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桜蛇お嬢は自由奔放、無手勝流!@Real ⇒ Fantasy Adventurers  作者: 酒色南肴
1 Creators did redesign another world.
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70.悪魔の輝石と天使の輝石(用法・用量にご注意の上、的確にご使用ください)

 艶のない黒々とした紋様。ねっとりとしたタールのような質感の何かがひとつひとつの紋様の周りで炎のように揺れている。おどろおどろしく、黒魔術や闇の儀式とでも言うような。


「文字、なんか書き換わってない?」


(われ)がどれほどの間、此れに囚われていたことか。忌々しいことに余を道化にした者どもが、打開策とともに此れを()る力を余に奉じた…』


 えーっと。

 自分を利用する奴らの協力のおかげで、転移陣を自分用カスタマイズする力を得たよ! てことかな?

 しかしなんかこの(ひと)余裕が出てきた? 会話してくれるとか。


「ついでに聞いちゃうんですけど、いいです? なんか重要っぽいこと言ってますけど、意味がわからなくて。経緯とか目的とか教えてもらいたいです!」

「この場面で聞くか?」

「シュシュだからな…」


 ストーリーあるなら一応知りたいやん。ジン氏だって気になるでしょ? ヒューはご理解ありがとう。

 いきなり水ざっぱーんやらかした相手なのに、意外としっかり答えくれるくらいだし。謎、その回答編みたいなシーンなんじゃない?

 ていうか、マキの瀑布って攻撃力けっこうあるはず。それが明けて出てきてまったく動じる気配もなし。強敵の気配ビンビンですよ。会話で倒すヒントとかくれないかな、ていう打算もあり。

 もしくは…やり方によっては仲魔(なかま)になるとか! そういうパターン大歓迎!


『余は…余の種族は古の大陸において一つ国の支配階級であった』


 低音かつ低温ヴォイスで語られた男のお話。


 むかしむかし、ナーヴィラリス大陸にはラドゥナラカという国があった。いくつかの種族が暮らすその国において、男と同じ種族は代々続く支配者階級の一員として、国を治める立場であった。

 周囲の国々とは時に争い時に同盟を結びと、文明レベルも現代より著しく低く、それは大陸の黎明期を抜けてしばし、群雄割拠をようよう終えたくらいの時代。


 さて当時、大陸のどこかには不帰(かえらず)の不可侵領域、大陸の傷跡にして試練、大地の裂け目があると言い伝えらえれていた。その裂け目を潜り抜け地の底へと辿り着いた時、そこは天地を返して天空の楽土に続くのだ、と。


 とある国のとある為政者は思った。「楽土とは不老不死の常世(とこよ)国であろう。現世(うつしよ)にて不老不死と言えば、ラドゥナラカ。あの国こそが入り口に違いない」と。


 ラドゥナラカの支配者。それは不死、再生、治癒を司る蛇から進化したと言われていた。原始より長くそれと伝承され、崇められてきた種族。時に神の(うから)とも呼ばれた。


『無論、余は不死でも何でもない』

 七島を攻め損ね、悪霊と成り果てたという伝書が事実なら、語る目の前のこの男は亡霊ということか。


 そのとある国のとある為政者は策を練った。ラドゥナラカから楽土を目指すために、まずはラドゥナラカを落とす。

 侵略は密やかに、狡猾に行われ、ついにはラドゥナラカ国内で内乱が頻発。それに乗じての侵攻。数十年の月日を経て、ラドゥナラカは首都をかろうじて残し、全土は壊滅状態へと追い込まれた。


 だが、その過程で『とある国』は滅びたとされている。

 その理由は定かではないが、真実『大地の裂け目』を発見した故と伝わっている。一昼夜で為政者も国の民もすべてが消えた、と。それらすべての者が楽土に導かれたのか否かは、時代を下ってから生を受けたこの男にはわからない。大地の裂け目、ひいては楽土を開くための生贄、人柱になったのだ、とまで吹聴され、男の時代には道徳的な読本にすらなっていたという。


