ?

学園にいる間は、遊んだってバレやしないって♪♪」

マズイ‼︎

「そこまでだ‼︎」

「ん⁈誰だお前?

騎士科じゃ見かけねーな⁇」

そういえば先程まで部活で稽古してたから衣装のままだった!

(キイナ様男装中!)

クッ仕方ない!ここは、役に成りきるしかない‼︎

「私は隣国からの留学生のキースだ‼︎」

(稽古中の舞台のキイナ様の設定)

「嫌がる相手にしつこく付き纏うなど騎士道精神に劣る男だな!

騎士として恥ずかしいとは、思わないのか?」

「何だと⁈優男が生意気な‼︎」

そう言いながら腰に穿いた剣に手をかける大男!

マズイな、私が穿いている剣は、舞台の小道具だから

実戦は、無理だ‼︎

ピピー‼︎

「お前達‼︎ここで何をしている⁈」

「!!」

「黒い腕章‼︎風紀委員会か⁈

チッ‼︎命拾いしたな⁈」

そう言ってあっという間に大男は、走り去って行った。

「やれやれ……。」

「キイナ様ありがとうございます。」

駆けつけて来た風紀委員は、待ち合わせていた錬金科のターク嬢だった。

「大丈夫?2人共‼︎

危ないところだったね。」

「もしかしてさっきのが?」

「そうアイツがクズナンパ騎士、騎士科のサンソンだよ。」

「そう、アイツが……。」




学園街喫茶店【ユウリン館】個室


(エリー合流)

「うわぁ危ないところだったね⁈

大丈夫スーズ先輩⁇」

「キイナ様が助けてくれましたから。」

「今回は、無事だったけどアイツ、シツコイからねー。」

確かにいつも私が側にいられる訳では、ないからな。

「提案がある。スーズ嬢は、確か既に必要な単位は、取り終えていたな?」

「後は、卒業試験さえ合格すれば大丈夫ですわ。」

「それならハーム女史に許可を得て暫く『花嫁修業』という名目で王都にある婚約者の屋敷に滞在するのは、どうだろうか?」

「それ良いかもしれませんね……。

先輩の婚約者様って王太子様の側近でしたよね?」

そうエリー嬢が尋ねるとスーズ嬢は、とても嬉しそうに

「はい、侯爵家次男のミハイル様ですわ。」

と答えた。

「侯爵家なら流石にアイツも手出しできないだろう。」

「そうですわね。

では、さっそく実家と侯爵家に連絡をして相談してみますわ。」

「なるべく早く迎えに来てもらった方が良いな。」

「じゃあお迎えが来るまでは、風紀委員会で護衛するよ。

僕1人じゃ安心できないだろうから助っ人を呼んで来るからちょっと待ってて下さいね。」

そう言ってターク嬢は、急いで部屋を出て行った。


注文したケーキを食べながら待っているとターク嬢が2人の人物を連れて戻って来た。

「お待たせしました。

風紀委員会のメンバーで騎士科のケント君とシノンちゃんだよ。」

「「はじめまして。警護は、僕等(ボク等)に任せてください!」」

何故セリフがかぶる?

しかも睨みあっているんだが……

この2人に警護を頼んで大丈夫なのだろうか?

「淑女科三年のスーズです。ご迷惑でしょうが宜しくお願いします。」

そう言いながら綺麗なカーテシーをしてみせた。

そしてスーズ嬢この状況で何故普通に挨拶できる?




3人が部屋を出て行った後、エリー嬢の進行で本来の目的である【ナンパ騎士対策会議】を開いた。

「只今より、第1回【ナンパ騎士(クズ)対策会議】を開催しま〜す。

ハイ、拍手〜♪」

し〜ん

「エリー嬢ふざけてないで早くしてくれるか……。」

「ごめんなさい(>人<;)

まずナンパ騎士(クズ)の詳しい説明からです。

ナンパ騎士(クズ)こと騎士科三年3クラスのサンソン

(18歳)身長205㎝

得意武器は、バスターソード

出身は、リバーファスト

郷士の三男。

ヤツの被害ですが学園内で手当たり次第に女性に手を出しては、浮気を繰り返しています。

中には、ヤツと付き合っているのがバレて婚約者ともめている者が数人確認されています。」

「そこは、自業自得じゃないかなぁ。」

確かに貴族女性が婚約者がいるのに学園内とはいえ

他の男性と深く付き合うのは、良くない。

顔を見合わせて頷く

「実家の方は、どうなってる?」

「領内でも同じような事を繰り返していたので学園卒業後は、縁を切られる事になっていますね。」

まぁ当然だろう。

そんな問題ばかり起こす人間を領地に置いておいて領民に逃げられたら領地経営が成り立たないからな。

「それで学園内での現在の被害者数は、どうなってる?」

私の質問にターク嬢が答えた。

「今日の放課後の時点で確認が取れているのが99人。実際には、それ以上いると思うんだよね。

まぁ、とっくに別れた人や卒業した人もいますけど。」

いくらなんでも多すぎるだろう。

「よくそんなに浮気する暇と体力があるな。」

「けっこう忠実(まめ)にプレゼントしたりデートしたりしているそうですよ。

その代わり成績は、ギリギリですが。」

体力は、あの体格を見ればわかるがプレゼント代は、どこから出ているのだろう?

「キイナ様、プレゼント代がどこから出てるのか気になりますよね?

それについては、タークちゃんが突き止めてくれました。」

おゝ!流石名探偵だけの事は、ある!

「僕が突き止めたというかたまたまバーン先生から『奥さんの実家に大量の同じアクセサリーを持ち込んだ学生がいるから調べてくれ。』って依頼を受けたんだよね。」

「バーン先生の奥さんの実家というのは?」

「王都の質屋ですよ。けっこう老舗の。

もしかしてと思って写真を見せたら持ち込んでたのは、サンソンとキヨミナでした。」

キ、キヨミナ‼︎

レオルを騙したあの女か!?

あの女の名前が出たとたん顔色が悪くなった私に

2人がが慌てて

「「あっ⁈すみません!

あの女の名前は、禁句でしたね。」」

と謝ってくれる。

私は、良い仲間を持ったものだ。

「い、いや大丈夫だ……。」

私は、顔を引きつらせながらもなんとか冷静さを取り戻してターク嬢に話しの続きをそくす。

「いろいろ理由を付けてプレゼントを貰う時は、同じ物指定して1つだけ手元に置いて後は、売り払ってたんだよ。」

どこのホストだ‼︎

「サンソンは、わかるけどあのお花畑女がよくそんな事思いついたわね?」

確かにエミール殿下の小説を丸パクリする馬鹿だからな。

「あ〜それね〜。

サンソンがやってるの見て真似したみたいだよ。」

「どうせそんな事だと思ったわ……。」

呆れてモノも言えないな。

「あのお花畑女が真似したせいで宝石店で売れなくなって最近は、質屋に持ち込んでるみたいだよ。

まぁその質屋もそろそろ換金できなくなるけどね♪」

「ターク嬢何かしたのか?」

「バーン先生に頼んで『質屋ギルド』に情報を流してもらったから正規のお店じゃ引き取って貰えなくなるよ。

裏で流しても足元見られて儲けは、なくなるのがオチ。」

とりあえず資金源を潰したというわけか……

やはりこの2人に協力を求めたのは、正解だったな。

エリー嬢の学園情報収集力とターク嬢の調査力は、学園の生徒の中では、最高だ。



話している間に紅茶が無くなったので店員を呼んで追加注文をする。

「この後は、どうします?

アイツを野放しにするわけには、いきませんし……。」

「これ以上被害者を出すわけには、いかないから学園の女子達にもこの情報を流してくれ。」

情報共有してこれ以上被害を広げないようにしないといけない。

「それだけじゃアイツをぎゃふんと言わせられないですよね。」

3人で顔を見合わせ対策を考えていると店員が紅茶を運んで来た。

エリー嬢がドアを開けると紅茶を持って来たのは、店員ではなく特進科のサーラ嬢だった。

「陣中見舞いに参りましたわ。

どうやらお悩みのようですわね?