 結果的に、ラドゥナラカに大地の裂け目はあった。


 それは広く深い大地の亀裂。未曽有の大地震とともに現れ、ラドゥナラカの民も強欲の国の為政者とその兵士も選別なく呑み込み、ラドゥナラカの国土を大きく削った。


 ラドゥナラカの民は種族を問わず那由他の姿が消えたというが、しかして民のすべてが消えたわけではなかった。

 そこから。

 生き残ったラドゥナラカの民の苦難と切願の日々が始まった。


『余は方々に散ったそれらの末裔。地に沈んだラドゥナラカを、古の栄華を、取り戻すことを悲願とし集った者たちを束ねていた。遍くを探索していた折に、その方策を余に齎したのが先の()()()どもよ』


 ナ、ナンダッテー!!

 あの黒ローブ! 真の黒幕!


「異界人! =プレイヤー?!」

「いや浮いてたし! 消えたし!」

「ガチ廃がガチャですっげー種族を引いたとか」

「イベントシナリオにがっつりハマりこめる権限付きチート種族。なんぞそれ」

「異界人をNPCじゃないヤツと考えたら」

「プレイヤーでもNPCでもないって」

「運営?」

「異界人=リアル人…運営もあり得る線」

「黒幕すぎる」

「言いようによっちゃ、ゲームの黒幕なんて全部運営だよな…」

「開発もあり」

「浪漫もへったくれもない真実」

「そんな真実の扉は開きたくなかった」


 待て、まだわからん…わからん、よね? 過去(数千年前)に干渉する異界人(NPCじゃない人)…あ、やっぱ運営&開発かも。プレイヤーでは無理。…時に干渉して時代を跨ぐようなファンタジー全開魔法でもない限りは、だけど。

 あの黒ローブの男たちはガチ廃プレイヤーか運営か。シナリオに組み込まれたんなら、どっちにせよ運営系チートじゃ。


『このシゥヴァーマの名を()って詠唱す』


 男の声が朗々と響く。語りは終わり? そして貴方はシゥヴァーマさん(年齢不詳・悪霊)と言うのです?


(しん)の3ツ角、(たい)の4ツ角、七芒星の恩寵の返還。等価の天秤に虚無の実存と楽園の素地を』


 衣擦れの音をさらりと流し、両腕を露わに真横に伸ばす。掌は床に垂直、壁に平行。


『天変の改編。巻きつく糸に絡めて転置の(どう)を通す』


 (シゥヴァーマ)のぞろびく衣装と髪に覆われた(元?)転移陣。その陣のそこここにぽつぽつと黒以外の色が灯る。赤橙黄緑青藍紫。7つの虹色。


『悪魔の輝石…否、拒絶と破壊の柩、黒き石。白き石たる受容と創造の器が此処に揃う意味。其れを識る者は、確かに居ぬようだ』


 にぃ、と。笑った? 表情的には嗤った、かな?


 唐突に気づいた。壁ではない。男の手は、二本の柱に向いている。

 広間の柱は黒い。薄い灯りのせいだけでなく、艶のない黒。目を凝らせばつるりとした円柱ではなく、ぼこぼことした表面をさらす()()の集合体。


「誰かライト!」


 賽の河原積みを思い出した。天井までつながってるけど、これ。

 悪魔の輝石をバランスよく積んだだけじゃない?

 例えば、ちょっと大きい衝撃が加われば、がらがらと崩れそうな。


『拒絶と受容、破壊と創造。合い打つ拍動、混沌の瞬刻』


 閃光と轟音。

 とっさの癖で隣りのヒューを庇い、爆風と思しきものに吹き飛ばされながら思った。

 こんなの一、二本の柱で済むわけがない。なんなら壁も抉れるわ。


(マジで落盤させる気だぁあぁぁぁぁぁぁ!!)


 閉じたはずの視界の隅に、いい笑顔で親指を立てるサイガ君を幻視しました。

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