3人でダメなら4人で考えましょう。」

と言ってニッコリと微笑んだ。



これまでの話をサーラ嬢に説明すると彼女は、少し考えて何処からか一冊のノートを取り出した。

そのノートを見た途端エリー嬢がビックリして声をあげた。

「そのノートは、もしかして⁈」

「まさかそれが例のノートなのか?」

「よく貸して貰えましたね?」

そう尋ねるとサーラ嬢は、

「ちょっと()()()借りてきましたの♪」

一瞬の沈黙……

いやそれは、勝手に持って来たというのでは、ないか?



その頃のエミール様


自室の机の上を見る

「アレ?おかしいなぁノートがない。」

その代わりに私の好きな『ユウリン館』のクッキーと茶葉が置いてある。

ああ、なるほどサーラが持って行ったのか。

あのノートを持って行ったと言う事は、何か企んでいるのだろう。

それに最近、エリー嬢を中心に女子が何かコソコソしていましたし。

私にバレていないと思っているのでしょうが

この前の騒動で父上や母上達、沢山いる兄姉に叱られて私は、反省したのですよ。

いくら継承権が低くても身の回りの事に関心を持たないと危ないと今更ながら気づいたのです。

サーラ達が何をするつもりかわかりませんが

大事な婚約者が危ない目にあっては、いけませんから

王太子(兄上)に頼んで調べてもらいましょう。




その頃のケント&シノン


「何でアンタは、いっつもボクのセリフに態と被せてくるわけ?

チビのくせに生意気よ!」

「……。」

チビってそれは、入学当初の話しだろ。

「今は、それほど変わらないだろう。

むしろ僕の方が若干高いと思うけど?」

僕が冷静に答えると益々彼女は、激昂して怒鳴る。

「煩い!スーズ先輩の護衛は、終わったんだからコレで解散!着いて来ないでよ!」

そう言って彼女は、店の方に戻って行った。

やれやれ騒がしい女だな。

この様子じゃあのクズの件に首を突っ込むつもりだろう。

とりあえずあの人達に連絡入れておくか。

ポケットから支給されたばかりの携帯型魔道通信機、通称『ポケテル君』を取り出しまずあの人の直通番号を押す。

「あ、もしもしケントですが例の件で動きがありました。」




その頃の【ユウリン館】個室


「逆ハニトラを仕掛けて嵌めるのは、どうかな?」

というエリー嬢の意見にサーラ嬢が残念そうに反論する。

「無理ですわね。

このノートによるとああいったタイプの人間には、ハニトラは、効かないそうですわ。」

その意見には、私も賛成だな。

「お花畑女がやらかしたばかりだしねー。

だいたいそのハニトラ誰が仕掛けるの?」

確かにそんな危険な役をか弱い女性にやらせるわけには、いかない。

するとそこへ先ほどスーズ嬢を送って行った騎士科のシノン嬢が戻って来てドアを開けるなり

「だったらボクが!」

そう胸を張って真剣な表情で私達の前に立った彼女の姿を見て思った事は、皆んな同じだったようだ。

「「「「無理だな。(無理ですわね。)」」」」

し〜ん

「な、何でだよ⁈

ボクなら騎士だしけっこう強いんだからな!」

そう悔しそうにシノン嬢は、叫ぶ。

う〜ん強いのは、わかるがシノン嬢では、無理がある。

「何というかその…非常に言いにくいんだが……。」

私が言いよどんでいると空気を読まずにエリー嬢がはっきり言ってしまった。

「魅力が無い!」

それを聞いてシノン嬢が固まってしまった。

続いてサーラ嬢までも

「そうですわね。

あの男の好みは、Cカップ以上ですし。

せめてBカップは、欲しいですわね。

あ、もちろん(わたくし)は、ダメですわよ。

エミール様と婚約してますから。」

せっかく協力を名乗り出てくれたのに彼女達の言葉に傷ついてしまった。

更にエリー嬢が言い募る

「学年は、違っても同じ騎士科だし女性騎士は、少ないからすぐに身バレすると思うよ。

それに騎士科の女子で声かけられてないのシノンちゃんと一年2クラスの双子ちゃんと三年1クラスのランナ先輩くらいじゃないかな?」

騎士科一年の双子というとあの猛牛姉妹か。

以前、学園街で暴れ牛が出た時に2人で連係して警備兵が来る前に捕まえていたな。

三年のランナ嬢は、騎士科といっても素手での格闘を得意とする空手(くうしゅ)部の主将で毎年開催されているユイナーダ王国武闘大会女子の部の三年連続優勝者だ。

それに彼女は、既に卒業後『女性王族の警護』を担当する事が決まっている。

そんな事を考えている間にシノン嬢は、更に落ち込みついに座り込んで角で『のの字』を書き始めてしまった。

更にターク嬢がトドメを刺す

「だ、大丈夫!実は、僕も錬金科で1人だけ声をかけられてないんだ。」

その言葉に一瞬シノン嬢は、ターク嬢の方を見たが

すぐにまた落ち込んでしまった。

「えっ?何で⁇」

「たぶんタークちゃんの体型を見ても慰めにならなかったんじゃない?」

「だから何でだよ⁈」

『見事な幼児体型ですものね。』(byサーラ)

このままでは、話しが進まないので私が仕切り直す事にしよう。

「とにかく皆んな一旦席に着いてくれないか?」

「そうですわね。時間も押してますし……。」

皆んなが席に着いた後、顔を見回しながら

「他に良い方法は、ないのか?」

と尋ねるとエリ ー嬢がある疑問を口にした。

「そういえばアイツって何であんなにモテるの?」

その言葉に私達は、ハッとした。

「確かにあの男は、たいして顔がいいわけでは、ないな。」

「口は、上手いけど騎士としての能力も中程度だと聞いてますわ。」

「ボクは、あんなムキムキな男は、好きじゃない!」

「むしろ顔ならキイナ様の方がいいと思う。」

!!

「「「「それだ(それですわ)!!」」」」

えっ?何?

突然皆んな立ち上がって私を取り囲み

「アイツより先にキイナ様がナンパしちゃえば良いのよ!」

「僕もその案に賛成だよ。

男子がやったら対外的にマズイけどキイナ様が女子を誘うのは、問題にならないよ!」

「アイツがしたらナンパだけどキイナ様ならただ女子同士でお茶に誘ってるだけですもの♪」

た、確かにその通りだが。

この後、全員で知恵を振り絞って考え

決まったのが次の作戦だ。



①アイツに関する情報を女子生徒全員で共有する。

②協力者を募りアイツの行動を見張り

なるべく集団行動をして近づいて来たら逃げる。

(女性しか入れない場所の確保)

③アイツがしつこくナンパして来たらキイナ様が駆けつけて『お茶に誘う』。

④アイツのイライラが溜まって来た頃、邪魔が入らない場所に呼び出して皆んなでアイツをギャフンと言わせる。



「完璧ですわね!」

とサーラ嬢が例のノートを握りしめながら興奮気味に話す。

「今こそ女子の団結力を発揮する時だね!」

エリー嬢も乗り気だ。

「キイナ様だけに負担は、かけられない。

ボクも皆んなに声をかけるよ。」

シノン嬢は、騎士科以外でも後輩に慕われていると聞いているから彼女の協力は、期待できる。

「ヤツの出没スポットは、把握してるから任せて。」

ターク嬢も頼りになる。



そしてコレが一番の決め事。

「「「「「絶対男共には、秘密‼︎」」」」」

アイツは、アレで一部の男子にアニキとして人気があるのだという。

どこにアイツの仲間がいるかわからない為、我々女子だけで行動しなければならない!

「!!」

何かに気づいたシノン嬢が突然ドアを開けると

そこに居たのは、ウェイターだった。

「何か用?」

ビックリさせないでくれ。

「あ、あのお時間なのでお知らせに来ました。

まだお時間がかかるようでしたら延長もできますが

如何いたしましょうか?」

シノン嬢に怯えながら答える気の弱そうな太めの少年ウェイター。

「いや、もう話しは、終わった。

ちょうど帰ろうとしていたところだ。

驚かして悪かったな少年。」

「いえ。こちらこそ申し訳ございませんでした。」

この後我々は、計画を進めるべく各自行動を起こした。




この時は、気がつかなかったが我々の【ナンパ騎士(クズ)ざまぁ計画】は、既に何人かの知るところとなっていたのである。





果たしてキイナ様達の計画は、成功するのか!

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